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「君はどこからきたの」
私は隣にいる男の子に尋ねる。男の子はじっと前を向く。
私たちは浜辺の上にいる。目の前にはオセジニモきれいとは言えない海。
ああここはおじいちゃんの家の近くの海なんだと思った。
そして隣にいる男の子は私が最初に好きになった人。
最後に会った11歳のままの姿。
「君はどこからきたの」
私はもう一度聞く。男の子は反応しない。
寝返りを打つと私は自分の部屋のベッドにいた。目の前には汚い青緑の海ではなく,クリーム色の壁があった。
久しぶりにあの夢見たな。私の初恋の夢。小5の夏の夢。
あの男の子の名前や顔を思い出そうとするが,全然思い出せない。
いつもそうだ。この夢を見た次の朝は必ずあの男の子のことを思い出そうとするが,ぼんやりとした容姿しか思い出せない。
一度目をつむり,腕を胸の前でバッテンにし,背中を丸め,んんとうなった。
よし,起きよう。
そう決意しイキヨイよく起き上がり,枕元にあるスマフォを手にとった。
スマフォの充電コードをとると,画面が明るくなる。目を細め,画面を見る。
5時30分,1分前。
アラームが鳴る1分前。
スマフォを手際よく操作し,アラームを解除して起きる前と同じ位置に戻す。
まだ頭が完全に起きてない。もやもやとした何かが頭の中でふわふわしている。
早くベッドから出なければ。
そう思いなんとかベッドから抜けだし,伸びをする。少し頭のもやもやがすっきりした気がする。
窓に近寄りカーテンを開き,外を見た。どんよりと曇っている。雨は降っていない。よし,歩いて行ける。
勉強机の上にあるデジタル時計が5時32分であることを教えてくれた。
「さてと,行かなきゃ,な」
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