第2話

 人狼を二十匹くらい倒した日のことだった。たまたま、どっかの国の王都についた。その国の王様が、魔王退治に向かう旅の一行に会いたいといってきた。女勇者は、

「王様というものに会うのは初めてだ」

 といっていた。おれも、王様なんてものがどんなたいそうなものか知らないから、ふうん、そうかあ、ぐらいにしか思わなかった。で、城に入っていったんだが、王様に謁見の間で会うと、王様は貫禄があって堂々としていたが、なんか、隅にびくびくおどおどしているやつがいる。聞けば、その国の王子だという。

 王子はなかなかの美男子で、怪物退治をしている剣豪が来たと聞いてすっかりびびっていたらしいのだが、もちろん、剣豪とは女勇者のことで、おれのことではい。だが、その剣豪が女の子だとわかると、急に態度を変えた。

「初めまして、この国の王子です。あなたのような美人に出会えて心から嬉しく思います」

 とかぬかしやがる。てめえ、さっきまでおれたちにビビって、粗野な乱暴者は苦手だとかいっていたじゃねえか。

 それで、ふと、女勇者の顔を見たら、驚いた。なんだ、こいつ。にやにやしていやがる。どうも、女勇者は、かなり喜んでいるようだ。

「どうしたんだ、おまえ」

 とおれが女勇者に聞いたら、

「だって、王子さまだろ、本物の」

 とかいいやがる。なんだあ。ふざけんなよ、女勇者。おまえまで、王子だと聞いただけで頬を赤らめて、きゃあきゃあいっちゃうような軟弱者だったのかよ。うんざりだよ。

 ああ、わかっている。別におれは女勇者の彼氏でもなんでもないんだから、女勇者がどんな男に気を引かれようと知ったことではない。おれが口を出す問題ではない。おれはただの女勇者の戦士なのだ。

 だが、女勇者までねえ。

「おまえ、喜んでんじゃねえよ」

 と、城を出たらいってやったが、女勇者は女魔法使いと、王子のうわさについてわいわい話し合っていた。なんか、気に入らんけど、別におれには関係ないし。

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