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パジャマを脱ぎ部活の練習着に着替える。それから部活バックのエナメルに制服一式入っていることを確認する。忘れたら悲惨だからね。
エナメルの中身を確認して,顔を洗いに一階にある洗面所に向かう。
洗面所では先客がいた。父親だ。髭剃りでもしてたのだろう。
父親と鏡越しに目が合う。
「朝練か」
「ん」
「学校には慣れたか」
「ん」
ん,しか言ってないな。最近父親に,ん,以外の言葉を言ったのはいつだろ。
父親が去り際に,おっさん特有のメンソールのニオイを残してどっか行った。
鏡の横にある時計を見る。5時40分。朝練は6時30分からで学校までに15分かかり,一年生だから20分前には着きたいから……。
今日の予定を頭の中で考えながら洗顔を済ませる。
あと10分で出たい。いけるか。
足早にリビングへと目指す。ママにおはよう言わなきゃ。
リビングのドアを開けると,テーブルの上にアルミホイルに包まれたおにぎりが三個あった。
「ママ,おはよ」
「愛梨おはよ。持ってく分のおにぎりテーブルにあるから,つつんで持ってて」
「はーい」
キッチンにいたママの指示に従いそばにあった包む用のハンカチで包みにかかる。ものの3秒でおにぎりを包み終わる。まさに職人芸。奥義習得。免許皆伝。
「はい,お茶と箸」
「ありがと」
「今日は何時ころ帰ってきそう」
今日は体育館使えるのは後半だから…
「だいたい8時くらいかな」
「わかった。
「うん」
そう答えてリビングを出る。階段を上り自分の部屋に直行。ママのおにぎりとスマフォをエナメルに投げいれ,ついでに制服が入っていることをもう一度確認する。
……よし大丈夫だ。
机の上にある時計を確認する。5時44分。よし,余裕。
学校指定のリュックを背負い,エナメルを肩にかける。
ドタドタドタとイキヨイよく,かつ転げ落ちないよう慎重に降りる。
「忘れ物はなーい」
玄関に着くと,リビングのほうからママの声が聞こえた。
ないよー,とスニーカーに履き替えながら答えた。
よし。
「いってきまーす」
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