第25話 どんな関係に見えますか

「陽子さん何されてるんでしょうね、今頃」


目を細めてワインを飲み干した又吉に酌をし

ながら


「何故姉は旅行に行くなどと、しんりさんに嘘

 をついたんでしょう」


「嘘かどうかわかりませんよ。現実に今旅行に

 行かれているのですから」


「でも実際に行ったのは昨日、シンリさんには三

 ヶ月も前に行ってる事にしてるでしょ」


「確かにおかしいですよね。普通なら旅行に行く

 なら行くで、紗季ちゃんには伝えて行くでしょ

 うから」


「普通じゃなかったって事でしょ」


二人の間に気まずい沈黙が流れた。

確かにおかしいのだ。

陽子から旅行しているというメールが来たのは

つい、さっきだ。

 もっと前に知らせてもなにも問題はない。

なぜ、こんな遅れて・・・


「陽子さんに代わったことありませんでしたか」


「何も」


紗季は即答した。

何か事前に心当たりがあれば、多少の納得もする

がとにかく突然にいなくなったのだ。

先ほどのメール一通では、今一つしっくりこない

のも事実だ。

 紗季は又吉から注がれたワインを一気にあおった。

気が付けばワインの瓶はもう空だ。

ほとんどを紗季が飲んでいる。


「うふ、もう空になっちゃったわ、ほとんど私が飲

 んだみたい」


「もう少し買ってきましょうか」


「ううん、もう結構」


首を振りながら、紗季は大きく伸びをした。


「仕事を辞めたのも解せませんよね」


腕組みをする又吉に


「しんりさんと姉の関係ってどんなんだったんで

 すか」


紗季が唐突に尋ねた。


「どんな関係って」


又吉は苦笑した。

自分でもわかっていないからだ。

周りからは陽子と又吉は恋人関係で通っている。

しかし現実はそうではない。

あくまでもエッセイ著者とその担当者でしかない。

ほんの少し、仲の良い。


「どんな関係に見えますか」


又が逆に紗季へ問い返した。

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