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「あの先生の名前なんだっけ」
はつらつした声で隣にいる女の子が尋ねてくる。
同じ女の子なのになんで声がこんなに違うんだろう。
私の声はいつも元気がないと心配されるほど声に覇気がない。だからちょっとうらやましい。
「ねえ,なんだっけ」
「わかんないよ。私たちのクラスだけ国語の先生違うし」
他のクラスは2組の担任の木本先生で私たちの5組だけあの先生だ。
「ふうん。嫌いなのね」
「嫌いじゃないよ」
あの先生は小学校の担任だった国見や亀田と違って,私にみんなの前で元気がないというのを理由に何度も音読させない。それだけで好感を持てる。
「じゃあ興味がないのね」
「多分・・・。よくわかんない」
「自分のことなのにわかんないなんて変な話ね。私のほうが詳しいんじゃない」
そうかもね。
そう思ったけど声には出さなかった。
雨は未だにざあざあ降っている。心無しか少し弱まった気がする。傘の外に手をのばし,手のひらで受け止めてみる。
「ねえ,なんであいつに嘘ついたの」
なんの話かわかんなかった。じっと手のひらのくぼみにたまっていく雨水を見て聞こえないふりをした。
「ねえ,なんで雨が弱くなるのを待っていましたって嘘をついたの」
私の女子にしては大きい手にできたくぼみに雨粒が積もり,それらが結合しあい水たまりになる様子に見とれてるふりをした。
「ねえ,なんで
思わぬ名前が出てきて思わず手を下した。
私の水たまりがなくなった。
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