6限目~第8遊撃部隊は静かではない~

「初対面の女の子にそうやって理由もなく避けられると流石に傷つくものがあるぞ」

「ふ、ふふふ……一国の城主たるもの常に刺客に狙われている……よって!信頼出来る者以外、必要以上に近づく事は無いのだ!」


と、一国の城主(自称)は部屋の隅っこで偉そうに叫んでいる。確かに犬っぽい。普通物理的な立ち位置逆じゃね?


「えっと、要約するとこの子、人見知りなので慣れるまで時間がかかると思いますが、頑張ってください」

「難易度高いな……」


男にとって、自分から話しかけてきてくれるタイプの子は絡みやすく、接しやすいが、人見知りな子の場合、自分から話しかけるのは中々難しいのだ。


ルナに撫でられて気持ちよさそうに目を細める望陽。やっぱり愛玩犬だよな。可愛い。


「なあ暁」

「何ですか?耳打ちをするなんて耳フェチですか?」

「響きが同じだが違う!」


「隊長殿よ!だからあの刺客に近づけるな!我が雷が彼を貫いてしまう!」

「そんな異能力、望陽は持ってないでしょう!?行きますよ」

「ならば電が……」

「同じです!」


なんだこの会話。第六駆逐隊か。あ、これは一部の人にしか分からないよな。


「ツカサ!ちょっと手伝ってください!」

「いーやーでーあーるー!」

「先輩実は私耳フェチなんです!あとじっくりと……」

「お前ら少し静かにしててくれ!」

「兄様、ただいま~」

「おかえりツクハーー!!!!」


この切り替えである。ツクハがスターターの100m走ならスタートダッシュは誰にも負けないし、ゴールにツクハがいるなら世界記録くらい10秒ほど縮める自信がある。


「兄様、それは、マイナスに、なるよ」


ツクハの為なら時間歪める程度朝飯前だ。


「……ほ?」


そんな間抜けなこと(自覚はあった)を考えていた時に、間抜けな声を出したのは望陽。てくてくとツクハに近づき、じーっと見つめる。


「な、何、ですか?」

「か、か……」

「か?蚊がいるんですか?ツカサ、殺虫剤持ってます?」

「いや、違うだろ」

「可愛いっ!!」

「ふえ?」

「私、こんな可愛い子初めて見た!ねぇ君何年生?」

「た、多分、2年生……」

「同じだー!クラスは?」

「確か、Eだった、よ?」

「また同じだー!わー!…………あっ」


望陽がハッとしてこちらを見た。

えっと、可愛かったです。はい。


「~ッ!!」


真っ赤になってその場にしゃがみこむ望陽。


「え、えっと……」

「望陽だよ。そいつの名前」

「み、望陽、ちゃん!」

「フフフ、我に用か?」

「ふええ!?」


今度はツクハが困惑する番。ありがとうございます。


「ツカサ、ツクハちゃんに説明を」

「それも難しいな……」


まとめると、望陽は難しい。


「とりあえず、一旦自己紹介にしましょうか。この状況じゃ伝わるものも伝わりませんし。」


ルナがまとめる。こういう時にまともな奴がいると本当に助かる。

これから彼女にかかる計り知れない負担(主にメンバーの事で)を考えつつ、力を抜くように鼻から息を吐いた。

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