二十五話 夏休みの課題を三人で
八月三十一日。明日から新学期。
だというのにこいつらは……。
「
「蘇我! 私は英語! 一生のお願い!」
俺に向かって両手を合せる悪友ども。
今、俺たちは小さめのコタツテーブルを囲って座っていた。俺の左側にいる
「駄目だ、課題は自力でやれ。神保も佐久間も高校二年にもなってそんなのでどうするんだ」
俺は厳しい態度で二人に対する。
来年は受験なのだ。そろそろ真面目に勉強していく癖を付けないといけない。
なのに神保は友の心を知ろうとせずにへらへら笑い。
「いや~、積んでたゲームが多くてよ~。やっぱ最新のゲーム機はグラフィックが違うぜ?」
「ゲームなんかで夏休みを潰すとはな。小学生かよ、神保は」
「いやいや、大人こそゲームするもんなんだよ。Z指定のゲームもあるしな」
「エロゲーも十八禁だもんね」
佐久間がシャーペンの先を神保に向ける。
「おいこら、佐久間。女がエロゲーなんて言うな」
「蘇我、ホントに頭堅いね。別に私がするわけじゃないよ? するのはあくまでお兄ちゃん」
「健太郎さん、十八才越えてから全開でエロゲーだもんな」
「ホントすごい。エロゲーの発売日が重なる日は、都会の電気街に行って山盛り買ってくるもんね」
神保と佐久間がエロゲーの話で盛り上がってしまう。
佐久間の兄である健太郎さんには俺は会ったことがない。こいつらの話によく出てくるのでヘンなイメージができあがってしまっている。
「おいこら、お前ら。勉強する気がないなら俺は帰るぞ」
俺が腰を浮かせると、左右にいる神保と佐久間が同時に俺の腕にしがみついてきた。
「待ってください! 今、蘇我様に帰られると課題が終わりません!」
「二学期早々、鬼瓦に怒鳴られるのは絶対に避けたいのです!」
鬼瓦というのは俺たち三人の担任のことだ。
旧姓が
そう呼ばれていると本人も知っているが気にしていないようだ。
「だったら真面目に課題をしろ。分からないところがあったら教えてやるから」
俺が座り直すと二人はすぐに手を離す。
「はぁ……やっぱり自力か……数学とか訳わかんねぇよ」
「英語なぁ……英語なぁ……」
ぶつくさ言いながら神保と佐久間は課題に取り組み始める。
こいつらだってやればできるのだ。
ちょっと手持ち無沙汰になった俺だけど、テーブルの上は向かい合って座る神保と佐久間の勉強道具で埋まっていて、俺の分のスペースはなかった。
何となく今いる部屋の中を見回す。
「ん? 乙女のお部屋に興味津々ですか、蘇我君?」
部屋の主たる佐久間に見つかってしまった。
「そういうセリフは乙女らしい部屋の持ち主に言ってほしいぞ。思っていた以上に佐久間らしいな」
絨毯とカーテンは青系統。基本的に余計なものがなくて、壁にセーラー服が掛かっていないと女子の部屋とは分からない。
まぁ、同年代の女子の部屋に入ったのはこれが初めてなので、一般的な女子の部屋なんて知らないけど。
ぬいぐるみの類いはどんな女子だろうと持っているものと思っていた……。
「そう思うだろ? でもこっそり乙女を隠してたりするんだよな~」
神保がのけ反って後ろに手を伸ばし、その先にある学習机の上から二段目の引き出しを開けた。
「あ、こら! 勝手に開けるな!」
佐久間に怒られても気にしない神保が引き出しから取り出したのは小さな瓶。
「何だそれ?」
「マネキュア。他にもいろいろと……」
「漁るな、神保!」
佐久間が神保に向かって消しゴムを投げ付ける。見事神保の額に命中。
「いて、分かったっての」
マネキュアの瓶を元どおりしまってから神保が引き出しを閉める。
「へぇ、佐久間でもマネキュアなんて付けるのか?」
我ながら間抜けな声で言ってしまう。
それくらい、佐久間と化粧は遠く離れているのだ。
「いやいや、今まさに付けてますが」
佐久間がテーブルの上で手を広げてみせる。
そうやって爪を見せられても俺にはよく分からない。首を傾げてしまう。
「ぎゃはは、言われても分からないとか蘇我らしいな」
「む、だったら神保は分かるのか?」
神保だって女っ気のない男なのだ。
「分かるって。今付けてるの、俺が買わされた奴だし」
「お前が買ったのか?」
「て言っても百円ちょっとの奴だよ。商店街の小物屋さんで買わせたの」
佐久間が悪びれる様子もなく言う。
まぁ、こいつらの仲なら奢り奢られはよくある話だろう。
「ヘンに色気付きやがってよ。今だってアイラインなんて引いてるし」
「え、分かる?」
神保に言われて佐久間の頬が少し赤くなる。
そして視線だけ俺に向けてきたけど、俺はやっぱり分からないので首を傾げて応える。
「お前の顔は見飽きてるからな。見れば一発だ」
「そっか、神保は分かるのか。そして蘇我は言われても分からない、と」
「わ、悪い……」
「いやいいけどさ。ただ気分でしてるだけで、あんたら二人に見せるためにしてるわけじゃないんだし」
「そ、そうか」
とはいえ何となく俺は気まずく思ってしまう。
こういう女子の微妙な違いを分かってやるのは男子の務めではないだろうか? たとえ友だちでも。
ともあれ二人は課題に取り組んでいく。
暇な俺はちらちらと佐久間の爪先を見てみる。
こいつは柄にもなくマネキュアを付けているらしい。
そう言われてみれば若干艶があるかも? よく分からない。
「やべぇ! 物理のプリントがねぇ!」
急に神保が声を上げた。
「家に忘れてきたの? 取りに帰りなよ」
呆れたように佐久間が言う。
前に聞いていたが、神保の家は佐久間の家から歩いて行ける距離らしい。
「しゃあねぇ、行ってくるか。二人っきりだからって蘇我を襲うなよ、佐久間」
「襲うの私かよ」
ばたばたと騒がしく神保が出ていった。
そして佐久間と二人きり。
緊張しないと言えば、嘘になる。
「ねぇ、蘇我。ここ分かんない」
佐久間がプリントをこっちに向けてきた。
「ん、ここはな……」
「うん」
プリントを見るために佐久間が身体を寄せてくる。
気にしないふりをして教えてやるが、佐久間がうなずいた拍子に向こうの肩がこっちの腕に当たった。
思わずどきりとしたが佐久間は気にする様子もなくプリントをのぞき込んでいる。
ともあれ教え終わった。
「サンキュサンキュ、やっぱ蘇我は頼りになるね」
間近で、にっと笑いかけてくる。
そしてプリントを自分の側に戻すと続きを解いていく。
「ねぇ、蘇我」
「ん?」
プリントに視線を落としながら佐久間が話しかけてくる。
「ゴメンね、返事しなくってさ」
「あ、いや……じっくり考えてくれよ」
「そうだね、よく考えるよ。いい加減なことはしたくないしさ」
「うん」
そう言われて俺はがっかりしたが、同時に、ほっともした。
返事を聞く勇気がないのかもしれない。
「あ、ここも分かんないや」
佐久間がまたプリントを向けてくる。
「ここか……ここはな」
「うん」
また身体を近付けてきた佐久間だが、ふいに顔を上げてこっちの顔を見た。
ちょっと気まずそうな、どうしていいのかよく分からないという思いが出てしまった表情。
彼女がアイラインを引いているのかどうか、俺にはあいかわらず分からない。
俺はプリントを少し佐久間の方へ向けた。
こうすれば佐久間はそれほど俺の方へ近付かなくてすむ。
「……というわけだ」
「なるへそ。さすがだね、蘇我は」
今度は微笑み。さっきほど無邪気ではない。
それから黙々と佐久間はプリントに取り組む。
俺も話しかけずに神保の勉強道具をぼんやり眺めたりして気まずい時間をやり過ごす。
「ただいま!」
ようやく神保が帰ってくる。
「ここは神保の家じゃないっての。あった、プリント?」
いつもの明るい調子で佐久間が言う。
助かったと息を吐く俺。
「あったあった。こっちも分からねぇところだらけなんだよな。頼むぜ、蘇我先生」
「いや、まずは自分で解けよ」
「はいはい」
しばらくプリントにかじり付いていた神保だが、十分と経たずに集中力を切らして俺の方へ顔を向けた。
「この夏は惜しかったな」
「ん? まぁ、勝負だし仕方ないな」
佐久間は顔を上げない。
「でもお前が負けた高校は甲子園まで行ったし、もし勝ってたらうちの高校が甲子園行けたかもな」
「それはどうかな? うちの野球部はそこまで強くないからなぁ」
「でもお前は本気で勝ちに行ってたもんな。負けてグラウンドで泣いたのにはびびったぜ」
佐久間がちらりと俺を見てきたのを視界の端に捉える。
「うるさいな、人の恥をえぐってくるなよ」
「恥じゃないよ」
佐久間が顔を上げてはっきり俺の方を向いた。
そして真面目な顔で続けて言う。
「佐久間はすごく頑張った。だから泣いた。全然恥じゃないよ」
「おう、サンキュ」
「うん」
佐久間が屈託のない笑顔を向けてくる。
「あ、俺だって別に馬鹿にしたわけじゃないぞ」
「分かってるって」
神保の頭に軽く拳をぶつけてやった。
なおも二人は課題に取り組む。
十二時前に佐久間が顔を上げた。
「お昼だね。何食べたい? 作ったげるよ」
身を乗り出して言ってくる。
「ん? 昼飯か~」
「そうだなぁ」
「よし、そうめんね」
こっちが答える前に佐久間が決め付けた。
「お前、最初からそうめんにする気だったろ」
神保が呆れたように言う。
「えへへ、お中元でさ、三件被ったんだよね。そうめんの箱詰めが三つ。さすがに食べ飽きたよ」
「で、減らすのに協力しろ、と」
「いやいや、おいしいのはおいしいから。じゃ、作ってくるね」
身軽に立ち上がると佐久間がぱたぱたと出ていった。
「あいつって、料理できるのか?」
「できるってほどじゃないけどなぁ」
俺が聞いたら神保がため息混じりに答える。
「まぁ、しょせん佐久間だもんな」
「あいつ、昔からがさつなんだよ。ブラチラしてるのも気付いてないみたいだし」
「お前は見すぎなんだよ」
佐久間が着ているTシャツは襟元が広く開いているので、屈み込んだら正面にいる神保からはもろに見えていたはずだ。
さっき俺の側に寄ってきた時にもちらりと見えた。水色。
「バレてたか。言うなよ?」
「ブラチラしてるのを? お前が見てるのを?」
「両方だ、両方」
「お前なぁ、友だちのブラチラなんて見て喜ぶなよ」
俺が呆れた声で言ってやっても向こうは開き直っているのか平然とした顔。
「あんなんでも女子は女子だ。女子のブラチラとかパンチラとかは見たくなるのが男の性ってもんだろ?」
「友だち相手に見境なしめ」
「友だち相手に告白するような奴に言われたくないね」
「やっぱり聞いてるのか。佐久間め……」
困ったことがあれば幼稚園以来の友だちである神保に相談する。
佐久間はいつもそうしているらしい。
高校に入ってからの友だちである俺とはまた違う関係に、二人はあるようだ。
「なんかヘコんでるから俺から聞いたんだよ。お前、試合の前に告ったんだって?」
「まぁな。試合前でテンション上がってる勢いを借りたんだよ。この試合に絶対勝つ、は余計だったけど」
「結果負けた。あいつ、自分がちゃんと返事しなかったせいで蘇我の調子が出なかったってヘコんでたぞ?」
「やっぱりそう思うよな、あいつだったら」
だから今日まで顔を合わせられなかった。
告白までしておいて避けるなんて我ながら情けない。
「ま、俺が慰めておいたから安心しろ」
「サンキュ、持つべきものは友だちだ」
「これは貸しだ」
「神保は告らないのか?」
俺が言うと神保は驚いた顔をし、次いで苦い顔になった。
「やっぱりバレバレか……」
「バレバレだな」
「好きな女のマネキュアには気付かないくせによ……」
「俺にすらバレてるんだ。佐久間にもバレてるんじゃないか?」
そう言ってやると神保はうなだれる。
「だよなぁ。でも今さらなんだよ。幼稚園からずっとお友だちだし」
「なんとなく分かる気がするけど。でも、あいつもお前のこと……」
「できたよ~ん。開けてー」
佐久間が戻ってきた。扉の向こうで声がする。
「おい、蘇我」
神保が俺の袖を引き、口元に人差し指を立てた。
俺はうなずいてから部屋の扉を開ける。
「あ、テーブルの上、片付けてないじゃん。気が利かないなぁ」
「お、悪い悪い」
男二人でテーブルの上を片付けて、見届けた佐久間がお盆を置く。
屈んでお盆を置いた拍子にブラが見えた。
そして三人でそうめんを食べる。
「うん、うまいな」
「でしょ?」
「薄焼き卵は焦げてるけどな。キュウリの細切りもなんか太いし」
「神保はうるさい」
考えてみれば好きな女子の手料理だ。
よく味わって食べよう。
「料理しながら考えたんだけどさ」
「ん?」
男二人、手を止める。
「いやいや、食べながらでどうぞ」
「おう」
佐久間が手で勧めてくるのでまた食べていく。
「私、蘇我とお付き合いする」
男二人の手が止まる。
「いえいえ、食べながらでどうぞ」
「いや、食べながらする話じゃないだろ」
そう言う神保の声は弱々しい。
「というよりも、料理の片手間で考えたのか? 俺と付き合うかどうか」
こっちは決死の覚悟で告白したのに、向こうは気楽に決めてしまった?
なんだか微妙な気分だ。
「私、手を動かしてる時の方が頭がはっきりするんだよ。とにかく蘇我とお付き合いする。蘇我、よろしくお願いします」
佐久間が深々と頭を下げてくる。
俺はうれしいよりまず、神保がどうするのか気になった。
神保は焦りながらも勇気が出ない、そんな複雑な表情をしている。
俺の視線に気付いた神保が顔を向けてきた。
俺はうなずいて神保を促す。
「おい、佐久間」
そう言う神保の声は震えていた。
「何? 神保」
顔を上げた佐久間が神保を見る。真面目な表情。
神保はすぐに言葉を発せない。
俺も佐久間も神保の言葉を待つ。
「佐久間、俺もお前のことが好きだ」
神保はしっかりと佐久間の目を見て言った。
「うん、知ってるよ。ずっと前から私のことが好きだよね。私は知ってた」
「だったら……」
切羽詰まったような神保の言葉を佐久間はすぐに遮る。
「でも、私は蘇我とお付き合いするの。蘇我に告白されてうれしかったから」
「じゃあ、もし俺がもっと前に……」
「そんなの分かんないよ。考えても仕方のない、もしだと思う」
「そっか、だよな。今のは情けないこと言っちまった」
神保がうなだれて頭をかいてしまう。
「ううん、言いたくなるのは分かるよ」
佐久間は神保にそう優しく声をかける。
そして再び俺の方を向く。
「蘇我、そんなわけでこれからよろしくお願いします」
また深々と頭を下げてくる。
「俺こそよろしくな」
俺もお辞儀をした。
付き合う時ってこうするものなのか? 初めてなので俺にはよく分からない。
「よかったな、蘇我」
顔を上げた神保はさっぱりした表情をしていた。
胸の内は分からないが……。
「まぁ、すぐ別れるかもしんないけどさ」
「え?」
平然と言う佐久間に男二人は声を上げる。
「いやだって、蘇我って好きな女の子がお化粧してても気付かない奴なんだよ? 先行きは暗いと私は思ってる」
深くうなずく。
「い、いや、大丈夫だって。佐久間をがっかりさせたりはしないから」
「嘘付けよ、私なりに頑張ってマネキュア塗ってアイライン引いてリップ塗ってしたのに気付いてくれないとか、さっそくがっかりなんだけど」
じとーっと佐久間に見られて俺はひたすら焦る。
「悪かった、分かった。これからは全力で佐久間の変化を把握する」
「なーんてね。しょせん蘇我だもん、その辺は諦めてるよ」
佐久間はため息をついて首を振る。
「愚痴りたくなったら俺に言えよな、佐久間」
いつもの軽い調子で神保が言う。佐久間に優しい笑顔を向けて。
「いいの? 聞いてくれるの?」
驚いた顔で佐久間が神保を見た。本当に意外そう。
「当然。お前の愚痴を聞くのは俺の役目だからな。あ、蘇我、別に横からかっさらおうとかいうんじゃないぞ」
「おう、分かってるって」
「よかった……よかった……」
佐久間が震えた声を出して口元を手で覆う。
目には涙がにじんでいた。
「おいおい、泣くことないだろ? 泣きたいのは俺だっての」
「だって……だって、終わりかと思ったんだもん……。ずっと仲よしだったのに、振っちゃってもう終わりだって……」
佐久間が派手に鼻をすする。
「そんなわけないっての。そうめん食おうぜ。焦げた卵と一緒にな」
神保がそうめんを勢いよくすすった。
こうして俺と佐久間は付き合うことに。
それはそれとして、夏休みの課題はこなしていかなくては。
「おい、蘇我、これどう解くんだ?」
「ねぇ、蘇我、ここ分かんない」
二人同時に言ってくる。
「ちょっと神保、ここは彼女さんに譲りなさいよ」
「うるせぇ。蘇我、俺はお前の友情を信じてるぜ」
「じゃあ、神保から」
「ちょっと待ってよ、蘇我!」
別にすぐ後で教えるんだし目くじら立てるな。
そしてどうにか二人とも課題を終えた。
「お疲れ~」
「お疲れ~」
佐久間がテーブルの上に寝そべり、神保が伸びをする。
「じゃあ、俺は帰るわ」
神保がテーブルの上に出したものを片付けていく。
「え? 一緒にゲームしようよ。協力プレイしてほしいんだけど」
「いやいや、お前ら今日から付き合い始めたんだろ? 二人で仲睦まじくしてろよ」
「ええ~、蘇我だけじゃクエストクリアできないよ。神保もいていいよね、蘇我?」
「おう、俺はゲーム下手だしな」
「駄目だ。今日は二人で過ごせ。俺は帰る」
神保は首を横に振って部屋を出ていこうとする。
「ねぇ、神保。また遊んでくれる?」
佐久間がすがるように言う。
扉を開けたところで神保が振り返った。
「当たり前だろ。前みたいにってわけにはいかないけどな。でもあいかわらずお前らとは友だちだから」
「うん。じゃあまた明日」
ほっとしたらしい佐久間の声。
「おう、また明日」
神保が出ていく。
俺と佐久間は付き合うことになった。それでも佐久間と神保が幼稚園からの友だちなのには変わらない。
もしかしたら佐久間にとっては俺より神保とのつながりの方が強いのかも?
小さい頃からの友だちか……なかなか手強そうだ。
「じゃあ、ゲームするか?」
「ううん、神保がいないと勝てないよ。今日はお話とかしてようよ」
「うん、そうだな」
とはいえ改めて話となるとすぐに話題が思い付かない。
俺はいつも聞き役だったと思い出す。
頭を高速回転させていると佐久間が急に吹き出した。
「え? どうした?」
お互いに慣れていない微妙な空気がおかしかったのだろうか。
「いやゲームで思い出したんだけど、小学四年の時に神保の奴が都会の電気街に行くなんて言い出してさ。でも一人で行くのは怖いから私も一緒に来いとか……」
と、結局この日は神保の話ばかり聞かされた。
なかなか手強そうだ。
(「夏休みの課題を三人で」 おしまい)
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