第15話「アルバンの住人」

「いらっしゃい。注文は」


 町の雰囲気の割には多少なりとも快活な挨拶をくれた酒場のマスターだったが店内の渦巻いているのは、外以上の混沌と退廃だった。

 ある男は、店の隅の壁に向かって股間をいじくり続け、その足元で蹲る老婆は、床に落ちた粘液を指ですくい、カビの生えたキャンパスに塗り付けている。

 カウンター席に座っている中年の男は、マスターがグラスに酒を注ぐ度、指先を噛み千切り、滴る血を酒に混ぜてから一気に煽っていた。

 テーブルにうつ伏せで寝そべる若い男性は、下半身を露わにしており、三十過ぎぐらいに見える女は、男のふとももに酒を浴びせて垂れた酒を美味そうに舐め、男は恍惚と頬を赤らめ、身悶える。

 ここの人間が半分でも本当の事を話せるかどうか、そもそも会話が成立するかどうか怪しい物である。

 何より唯一まともな反応を返してくれた店主の男でさえ、両目に眼帯をして、剃髪された頭の至る所にネジ穴が開いており、絶えず脳漿が流れ出ていた。

 やはり、ここは尋常の街ではない。

 正一は、森で聞かされたマリモの言葉を思い出していた。森の物を口にする事はならない。もしかしたらこの場所でも。


「ここの物って」


 正一が左肩に止まるマリモに耳打ちすると、彼はマッチ棒のような手で頬を掻き出した。


「お前は食わん方がいい。だが注文せんのもな。俺が貰おう」

「何がいい?」

「酒なら何でもいい」

「おすすめの酒はあります?」


 正一がマスターに尋ねると、彼は訝しげに眼光を細めた。


「お前さん、酒の飲める歳には見えないがな」

「相棒の妖精君がね」


 そう答えるとマスターは、口角に流れ付いた脳漿を舌先で舐め取りながら破顔した。


「分かった」


 マスターは、バックバーの一番高い所に手を伸ばし、黒い瓶を取ると、カウンターにショットグラスを置き、琥珀色を注ぎ込む。

 その様を眺めていたマリモは、童心を露わに舌なめずると、バッタのような跳躍でカウンター上に飛び降りた。


「おー」


 感嘆の声を漏らしてマリモは、グラスを両手で持って酒を口に含んだ。


「なかなか上等な麦酒だ」


 麦酒。ビールのように炭酸ではないからウィスキーのような味なのだろう。

 幼い頃、興味本位で叔母の物に手を出した事があるが、苦さとアルコール独特の粘膜を焼く感覚がどうに好きになれず、二十歳になっても手を付ける事はないと正一は決意していた。

 しかし不思議と他人が美味そうに嗜んでいる様は、欲をそそる物である。

 正一は、カウンター席に座り、マリモを眺めた。身の丈よりわずかに小さなグラスを抱きかかえるようにして、麦酒を吹く度に唇に笑みが灯る。

 普段はどうしょうもなく憎たらしいのに、こうしている姿は、何故だか愛嬌のあるかわしらしいと言ってよい物だった。

 微笑ましさと悔しさが自嘲となって浮かんだその時、


「お客さんは観光で」


 脳漿を舐め取りながらマスターが窺う様な調子で言った。


「まぁそんなとこ」

「二年ぶりだよ。外のお客さんは」


 明らかにマスターは、正一の真意を探ろうとしている。少なくとも彼は、味方でない。

 無論あの老人の言う事を真に受けるつもりもないが、あちらの方がまだ人間的な姿をしていた。

 見た目で判断するのは早計かもしれないが、それでもこのマスターとて異形のそれには違いない。

 異形であれば敵と言う訳ではないが、異形の真意が見えないとなれば警戒する以外にないだろう。


「ちょっと聞きたいんだけど」


 正一も腹をくくっていた。こうなっては互いの手札と真意を探り合う諜報合戦だ。

 その為にもまずは情報を得るしかない。例え嘘をつかれても嘘と見抜ければ、それもまた情報足り得る。


「この街で一番の偉いさんってどこに居ますか?」


 アルバン町長には、一度会っておく必要がある。

 隔離や音叉の件、そして揺蕩う者について多少なりとも知識があるはずだ。


「北にある大屋敷だ。そこに住んでいる」


 そう答えながらマスターは、グラスを油染みの染み込んだぼろ布で磨いている、嘘を付いている様子はない。だがブラフと言う事もある。

 見抜くためには予想通りの答えではなく、予想外を付かねばなるまい。


「音叉について知ってる事は?」


 その問いでマスターだけではない。店内中の視線が正一を射抜いた。けれど彼等のそれに、驚愕はない。正一の言葉が想定通りに過ぎない事を知らしめながらマスターが口を開いた。


「お前もか。手を出さない方がいい」

 正一の身を案じている訳でない事はすぐに分かった。けれど敵意も殺意も感じられない。

 虚無と会話をしているかのような感覚にさせられる。それほどマスターの声には感情が乗せられていないのだ。


「必要なんだ」

「我々にとってもだ」


 老人とは、正反対の意見だった。老人の言葉を信じれば、マスターが嘘を付いているという事になる。だが老人が信用出来るとする根拠は存在していない。

 かと言ってこの店に、マスター以外まともな会話の出来そうな人物は居ないし、こちらを掘り下げて証言を引き出すのもまた難しいだろう。

 だからこれ以上の押し問答は無駄。そう判断して正一は、マリモが酒を飲み終えるのを待って酒場を後にする。


「ふん。面白いなぁ。こいつは確かめんと」


 酒場から数歩の距離でマリモが開口した。


「確かめる?」


 首を傾げる正一に、マリモは無邪気に笑んで見せた。


「ああ。この町に来たのは、ちょいと確かめたい事があったからだ」

「確かめたい事ってわかったか?」

「結論は、偉いさんに会ってから出す事にしよう」


 二人が向かった町長の住む屋敷は、酒場から三十分ほど歩いた高台にそびえていた。

 小さな町に反比例する巨体と麗しい程の白亜の様相は、イベルンやリュベイルですら目にした事はない。

 この町においておそらく唯一、真っ当な感覚を視神経に与えてくれる建造物だ。


「綺麗な屋敷だな」


 なんとなく呟いた言葉にマリモの反応はなかった。

 正一は腹を立てはしなかったが、幾ばくかの空しさを抱きながらマホガニーに似た木材の使われたよく磨かれたドアをノックする。


「はい」


 まだあどけなさの残る少女の声が扉越しに答えてくると同時に、玄関扉が開かれる。

 出迎えてくれたのはメイド服を身に着けた人間の少女の身体を持ちながら、蠢く触手を顎髭のように垂らしている風船のように膨れた肉塊の頭をした生物だった。

 目もなく口もなく耳もない。ただ収縮する肉塊から幼子の腕の程も太い触手が十五以上、ぬらぬらと微動しながら擦れ合い、湿った音を響かせる。

 声音も身体も間違いなく人間の少女の物。けれどその頭部だけは度し難い程に異質で、最も近い生物を挙げるとするなら蛸であろう。

 けれど厳密にはやはりそれとも別種の何かだ。正一からすればあの森で見た生物達、外来種と全く同等な異質の物に思えてならない。

 そんな物と相対した正一が筋肉反射の任せるままに、剣へと手を伸ばしたのも無理からぬ反応だろう。

 どんな動きにも対応出来るよう臨戦態勢の螺子を締め、剣の切先を異形へ向けるように構えると、それは恐怖も驚愕もなく、まるで客人の前にしたメイドのような態度で首を傾げた。


「あら。この街のお方ではないのですね」

「なに?」


 敵意を剥き出す正一に対して、彼女の反応は思いのほか冷静で、このような場数を幾度も踏んでいるとすら確信させた。


「この街では私の姿も尋常なのですよ。さぁお入りください、旅の方」


 そう言って彼女は、正一を手招いた。まるで本当のメイドがそうするように。

 確かにこの町の日常では、一般的な正常とは乖離している。だが女の姿は、その域すら超えていた。けれど彼女の言葉に嘘の匂いがしない事が何より畏怖すべき事だろう。

 これがこの町の尋常なのだ。三十年間の隔離を経て、これらはアルバンの尋常となった。

 敵か味方かを論じるよりもこの環境に適応しなければならない。そうしなければきっと正一の精神は、飲み込まれてしまうだろう。

 正一は、左肩のマリモを見やった。偉そうな事を言っておきながら頼ってしまう、縋ってしまう自分が情けなくもあるが、彼は安堵を与えてくれる。決断の兆しをくれる。

 マリモにはきっと頭を除く必要するなら食正一の真意が伝わっているのだろう。力強いまなざしを返しながら頷いていた。

 メイドに促されるままに正一は屋敷へ足を踏み入れ、応接間に通される。

 そこは応接間というにはいささか質素であり、緑のモケット生地のソファーが向かい合う様に置かれ、その間に小さなテーブルがあるだけだった。

 応接間と言うからには、アンティークの調度品が所狭しと並んでいる様を想像していた正一だったが、意外過ぎるシンプルな造りはある種の落胆を与える。

 無論三十年間世界から隔離されているのだから、そんな物を持っている余裕もなければ、仕入れ先もないはずだ。

 けれどもこの殺風景は、町長が来るまで退屈しそうである。

 そんな事を正一が思いかけた矢先、一人の男が現れた。

 年の頃は、三十代か四十代辺りだろう。

 顔立ちは品が良く、口髭と長髪が相まって年相応の美形と言ってよい。服装もボタンダウンのシャツにベストを羽織っているだけだったが、それが却って男の魅力を増しているように見える。

 最初はようやくまともな人間と出会った事に安堵を覚えそうになった正一だが、男がメイドに微笑を見せた瞬間、あの姿を前に一片の動揺も見せない男の神経を悍ましく思った。

 その振る舞いに畏怖はなく、この町では怪物(メイド)の姿が尋常な事であると雄弁に語っている。


「旅の方、お名前は」

「佐藤太郎です」


 にこやかに訪ねてくる町長に対し、正一が告げたのは偽名であった。この町で本当の名前を明かす事に聞きを感じたからである。

 この世界には魔法が存在する。もしも名前を媒介に使える魔法があったなら。想定して動くべきだろう。


「珍しいお名前だ」


 正一の名乗りに町長は、怪訝そうに目を細める。

 本名であるかを疑っているというよりは、語感自体に違和感を覚えている様だった。


「東方の血筋でして」


 その一言で町長は、全ての疑問が霧散したかのように破顔した。

 バルツ共和国の国民は、大半が正一の世界で言うところの西洋人の容姿をしている。所謂東洋系の顔立ちは、今まで一人も見ていない。

 東洋人の名前がこの世界では、どうなっているかは不明だが、どの道バルツの人間に馴染みがないのだろう。だから日本では通用しない偽名も容易く通るという訳だ。


「私はドルヴィン。ニック・ドルヴィンと申します。この町には何のご用でしょうか」


 ドルヴィンの名乗りは、表面上正一の来訪を歓迎している風でもあったが、やはり探りを入れようというのが真意だ。

 この尋常ではない町に居る普通の人間。それこそが異常と考える事も出来る。

 どう答えるのが正解か。僅かばかりの思案の後に正一が出した答えは偽らない事だった。


「音叉を探しにね」


 そう聞かされた途端、ドルヴィンの表情に微かな陰りが差し込んだ。


「あれを持ち帰る気ですか」

「必要としている人が居るんです。なんならここにその人を連れて来るんでもいい」

「あれが町にとってどういうものかを知らないでしょう」

「なら教えていただけますか?」


 ドルヴィンは首を横に振りながら正一に背を向けた。


「それは出来かねます。私が殺されてしまう」

「他の旅人はそう言えば納得したんですか?」

「いいえ。でも納得するしかないんです。力ずくでと言うのも居ましたが無理ですよ」


 つまりアルバンには、力ずくの通じない相手が居る。

 人の命も毛ほどに思っていない何かが居る。

 その心当たりは正一の知る限りでは一つしかなかった。

 さすがに正一も、これ以上の詮索でドルヴィンが殺されてしまっては後味が悪い。


「分かりました。失礼します」


 軽い会釈をして正一が応接室を後にしようとすると、


「ああ、タロウさん」


 呼び止められたのが自分であると数瞬気付かなかった正一は、やや慌ててドルヴィンに向き直った。


「はい?」

「このまま帰られた方がいい」


 その言葉は、心底からの忠告であると信じさせるに足る力を持っていた。

 けれど気味が悪いのは、真意の部分をくみ取れない事。

 それがどうにも小骨のような引っ掛かりを感じさせる。


「それでは」


 正一は、再度ドルヴィンに会釈してから屋敷を出ると、改めて外観を見上げながら鼻を鳴らした。


「マリモ、あれは俺の目の錯覚じゃないよな」

「ああ。厄介だ」


 焼き付いて離れないのはメイドの人ならざる姿だ。

 あの異形をして中身がまるで人間なのが何より気色が悪い。

 正体の考察をしようにも長時間あの姿を頭の中に留め置く事が既にどんな拷問よりも苦痛を与えてくる。

 それになんであるかを考えてみた所で、正一が何か出来る事があるわけでもない。もしかしたら救済を望んで居ない可能性もある。

 ここが尋常だと言うのなら人の姿になる事は、むしろ彼女にとっての異形になる事かもしれない。

 そうならメイドの事を考えるのは、何も生まない行為に過ぎなかった。ただ気分を自ら害すだけ。

 だったら別の何かを考えて意識を紛らわせるほうがよっぽどいい。それにうってつけの存在が左肩に居るのだから。


「そう言えば確かめたい事って」


 正一の問い掛けにマリモは、暫し空々しい素振りを見せた後、はたと口を開いた。


「ああ、それなら確信出来たよ。この街の人間の頭の中は覗けない」

「どういう事だ?」


 マリモの頭の中を、相手の思考を覗く術は強力だ。

 抗う事も出来なければ、そうされているという意識すらない。知らぬ間に考えを読まれ、マリモはそれに対する策を用意する。

 それを防ぐ術があるのか。それとも他の理由があるのか。

 正一の考えを呼んだのか、マリモは疑問点についての解説を始めた。


「一つは優れた魔法の腕があるという事。それなら防御を掛けられる」

「その方法今すぐ教えろ!」

「あとで教えてやる」


 勿体ぶったマリモに正一は唇を尖らせながらも、その方法ではないと正一は推理した。

 マリモの仮説を採用すると最大の問題は、アルバンの町の人間全員が魔法使いと言う事になる。

 もしもそうなら誰かしらこの町から脱出が出来そうなものである。正一がそうした様に壁を超える手段はいくらでもあるはずだ。

 しかしこれはマリモ自身も正一と同じように考えていたのだろう。

 次に挙げられた仮定は、これこそが真相である、とでも言いたげな風味を含んでいた。


「もう一つは、音叉で調律を受けた人間だ」

「音叉で調律を……この街で会った四人ともが?」

「普通ならあり得ん事だ」


 この世界に来て間もない正一にもそれは理解出来る。

 外来種の技術はそう容易く人が操れる物ではない。余程力のある人間でなければ自らが飲まれるはずだ。

 それをましてこの町で出会った人間全員がそれを出来ると考えるのは、想像に難しい。

 少なくとも一人、音叉を使いこなすモノが居る。

 そしてドルヴィンの話が正しいのなら音叉自体がアルバンに不可欠であるという事。

 アルバンに精神調律を行う恩さが必要な理由。

 森に入ったリエラの妹の顛末を思い出せば、それにも納得がいく。


「この街の魔力で精神を病むのか。森の時みたいに」


 マリモの言によれば森で人が惑うのは、封印されている神格種の魔力によるものだ。

 それと同じ事がアルバンにも言えるのではないだろうか?


「いや」

「違うのか?」

「そこまで強烈な魔力は感じん。だがこの町が隔離された理由もそこかもしれんな」

「樹牙竜は何て言ってたんだ?」

「共和国政府は、詳しい調査をする前にこの街の隔離を決めたそうだ。しかし精神を狂わせる魔力はない。だがこの嫌な空気。三十年前、奴らが隔離の判断をしたのは正しかったと言わざるを得ないな」


 しかしそうすると一つの疑問が生じる。神格種という危険な存在をどうして人の住む町にわざわざ封印したのかだ。

 森にしても、そしてマリモを含めて、何故人里に近い場所にそんな危険な存在を封印しているのか。

 仮に日本であれば、人里離れた場所にこれらを封印して人が立ち入れないようにするだろう。

 それとも人里近くに封印する事自体に何か作意があるのか。

 どうせ聞くなら封印経験者に聞いてみるのが良いだろう。


「どうしてこんな人の住んでる町に封印したんだ?」

「封印の後に町が出来たのさ。揺蕩う者が封印されているのは周知の事実だった。それでもこの辺りは鉱石を始めとした天然資源の宝庫。だから数百年前の伝説を信じる者は居なかった」

「そういうもんか?」

「お前は、自分の住んでた世界にある六百年も昔の、しかも証拠は、伝聞だけの話を百パーセント信じるか?」

「まぁたしかに」

「お宝を取られなくない誰かが流した噂と思うだろ? そういう事さ」


 それが人間という物だろう。

 知能があるが故に都合の悪い物を都合よく解釈する。

 決してこの世界特有のものではない。

 辟易とするのは、異世界に来たとしても、世界という垣根を超えたにしても人間の本質がまるで変わらないという一点だ。

 ある意味で正一もここに奇跡を求めに来ている。

 理由も随分俗物的と言えばそうだ。

 リエラと言う少女の為に動いている。聞こえはいいが下心がない訳ではない。

 それは純粋な正義とは呼べないだろう。

 聖人君子だけが他人の為に命を賭けられるわけではない。

 命を賭ける理由は人ぞれぞれだ。

 それに正一も命を賭けていると言えるかどうか。

 何故ならマリモと言う存在に守られているからだ。

 名目上がマリモのボディーガードで実際に守られているのは、正一である。

 この世界に来て、マリモの正体を知るまでの心持ちとはまるで違う。

 完全なる庇護の元、命を賭けていると、正義を果たそうとしていると言えるだろうか。

 それでも正一に足を止める気はなかった。

 善人でない事を否定しないが、やると決意した事を反故にするつもりもさらさらない。


「音叉の気配を追うしかないか」

「小僧、危険だぞ」

「その価値はあるよ」

「あの娘か?」


 

 女のためにいいカッコがしたい。

 マリモからすれば、恐らく弱いのだろう。それが命を賭ける理由としては。

 ――それでも。


「いいだろ」


 結局そういう人間だから。

 割り切ったような笑顔を浮かべる正一を見つめながらマリモは、呆れたように破顔した。


「ふん。まったくお前はなぁ」

「なんだよ」

「正直でいい。それぐらい欲に忠実な方が人間らしくてよいと俺は思うぞ」


 けれどその声音は、人が餌を啄む小鳥に向けるような仄かな慈愛に満ちていた。

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