第12話 綺麗うっとりするわね

料理も食べ終わり、周りを見渡すが、マリアの

しずくに関するヒントはどこにも見当たらない。


「外の景色かなあ?」


又吉は窓の外に視線を移した。

紗季もつられるように移すと


「綺麗・・・」


思わずため息をついた。


都会のネオンが醸し出す夜景は、紗季の心に容

赦なく入ってくる。


「うっとりするわね」


本当に目もトロントしている。


「あ、いけない、景色に見とれている場合じゃ

 なかったんだ、マリアのしずくに関するヒント

 を探さないと」


ちいさく舌を出すと、また外を見た。

しかし、視線は止まりがちだ。


「うわ、綺麗だな」


何度も同じため息が出てくる。


外の景色に魅了されている紗季を、暖かく見守

りながら、又吉は、もう一度店内に視線を移し

た。


外にヒントはもうない。

そう見切ったようだ。


店内をひとしきり見渡しながらフト一枚の絵に

目が止まった。


大きな額縁に入った風景画だ。

大きすぎて全体を見なかったが、改めて全体像

を見てみると思わず目を疑った。


「あれって・・」


又吉はもう一度じっと見た。

少し紗季にもたれ加減になりながら、もう一度

絵を見てみた。


「紗季ちゃん、あれって、ネックレスに見えな

 いかい」


又吉は、紗季の首を持つと、絵の方に向けた。

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