第29話 どう思われていたんです?

「恋人にしたい候補がこれだけいるんだけど

 どれにしようって写真を十枚近く出してき

 たの」


当然又吉は初めて聞く話だ。


「その写真をね、テーブルに並べて私に聞いた

 のよ、インスピレーションで誰がいいかと」


又吉の食いつきがよかったのか紗季の舌もいよ

いよ滑らかになって来た。


「私が選んでも仕方ないといったんだけど、姉

 が言うには近親者のインスピレーションは心

 理学的にも合理性があるからとか、その後、

 小難しい理論説明してたけど、要は私が選ぶ

 方がより最適な人を選べる可能性があると」


「写真だけで、ですか?」


「あくまで姉の話ですよ」


「で、僕を選んでくれたと」


「そう」


嬉しそうに紗季が頷いた。


「じゃあ、僕が今ここにいるのは、紗季さん

 のお蔭なんだ」


「そうよ、恨むなら私を恨んでね」


「恨むだなんて」


言いながらも又吉は首を傾げ


「で、結果あのデート行事ですか」


三人での食事会を称しているのだろう。


「私はてっきり姉とシンリさんはお付き合いされ

 ているとばかり思っていましたから」


「全然」


又吉は手のひらを振った。


「だったら・・・」


ふっと思い出したのか


「姉探しのこの件、ご迷惑だったわよね」


「いえ、とんでもない」


「でも姉とは恋人同士じゃなかったんですよ

 ね」


「そこのところは僕にはよくわからないんですよ」


「シンリさんはどう思われていたんですか、姉の

 事」


真っ直ぐ又吉の顔を見た。

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