第6話
また十匹くらい人狼を倒した日のことだった。三人で村の酒場に入って行った。軽く酒を飲みながら、自然と話題は魔王のことになった。
酒場のマスターがいう。
「魔王軍は北の領土を荒らしているそうです」
それを聞いて、おれたちは複雑な気持ちだった。魔王軍の総大将である魔王は、ほんの昨日、直接この村のそばまで突撃してきたのだから。
「あの魔王は影武者だろうか」
おれはそんな疑問を女勇者にふっかけた。
「あの強さで偽者ってことはないでしょう」
女勇者はいう。
「でもなあ、魔王が単騎で攻めてくるなんてありえないよ」
「それはさあ、あたし思うんだけどさあ」
女勇者は、何か悲しげな顔でいった。透き通るような憂い顔。
「あの魔王って、友だちいないんじゃないか?」
それは、おれには意外な想定だった。魔王が友だちがいないとは。
「それは、ないだろう。命令すればいくらでも追従する家来くらいいるだろう」
「でもさ、そういう家来とか求めてなくて、本当の心を通わせる友だちがいなかったらどうするの?」
「そんなことありえないって」
「でもだよ、わずか十数年で魔族を戦争で統一し、自分の魔力の強さだけで権力を維持しているやつなんだよ。決闘を挑んでくるのに、立会人も連れてこないんだよ。あいつ、たぶん、よっぽど魔界で寂しいんだよ」
「そうかなあ。魔王だぜ?」
「そうだよ。あたしには戦士と女魔王使いがいるけど、あの魔王には友だちがいなかったよ」
ううん、そういうものかあ。女勇者の考えることはわからない。
おれは万が一にも、魔王に友だちがいないなんてことはないと思うけどね。女勇者って何考えているんだろう?
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