笑顔の理由
「ねえ、どうしてそんなに笑っていられるの?」
君はいつも笑っている。
どうして?
どうして笑顔でいられるの?
「え? …だって、君といると楽しいから。」
また笑った。今度はふんわり。
楽しいと、笑えるの?
「楽しいの? どうして?」
「そーれはー…難しい質問だねえ」
また、君は笑う。
うーん…わからない。
「じゃあ、逆に聞くね。」
「君はどうして笑わないの?」
「…私は、笑えないわ」
だって、みんな私に笑いかけてくれなかったもの。
みんな、私を遠巻きに見ながらこそこそ話すだけ。
誰も、私の話なんて聞いてくれなかった。
誰も、私に話しかけてくれなかった。
だから、私は笑えない。
「笑えない?」
「そう。笑えないの。だって、」
だって…あれ?
みんな…私に、話しかけて…くれなかった。
そうよ。だから…私は…、?
「笑いたく、ない…」
君が笑顔でいる理由を知りたかった。
同じ理由を作れば笑顔になれると思っていた。
でも私は、笑えない…。
笑いたく、ない…。
「…笑いたくないなら、笑わなくてもいいよ」
君は、微笑みながら私に言うの。
「理由ができたら笑えばいい。無理して、笑う必要なんかないんだよ」
優しく、幼い子供を諭すように。
彼は、私に言い聞かせる。
「僕が、いつか君を笑顔にさせてみせるから」
それまで、気長に待てばいいよ。
「…楽しみに、してる」
君が笑顔の理由を知りたかった。
私はそれを吸収して、笑顔になりたかった。
でも、私は笑えない。私を取り巻く視線が、私から笑顔を奪うから。
私は、笑いたくない。
それを、君が溶かしてくれるまで、私はずっと待つよ。
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