第15話

 おれは、次は五人の魔女っ娘に話しかけた。

「きみたちは、毎夜、毎夜、天才科学者と戦っているんだろう?」

「うわっ、それ、すっごい秘密なのよ。絶対に内緒にしておいてね」

 リリナがいう。

「それで、きみたちはなぜ争っているんだ?」

「それは、魔法少女の秘密よ」

「実は、特に理由はないんだろう?」

「それは、魔法少女であるがゆえに」

 えへん。おれはひとつ大きく咳をした。

「毎日、特に理由もなく戦いつづけ、傷ついているんだろう?」

「わたしたちは、世界を守っているのよ。世界のために。あ、ごめん、これ以上は秘密」

 わかっているのだ。この五人娘に戦う理由がたいしてないことは。

 なんだか、この五人は、青春しているなあ。

「で、どの天才科学者がいちばん好みなんだい?」

 おれが質問を持ちかけると、五人の魔女っ娘は、教科書を丸めてぎりぎりした。

「わたしは、小林がいちばん許せないわね。徹底的に痛めつけて、土下座して謝らせるわ」

 ふむ。

 それから、同級生の湯川、朝永、江崎、小林、益川に対して、語るのも無残な罵倒がとびかったのである。

「天才科学者たちはどんなやつらなのかな?」

 とおれが聞くと、

「ドエロ」

「セクハラ」

「変態」

「萌え豚」

「露出狂」

 との回答があったのである。五人の男子同級生は、かなり、破廉恥にがんばっているようだ。

「天才科学者が地球の平和を乱す可能性はどのくらいある?」

「それはゼロに等しいわね。わたしたちがいる限り、悪が栄えることはないのよ」

 かなり、見通しは明るそうである。

 おれは、その日は熟睡できた。


 そして、次の日は、五人の天才科学者を訪れた。

「きみたちは、毎夜、五人の魔女っ娘と戦っているんだろう?」

「わははははは、いかにも、その通りじゃあ」

 天才科学者は異常に陽気だった。手に持った道具で、あちこち暴れている。これが天才というものだろうか。

「いったい、きみたちはなぜ魔女っ娘と戦っているんだ?」

 おれが聞くと、五人が大笑いした。

「わははははは、天才に生まれたからには、魔女っ娘と戦わないわけにはいかないだろう」

「はたしてそうだろうか」

「天才は魔女っ娘と戦う宿命なのじゃよ」

 わははははは、と天才科学者たちは笑う。

 特に、おれが考察することはない。

「天才に生まれたからには、天才として、天才にふさわしい高校生活をするべきだろう」

 それがはたして、魔女っ娘と戦うことであろうか。

「おっぱい、おっぱい、おっぱいいい」

 ああ、やはり、破廉恥にがんばっているようである。

「とにかく、未来の計画はたっぷり詰まっているのだ。あんなことや、こんなことも、そんなことや、やっぱり、あんなことも、極めつけにあんなことをしてやるために」

 これ以上、聞かない方がいいだろう。

 これが天才科学者の現状と未来の展望である。

 天才科学者が、地球の未来を脅かすことは、五人の魔女っ娘ががんばっているかぎり大丈夫だろう。わかっているのだ、この五人の天才科学者に特に戦う理由がないことは。

 おれはその日も熟睡した。

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