第14話

 西の国は、中央に魔法都市があり、クローン人間を培養して機械帝国を作り上げていた。誰が、何のために作ったのかわからない。完全な管理社会だった。人々は、一つの誤差もないように機械的に作業をして、機械的な生産活動をくり返していた。その富がどこにたまっているのかはわからなかった。

 労働者は、機械と何ら人権は変わらず、西の国では機械がヒトと同じだけの権利を持っていた。西の国には、遊びというものがなく、ただ黙々と働き、最適値で効率よく生産活動し、最適な休眠をとるのが当たり前だった。

「何が楽しいんだろう、こんな社会があって」

 と弐卦がいうと、

「天帝のいっていた平等で民主的な博愛に満ちた社会なんじゃないの?」

 と此花はいった。

「あたしは好きよ、この国。一生懸命働いて、ただ黙々と働いて、ご飯を食べて寝る。その積み重ねを次の世代に残す。何がいけないの、弐卦?」

「何がいけないって、全部、規則的だ。全部、予測できてしまう。そんなの、生きているとは思えない」

「天帝にとってのあたしたちも同じなんでしょ。むしろ、こういう社会が嫌なら、天帝たちの作った乱世の世界を悪く言ってはダメじゃない」

「だけど、おかしいよ。わからないけど、おかしいんだ。まちがっているよ、こんなの。遊びのない社会なんて、正しいわけがない」

「だから、愛玩動物を作って、世界を操るのでしょう。結局、神々の方が正しくて、弐卦、あなたの方がまちがっていたのよ。どうするの。この世界をどう救うというの、弐卦」

 弐卦は答えがわからずに、頭を抱え込んだ。

 わからない。何をしたらいいんだ。ぼくはただの世間知らずだったのか。と悩んだ。


 監視ロボットが来て、弐卦と此花に詰問した。

「ここで何をしている。登録番号がないぞ。人間失格(ダウトナンバー)だな」

「あたしは視察に来た外部のものです」

 と此花がいった。

「よし、登録所に行き、許可証をもらえ」

「はい」

 此花は無事に監視ロボットをやりすごした。

「ぼくは、ぼくはおまえたちをぶっ壊しに来たんだあ」

 弐卦は監視ロボットに剣で襲いかかった。がんがん、監視ロボットの装甲は厚くなかなか壊れない。

「こいつ、人間失格(カテゴリーエラー)か」

 監視ロボットが弐卦に体当たりした。弐卦は強烈な打撃を受けてひるんだ。

「くそっ」

 弐卦は、監視ロボットから逃げ出した。

「あとで、迎えに来る」

 此花にそういって、弐卦は走って行った。

「もう。ちょっとはうまくやりなさいよ」

 此花はぷんすか怒っていた。

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