第5話 報告
ヒロミは、レイカがミキの家に行って、お線香をあげている話を聞き、自分も行ってみたいと思っていた。レイカにお願いして、ミキの家に行くと、ミキの母親が笑顔で出迎えてくれた。
ミキの写真を見ながらお線香をあげ、ミキに語りかける。
「必ず自殺の真相はつきとめるわ」
ミキの写真も微笑みをたたえているように見えた。
ミキの部屋は、18才で時がとまってしまったかのようだった。スクールバッグが置かれ、勉強机の書棚には高校の教科書が並んでいる。
「未だにミキの死が信じられなくて。いつかあの子が帰ってきてくれるような気がして、そのままになっているの」
悲しそうにミキの母親は笑みを浮かべた。
「おばさま、ミキのようにしっかりはしてないですが、本当の娘になれるよう頑張ります」
レイカのことばにヒロミはびっくりしている。
「レイカちゃんがじつの娘になってくれるなんて、嬉しくて。レイカちゃんはそのままが一番いいわ」
ミキの母親は感涙していた。
「私ね、ミキのお兄さんと結婚するの。将来有望な演出家なの」
レイカにの宣言に唖然とした。
「演出家さんとよく電話していたくどミキのお兄さんとだったわけね」
ヒロミはいたずらっぽく微笑んだ。
ミキもきっと空の上で喜んでくれていることだろう。
ミキの母親が日記帳を差し出した。それはミキの高校時代の日記だった。セイタに告白されて嬉しかったこと、セイタへの思いが紡がれいた。
しかし、気になる一文が出てきた。
「だれかに追いかけられているような気がして仕方ないの。助けて」
いち早く見つけたレイカが首を傾げる。
「聞いたことがあるような、ないような。あまり、人に心配かけるようなことは言わない子だったわ。セイタさんとの、のろけ話は聞いていたけれど」
ミキの母親も不思議そうにこの一文を眺めていた。
「あの子、何かあったのかしら」
ヒロミもそんな話は聞いたことがなかった。
「おばさま、いえ、おかあさま。その日記帳を貸していただけますか?探偵のひかりさんに頼んで、調べてもらいます」
レイカの表情は毅然としていた。
***
それからレイカの結婚式が行われた。女優と演出家の結婚式らしい、華やかな式だった。
「ミキ、あなたのかわりにご家族を守っていきます」
花嫁のことばが印象的だった。そんなレイカを見守るのが、自分の役割だとヒロミは思っていた。
***
アリバイが成立しなくなったために、また一同は警察署に呼ばれていた。
「田中さんの着ていた服から、指紋が発見された」
根元刑事の重く低い声に一同は静まり返った。
「アキトくんの指紋だったよ」
一同はアキトのほうを見る。
「違います、違います」
アキトは否定していた。
「僕は殺していません。遺体を運ぶのを手伝っただけだ」
アキトの言葉にだれもが驚いている。
「誰の手伝いをしたんですか」
こんな状況には、慣れているのか、冷静なひかり探偵がひとり、ひとりの顔を眺めた。
「言うことを聞かなければ今すぐ貸した金を返せと言われて、仕方なく協力したんです」
アキトの悲痛な叫び声に、ジュンイチが可笑しそうに大声で笑い出した。
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