第13話 あれってヒントかも

紗季は又吉の言う絵を見た。


あまりに大きすぎ、最初は壁に書かれた模様だ

と思って見過ごしていたが、確かに絵だ。


「あの絵がどうかしたの?」


「あの絵、なんとなくペンダントに見えない?」


又吉の言っている意味が分からないので、もう

一度絵を見直してみた。

言われてみれば、そんな気もするが、今一ピン

トこない。


「女性の肩甲骨部分を切り取り横にしたと思っ

 て見ると・・」


「あっ」


確かに又吉の言う通りだ。

ネックレスを下げた女性の肩甲骨部分を切り

取りそこだけを拡大した、そんな絵だと先入

観を持ってみれば、確かにそう見える。


もう一度絵を見直してみた。

又吉の言うように絵の中の吊り橋がネックレ

スの鎖部分だとすれば、景色として溶け込ん

でいるその中央部分に描かれている湖はネッ

クレスの宝石の部分に見える。


「でもあれがマリアのしずくとどう関係ある

 の?」


「あの絵の下の部分見えない?」


「ゴメン、目が悪くてとても見えないわ、あ

 んな小さな文字」


「しづく橋って書いてあるんだ」


「ホント?」


又吉は目が良い。

陽子も両目とも1.5だと言っていた。


本をよく読む又吉と陽子の目が良く、最近は

絵画雑誌ばかり見ている紗季の目が一番悪い

のはおかしいと、最近も笑い合ったばかりだ

った。


陽子があの絵を見て、しずく橋に気付いたの

はあり得る話だ。


「あの湖がマリア湖だったりして」


吊り橋の後ろに見える湖の事を言っているの

だろう。


「そんな偶然ってないわよ」


言いながらも紗季は少し興奮してきた。

ひょっとしたら・・と思ったからだ。


「ちょっと聞いてきます」


又吉は立ち上がると、店の責任者らしき人を探

した。

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