システム概要及びプレ
OPENβ版~Opening Ceremony~
━━━OPENβ版公開前夜━━━
当選者が確定した旨と、NPCのそうそうたる顔触れがHPに公開された。
NPCには事前に、本人からあまり逸脱しない範囲のキャラクター登録を行ってもらい、キャラクター名もわかりやすく表記されている。その面子を見て驚かないものはいないだろう。何せ、各界で有名な人名が並んでいたのだから。ネットの掲示板という掲示板がこの話題で持ちきりとなっていた。
しかし、Androidの写真は公開されておらず、当選者も伏せられている。これは一様に、プライバシーの保護を第一に考えての措置だ。勿論、不満の声は後を立たない。だがそればかりに意識がいかないように、ユーモラスさある提供も忘れない。
『NPCも自由時間や生活習慣がごさいますので、必ずしも四六時中、規定場所にいるわけではごさいません。一例をあげますと、わたくし幻光の双子の姉の幻黒炎は二十二時には退席致します。早朝は八時より従事致しますが、お昼や夕飯タイムは邸宅シェフですので、一時退室がございます。このように皆様、生活優先でされますのでご了承下さいませ。
尚、自由時間にはパーティーを組み、関わりのないクエストを楽しむことも可能でございます。NPCとはいえ、皆様とあまり変わらない対応となっております。NPCによっては、邪見にされるかもしれませんが、ただの人見知りですのでご了承ください。
更に皆様への余興のプレゼントが不定期にございます。人気モデルによるファッションショー、人気バンドやアイドルなどによるコンサートを企画しております。実際のお仕事の兼ね合いを見ての調節日程になりますので、随時HPをご確認下さい。
最後に、NPCも個人でございますので、NPCへのクレームはこちらでは受け付けられません。ご了承下さいませ。直接本人までお願い致します。
最低限のマナーとモラルを重んじたプレーをご推奨させて頂くと共に、お知らせを終わります。
\モラルを持ったカヲスであれ!/
以上です。』
~・~・~・~・
同日、NPC会議が行われていた。と言っても、形式ばったものはない。どこからでも参加出来るように、ビデオ通話だ。
『本日は、ご一同のお集まりに感謝致します。』
そう口火を切ったのは、制作担当の幻光である。いつもながら酷く丁寧に思われるかもしれないが、彼女が言葉を崩すのは双子の姉・幻黒炎の前でだけだ。長年連れ添った姉だからこそだろう。ただ一人、頭が上がらない人が姉でもあるのだが。
『まぁ、各所からではございますがね。皆様のご配置場所などはそれぞれに添付させて頂いた通りとなりますですはい。
皆様にも先に把握なさっていて欲しい事項と致しましては、欲しいものはplayer様と仲良くなって買って頂くか、ご自分で稼いで下さいませと言うことでございます。』
とんでもないことを口にする。金持ちだからって、ゲーム内装備やアイテムまでリアルマネーで買えると思うなと現在私用で離席中の姫様からのお達しらしい。playerが出来ないことはNPCにも適用される仕様にしたようだ。システムNPCを作らない代わりに、彼らもプレイ可能になっていることに繋がる。課金不採用ゲームと銘打っているのだから、徹底しようというのである。そもそも彼らは最初、暇をもて甘し、このゲームを独り占めする裁断にあった。そんなことを許したら、身内ゲームになって面白くないからとNPCという手段に踏み切ったのである。正確には、彼らは最低限の行動指示しか与えられていない。
使用人たちには、多少の細かい指示はあった。同じような指示をしようものなら、ワガママなクレームが飛び交うのは目に見えていたからだ。その為に、最低限に絞った。差分は全て機械によって行われる。クエストに関しては無駄にゲームマネーを渡せば、浪費されかねない。金銭に関しては全て、データ上で執り行うシステムを取り入れている。
今日の集まりの実際の理由は、役割放棄をさせないための牽制の意味もあったわけだ。皆で楽しく交流を行い、円滑に進めるために。……伝わっているかは、確認し難い事項ではあるが。皆が皆、協力的かと言えば怪しいもの。
NPCたちに配慮されたfield選びまでして、尽力した。後はやる気の問題以外ない。
~・~・~・~・
OpeningCeremonyは三回に分けて行われた。playerの生活リズムに合わせた時間である。基本的に学生は帰宅が早く、社会人は暗くなってから。塾やバイト、夜勤勤務などもいるだろう。その時間を鑑みて、事前にアンケートを取り、招待状をお送りしていた。
それと併せて、ご自宅に『
playerはいわば、『お客様』。最高の『おもてなし』をしなくてはならない。自分の望むものが皆の望むものとは限らない。最善を尽くして尚、完璧には至らない。
生きとし生けるもの、完璧な存在などいない。日々成長し、切磋琢磨すべきなのである。望まれることを喜びとし、存在感を示せ。全てはその精神の一貫に過ぎない。
*Time-Schedule*
第一陣TIMEは15時会場、16時開演。
17時終演、17時半より18時までに自主Logout。
18時Justにシステムにより強制Logout。
第二陣TIMEは18時会場、19時開演。
20時終演、20時半より21時までに自主Logout。
21時Justにシステムにより強制Logout。
第三陣TIMEは21時会場、22時開演。
23時終演、23時半より24時までに自主Logout。
24時Justにシステムにより強制Logout。
会場では、立食party式となっている。自由に談笑しながらお菓子を召し上がっていただく。
注意事項は、ゲームが開始されるわけではないため、簡易Login状態であることを把握して頂かなければならない。従って、装置している《CyberGoggles》は仮面舞踏会よろしく、外さないように。外した場合、システムにより強制Logoutされてしまう。
そしてもうひとつ。事前に行って頂くことは、参加される開催時間までにキャラクター作成を済ませて頂く。忘れた場合、ご本人そのままの姿での参加になり、何だか恥ずかしい気分になること受け合い。
そんな心配を他所に、滞りなく開始された。
~・~・~・~・
playerが指定時刻の会場時間から開演時間までに"Cyber-Goggles"を掛け、左側上部にあるスイッチを押す。試作機の"Cyber-Goggles"は掛けると何も映らない仕組みになっている。これは、playerの目の保護対策である。視界が変わると体調を崩したり、体勢を崩してしまったりするのを防ぐためである。
スイッチを押してから数秒の
今、貴方の視界一杯に広がる場所は緑が青々しく遥か遠くまで続くようにみえる場所。
洗練された肌触りの良い、白い石造りの大広場のようなバルコニーだ。
前方と左右三方を見渡せば、広いバルコニーから遥かに続く森が見える。……振り替えって頂きたい。
バルコニーと同じ石造りの、御伽話のような美しい、巨大なお城に連結している扉があるのをご覧頂けただろうか。
扉は固く閉ざされてはいるが、いづれこちらにもご招待する予定である。
広いバルコニーには、丸テーブルがいくつも、移動を遮らないように並べてある。そのそれぞれに色鮮やかな目新しい異国のお菓子が彩りよく並べられていた。
カラフルなテーブルから一転して、空を見上げれば、目に優しく澄みきって滑らかなCrystalのような青空がキラキラと広がっていた。
何も遮るものなどない、どこまでも続く、吸い込まれそうな空だ。夜になれば、Lapis Lazuliのように澄んだ星空を鑑賞できる。
皆様の今いる場所、こここそがOpening-Ceremonyの会場である。しかし、会場には舞台のような場所はない。これでは、司会者がplayerに隠れてしまうではないかとお思いだろう。けれど大丈夫。
おっと、開演時間のピアノがどこからか聞こえてきた。視線を廻らしたその先にはなんと、あの『
それもそのはず、彼女は世界的に有名な美貌のpianistなのだから。性格は凍てつく氷のようにクール。深海を思わせる青い髪に、同じ瞳。同系色のシンプルドレスを纏い、約二分間引き続けた。
~・~・~・~・
美しいOpening-Melodyに酔いしれる。長くも短くも感じた。演奏の終了と共に盛大な拍手が巻き起こる。日本ではもうコンサートは行われていないために、感動もひとしおだ。しかも生で聞けること自体、奇跡に近い。
まさかのSurpriseに会場は色めきたち、とどまることを知らない。だが、気がつくと彼女の姿は消えていた。ざわめきが起こりかけた瞬間…。
『 Ladies and gentlemen!!』
軽快な声が虚空に響き渡る。すると、三方に巨大スクリーンが写し出された。そこには、黒い和ロリ姿の幻光がマイク片手にドアップで映し出されている。無駄に近い。
『本日はお集まり頂き、誠にありがとうございますぅ!!お忙しい中のご調整痛み入ります、はい~!!景色やお菓子、余興は楽しんで頂けましたでしょうか?!いやぁ、まさかの水花様に驚かれたことと思います!!友情出演にございますよ~?!姫様の!!
因みに現在、あの方はウィーンにいらっしゃいましてですね。これから、コンサートだそうです、はい~!』
拍手が巻き起こる。それにしても、ドアップはどうにかならないものか。しかし、女性陣からの『可愛いー!』という声が頻りに聞こえる。
『え?マジっすかぁ?ありがとうございまーす!』
この軽いテンションを突っ込みたい者もいるはずだ。
『あ、わたくしは《電波の妖怪・幻光ちゃん》でございます!ゲームシステム全てを作成させていただきましたー!』
一斉に『おおー!』という声と拍手が巻き起こる。
『しかしながら、皆様の興味の矛先の『Private Maid Servant』。こちらに関しましては姫様がお造りになりましたー!』
押し出されるようにして、姫様が現れる。
『え?ボクも出るの?あ、皆ー!元気かなー?』
にっこりとメイド風ゴスロリで手を振る。一気に会場が沸き立つ。
『えーとボクは、『聖カランコエル皇国第三皇女』《デュプロ・G・R・カランコエル》だよ!』
一気にvoltageが上がる。
『んと、皆の気掛かりは"Android"についてだよね。』
少し淋しそうに笑う。会場がそれに習うかのように静かになる。
『選ばれた人は少ないけど、"partner"みたいなもの。出会えたら、お友達になってあげてね。』
その一言で会場にいるplayerの不満は、一蹴された………多分。
~・~・~・~・
このような軽い交流会形式のOpening Ceremonyを三回とも、リアルタイムで行う。水花も休憩の合間を縫って、協力してくれていた。0時と共にOpening Ceremonyは滞りなく、終了。
playerも人間である。
注意事項に、《Opening Ceremonyの内容は終了までは外部に漏らさないよう、お願い致します。》と記載していた。しかし、第一陣・第二陣のplayerは興奮覚めやらなかったようで。
『case1
blogに記載しようとした
《Opening Ceremonyの内容は終了までは外部に漏らさないよう、お願い致します。》
掲載を試みるたびにテロップが流れた。』
『case2
友人にメールを送ろうとした
《Opening Ceremonyの内容は終了までは外部に漏らさないよう、お願い致します。》
この文章に自動変換されたものが友人に届き、同文が送信BOXにある送信メールに変換されていた。』
『case3
友人に電話しようとした
《Opening Ceremonyの内容は終了までは外部に漏らさないよう、お願い致します。》
通話中に音声認識し、音声ガイダンスが流れ、通話が切れた。』
幻光の能力を嘗めてはいけない。《電波の妖怪・幻光ちゃん》の異名は自称だが、伊達ではないのだ。事前にplayerの通信回線を全てインプットし、妨害対策をシステムに組み込むなど朝飯前なのである。それが数百万規模であろうと、数千万規模であろうと。流石にクレームの嵐だったが、注意事項を軽視したことが原因だ。即座に理解した者からはクレームは来ていない。リアルタイムで参加者と対話していても、抜かりはない。二十四時間体制で管理するのは、play開始前でも変わりはない。
だからといって、player各位にpenaltyを課すことはしない。理解に乏しい部分は人それぞれ。全てをサポートするのが、彼女の役目である。快くplayして頂くために、心を砕くのは当然だ。aftercareもこなし、万全を期する。穴があってはいけないからだ。不確定要素は排除しなければならない。理解を得てこその運営である。
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