第14話 マリア湖と滴橋

又吉がニコニコして戻って来た。


「ドンピシャだったよ」


責任者から有力な情報が得られたんだろう。

紗季も口元をほころばせた。

席に着くと


「陽子さんらしき人も同じことを聞いたそう

 です」


「じゃあ姉もここに来たんだ」


又吉はうなずきながら


「あのつり橋はしずく橋、その向こうの湖は真

 理蛙湖、シンリの蛙と書いてマリアと読むそ

 うです。しかも実際にあるそうです、あの場

 所が」


「姉はそこに行ったんだわ」


「僕もそう思います」


途端、紗季の表情が曇った。

ひょっとしたら、吊り橋から身投げ、湖に投身、

と不吉な予感が頭をよぎったのだろう。


「陽子さんは心理学者です。何かの目的があって

 マリアのしずく問題を調べているだけです。大

 丈夫ですよ」


「じゃあ、何故連絡をしてくれないの」


又吉は、一瞬黙ると


「陽子さんは研究にのめり込んじゃうタイプでし

 たからね」


「のめり込んだって・・・」


「とにかく、行ってみませんか、この真理蛙湖と

 しずく橋に」


又吉は紗季の言葉を遮って提案した。


「そりゃ行ってもいいけど、シンリさん付き合っ

 てくださる?」


「当たり前でしょうに」


紗季の口元がほころんだ。


「でもいいの?お仕事の方は」


「陽子さんは僕の担当でしたから、とにかく

 所在だけは突き止めないと」


「じゃあ、決定」


紗季は小さくため息をついた。

どちらにしても、方針は決まった。

何もせず、陽子からの連絡を待つのはとにかく

辛い。


動くことで、辛さも半減する。

又吉も付き合うと言ってくれたし・・・


真理蛙の滴だなんて、姉は何を考えているのだ

ろう。

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