第3話

 その男はかなりの美青年だった。と、男のおれでも思う。ある剣士を女勇者が仲間にしたのだ。四人目の仲間だ。剣士らしいので、頼もしい。

 で、いつものように人狼の群れと戦ったんだけど、このイケメン剣士、全然使えねえ。おれと女勇者でほとんどやっつけた。

 おれは正直、こんな仲間いらないと思ったけど、女勇者はイケメン剣士をおだてて育てるつもりらしい。おれは面白くない。女勇者はイケメン剣士を優先して話かけているように思える。

 まさか、女勇者のやつ、イケメン剣士に気があるんだろうか。

 そんなことを女魔法使いに聞いてもしかたないし、おれには別に関係ないし。

 で、しばらく、そのイケメン剣士と一緒に旅をしたわけですよ。ええ、五日間ぐらいは旅をしていたと思います。その間、女勇者とイケメン剣士の間に何があったか、何もなかったのかは、まったくおれは知りません。

 で、その五日目に、イケメン剣士は女勇者の財布からお金を盗んで逃げていきました。ええ、そうです。イケメン剣士は、実は剣士なんかじゃなくて、盗賊だったんです。道理で役に立たないわけです。

 ああ、あんなやつ、いなくなってせいせいしました。あのイケメン盗賊と女勇者の間に何があったかはまったく知りません。おれは関係ありません。

 ずきずきと、人狼と戦った傷が痛みます。

 そんなやつもいたなあ、という話です。この話はそれで終わりです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る