12限目~火薬と魔術と狼と。妹の為なら仕方がない~

「サモン・オブ・アルカナ、『魔術師』。魔術的支援衛星メイガス・スター

「ちょ、それ何でもアリなの!?」

「お前が言うなよ!」


俺の鋭いツッコミと共に繰り出された蹴りが月狼の脇腹を掠める。いや、ホント、何でも壊せるって何なの。


「そっちもそっちでしょ!何でボクの異能力が効かないのさ!」

「俺が知るか!入学したの今日なんだよ!」

「うわ、災難……ってうわぁ!?」


俺へ憐れみの視線を向けた月狼だが、一瞬で離脱。刹那、その場所に銃弾が降り注ぐ。


「よそ見してる場合かしら?」

「チィ、流石に分が悪いよ……っとぉ!!」


今度は月狼へレーザーの雨が降り注ぐ。辛うじて回避した月狼だが、攻勢には移らず、瓦礫の影へ。


「C4!」


咄嗟に市橋ルナが投擲したC4が月狼の隠れた瓦礫に貼り付く。


カチッ、と手元のリモコンで起爆すると、巨大な鉄筋コンクリートの壁だったものが吹き飛んだ。


「……逃げられた様だな」

「どっちかっというと見逃された感じっすね。自分たちにとっては」

「ふうぅぅ~~……」


望陽に至っては泣く寸前だ。


「今通信があった。敵部隊の撤退を確認、輸送トラックは全車基地内へ収容出来た。任務完了だ、お疲れ様」

「じゃあ自分達の残りの任務は……」

「前線基地で、休憩して、帰る、ですね」

「まあ、色々と整理したいこともあるしな。市橋ルナ、行くぞ」


「………」


市橋ルナは、月狼の去っていった方向を見つめていた。その瞳は、どこかもの悲しげなものだったのが印象に残る。


かくして、何とか3%の中へinする事は辛うじて回避できた俺だった。



「市橋ルナ、入るぞ」

「……ツカサさんでしたか。先程はすみませんでした。お怪我は……」

「あったらとっくに死んでるさ。見ての通り無事もいいとこだよ」

「本当にすみません。戦いになると、いつも銃姫が出てきてしまって……あれは、私の第二の人格、と言った所でしょう」

「それに加えて好戦的過ぎるから、初対面の人間に銃弾撃ち込むんだな」

「部隊を組むのすら苦労しました。特に、望陽とは半ば一騎討ちになりかけた程で……」

「あー……そいつは大変だな」

「でも、もう銃姫も認識したのでこれからは大丈夫だと思います。それより……」

「俺の事か?アレは正直俺にも分からん。今は学園の研究室で解析してるらしいが」

「戻って見ないと何もわかりませんね」


沈黙。話題が無くなった。銃姫の時の反動なのか午前の時に増して大人しくなっている。


「……じゃあ、俺はツクハ寝かしつけるから行くわ」

「……ええ」


市橋ルナは何か言いたげな顔をしたが、何も言わないため、黙って部屋を去る。


まだ初日。分からないことだらけで、正直、自分がどこにいるのか分からなかったが、あの時発動した力は、これからも必要になることは確信できていた。


これからしばらくは、平和な学園生活を望むけどな。

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