第7話 奇異な誠

 根元刑事もひかり探偵も帰ってしたまったあと、重い沈黙が続いた。


「それにしても、ジュンイチが犯人だなんて、びっくりしたわ。ミキにストーカー行為もしていたなんて」

 ノリコは眼鏡のふちをあげながらつぶやいた。


「さわやかな、スポーツ万能のイケメンってイメージだったけど、人は見かけによらないものね」

 ミソノも震えている。


「でも事件が解決してよかったわ。ミキも喜んでいるわ」

 レイカが寂しげな笑いを浮かべた。


 何はともあれ、ヒロミはほっとしていた。


 セイタだけが顔をしかめていた。


***


 ノリコもミソノも安心したように警察署をあとにした。ヒロミもセイタの顔色が暗かったことを気にしながらも、ゆっくりと帰途についた。


 そのときに、前を行く男女の話を聞いてしまった。


「僕に告白を急かせたり、そのことをジュンイチに知らせたり、田中先生に、ジュンイチの自首を促させたり、いつも君は陰で動いてきた」

「なんのことかしら」

 女は高笑いをする。まるで勝ち誇ったように。

「親友ではなかったのか?どうしてこんなことを」

「簡単なことよ。マドンナは二人いらないから」

 

 男は深くため息をつく。

「君は実際に手を下したわけではないから、捕まらないだろうが、一連の事件の犯人は君というわけだ」

「そういうことになるのかしら?私は孤児で施設で育ったし、やさしい家族も自慢の兄もいなかったわ。あの子のように、天賦の才能もなかったし。だからね、全部、奪ってやったわ」


「狂っているよ。君は」

 男は呆れたような声を出した。


「田中先生まで殺す意味はあったのか?」

「ミキ、ミキってうるさかったから。死んでからもまだあの子は、悲劇のヒロインでうるさいったらなかったわ。特に田中がうるさくて。もしかしたら、ミキに気があったのかしら。うるさいものは消す趣味なのよ」


 男は怒気を含んだ声をあげた。

「僕は真剣にミキを愛していた。それなのに!ミキに代わり、復讐することになるだろう。白と黒は結びついているのさ。僕にはいろいろな知り合いがいるからな」


 セイタはレイカを睨み付けた。

「まあ、楽しみにしているわ」

 レイカがセイタをバカに仕切った笑いを浮かべていた。


***


 ヒロミは、ヨロヨロとした足取りでなんとか家に着いた。


 なんていうことなんだろう。これが本当の真相なのだろうか。


 セイタに呼び出されてレイカのことを見ていてくれというのは、見張れという意味だったのか。


 ヒロミはもうなにもかもどうでもよくなっていた。意識が朦朧として、家に着くと倒れこんだ。



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