第2話

 ジトとリリが夕飯を食べ終わった後、夜になってから暗黒の塊がやってきた。

「何あれ?」

 リリは怖がって震えた。

「ははん、どうやら、マジェイン先生直々にご登場のようだ」

 それを聞いて、リリは反対した。

「ジト、マジェイン先生を悪くいうのはやめてよ。さっきの剣士だって、きっとマジェイン先生とは関係ない人だったんだよ。ジトはそこら中で悪さしてるから、誰かに恨まれたんだよ」

「リリ、いまのうちにいっておくぞ。あの暗黒の塊はマジェインが自分の姿を隠しているんだ。堂々と暗殺に来たのさ。マジェインとは、そういうやつだったんだよ。いいか、おまえも魔術師の見習いなら知っておけ。魔術師を信用するな」

 リリはしゅんとして、大人しくなった。

「だって、リリは良き魔術師になりたかったんだよ」

 ジトは鼻で笑った。

「良き魔術師? そんなやつは一人もいやしないよ」

 そして、暗闇の塊がジトの前までやってきた。

 ばっと、暗黒が広がった。周りの人も何が起きたのか、ジトの方を注目した。暗黒は、ジトを包みこみ、暗闇の中で何が起こっているのか、リリにも、周りの人にもわからなかった。

「くそう」

 ジトが暗闇の中から、空を飛んで、飛び出してきた。

 暗闇の塊は、リリに迫る。

「あの、あなたはマジェイン先生ではありませんよね」

 暗闇の塊が姿を消した。

 そこに現れたのは、マジェインとは別の、見たことのない太った男だった。

「やっぱり、マジェイン先生じゃない」

「そうだよ。わたしは、ザペインというものだ」

 ザペインがリリの近くで魔法を使うと、リリは眠ってしまった。

 そして、ジトが慌てて戻ってきた。

 ザペインの姿が変わる。

 現れたのは、やはり、魔術師マジェインだった。別の姿に変形していたのだ。

「リリをどうする気だ」

「どうすることもない。リリ、あなたは少し眠っていなさい」

 そして、ジトとマジェインはお互いににらみ合った。

「禁書を読んだぞ。この王国は、悪魔に売られたらしいな」

「人聞きが悪い。何が悪魔かもわからぬ小僧のいうことではない。死んでもらうぞ、ジト」

「国ごと滅ぼしてやる、こらあ」

 先制攻撃はマジェインの方だった。ジトより、やはり、速い。

「痛め」

 ジトに激痛が走った。

 だが、ジトにかけられた魔法は全自動で反撃されるのだった。

 ジトにかけられた激痛の魔法が逆にマジェインを襲う。

「バカな」

 マジェインは体中に走ったあまりの激痛に耐えきれなくて、失神しそうになった。

 ジトの反撃魔法は、三倍返しだ。

 さらに、ジトの追加反撃。

 核融合爆発がマジェインを包み込んだ。

 その隙にジトは、時間の流れに介入した。ジトの体内の時間が限界まで加速した。

「とどめだ、マジェイン。バラバラになれ」

 マジェインの体が、千切れて、バラバラになった。

 ジトが勝ったのか。しかし、魔術師の戦いはそう簡単には、わからない。

 バラバラになったマジェインの体がくっつき、元に戻る。全自動蘇生だ。

「どうやら、おまえを見くびっていたようだ、ジト。やり直すとしよう。時間よ、初めに戻れ」

 気がつくと、ジトはリリと一緒に夕飯を食べていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る