第10話 伝説探し

作り直したカレーを食べながら沙希が改めて聞

いてきた。


「ところで何がわかったの?」


「そうそう」


又吉は陽子からもらったマッチを紗季に手渡した。


「なあに?このマッチ」


「陽子さんと最後に会った時、このマッチを貰

 ったんだ」


「マッチぐらいで・・」


苦笑する紗季に


「そうじゃないんだ、その時マリアのしずく伝説

 の話をしてね」


「マリアのしずく伝説?なあに、それ」


首を傾げる沙希に、又吉は陽子がマリアのしずく

伝説を調べていたことを伝えた。


「姉さんが伝説を?信じられないわ。姉さん伝説、

 占いの類は全く信じない人だったもの」


「だからなんだよ」


又吉は自分の考えを紗季に伝えた。


現実にしか興味のなかった陽子が、それまで紗季

と三人でしか会ったことが無かったのに、わざわ

ざ又吉を呼び出し、柄にもないマリアのしずく伝

説の話なんかするなんて、おかしいだろ。で、そ

の後行方がわからなくなったのなら、ひょっとし

たら、自分がいなくなる事を予感し、このマッチ

を渡したと、そうは思わないかい。


又吉の話を聞いていた沙希は「ふーん」と深く息

を吐くと


「何でシンリさんに渡すのよ、私でもいいでしょ」


「そりゃ、紗季さんは女性だし、僕は男だから」


「じゃあ、何かトラブルにでも巻き込まれたの?」


「そうじゃないと思うんだ。トラブルなら、僕ら

 でも陽子さんの変化に気づけたと思うんだ。で

 もいなくなるまで普段と全く変わらなかっただ

 ろ」


「嫌だ、何か呪いでもかけられたの・・・で、急に

 マリアのしずく伝説を調べる必要にせままれたとか

 ・・」


紗季の思いつきに


「ありえない話じゃないだろ」


「でもマリアのしずく伝説と、このマッチ、どう

 つながるの」


「このマッチくれた時陽子さん、夜九時にこの店

 に行くと、マリアのしずくのヒントが隠されて

 いると、都市伝説めいたものがあるらしいから

 本気で行ってみようと思ったと言ってたんだよ」


「うそ!」


紗季は本当に驚いている。


「何で姉さん急に、そんな都市伝説まで信じるよ

 うになっちゃたのかしら」


紗季はマッチを改めて見た。


「サンタマリア、これって高層ビルの最上階にあ

 るレストランでしょ」


さすがに紗季もこのレストランの名は知っていた

ようだ。


「行ってみるかい、ここに」


「そうね、今晩も姉さんから連絡が無ければ行っ

 てみようかしら」

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