第46話 対戦車班前へ
エルトルはコーリらインド軍をパンターの砲と機銃で押さえ込みつつ、コーリ達の肉薄攻撃で損害が出ている第1中隊の救援作業を第3中隊でさせていた。
「やはり歩兵を連れて来るべきだたか」
意外な損害を出した事でエルトルは戦車だけでの反撃を悔やむ。
いや、敵を過小評価していたのを悔やむ。
日本軍第十三軍と戦う為とはいえ、歩兵を同行させなかったのは突破を図るインド軍が歩兵ばかりだったからだ。
歩兵が戦車に勝てないだろうと。
しかし、そのせいで痛手を負う。
「ブリッツ22、状況を報せろ」
エルトルは第3中隊を無線で呼び出す。
「撃破された戦車の乗員の収容はできました。撃破された戦車はキャタピラを切られただけです。牽引して持ち帰りますか?」
第3中隊の隊長は牽引による戦車の回収を提案した。
エルトルは少し考える。
修理できる戦車は出来るだけ持ち帰りたい。敵に利用されるのは厄介だ。
だが、可能な状況か?
エルトルは戦況を見る。
コーリらインド軍は第2中隊の攻撃で動けないようだ。敵の増援は見えない。
牽引作業を戦場でやれる余裕はありそうだ。
「ブリッツ22、牽引作業を許可する」
そう命じて第3中隊は戦車でキャタピラを切られた戦車を牽引する作業に入る。
だが、作業開始から二十分後
「熱源だと、これは歩兵か?」
エルトルはパンターに装備されている赤外線暗視装置で周囲警戒をした時に日本軍の歩兵第五連隊第二大隊を発見した。
南から点在する小さな熱源がゆっくりと迫っている。
「ブリッツ1より全車へ!南から敵歩兵の集団が接近中!ブリッツ22は作業を中断せよ!」
エルトルは矢継ぎ早に状況と指示を伝える。
「ブリッツ1から2へ、俺達で新手の敵歩兵へ撃ち込む」
エルトルは自分の大隊本部小隊の4両で歩兵第五連隊第二大隊へ挑む。もちろん、砲兵の支援を連隊へ要請もした。
「敵は各所で攻撃に出ている。歩兵だけなら貴官の大隊で撃退できないか?」
連隊からの返答はこうであった。
「歩兵ばかりとはいえ、二正面で戦うのは有利とはいえない」
無線で連隊の参謀と話すエルトルはこっちに砲兵の支援をして貰おうと説得する。
「ブリッツ1より各車、敵歩兵へ撃て!」
エルトルは参謀と話しながら歩兵第五連隊第二大隊への射撃を開始する。
「敵戦車!四両!」
歩兵第五連隊第二大隊はエルトルの戦車小隊を発見した。
その途端に砲撃と機銃を第二大隊は撃ち込まれる。
「対戦車班前へ!」
中隊長は対戦車班の前進を命じる。
対戦車班を掩護すべく1個歩兵小隊が続いて前進する。歩兵がある事を前提とした動きである。
「噴進砲よーい!」
対戦車班は装備を手に提げながら駆ける姿勢から、伏せて匍匐で進む。
班長はまず五式七糎対戦車噴進砲を使う事にした。
当てられる有効射程は200mとされている。
そこまで匍匐でゆっくり近づく。
ただし班でまとまっては行かない。散開して噴進砲を持つ射手と噴進弾を持つ装填手の二人一組になる。
ドイツ軍に暗視装置があるのを日本軍も知っているからだ。
散開して攻撃を受けても一度に戦力を失わない為だ。
こうなると日本陸軍が得意とした夜襲が不可能となるように思われたが、暗視装置が常時使える訳ではないとも知っている事から、まだ有効な作戦であると日本陸軍は認識している。
「あの端のを狙う」
噴進砲の射手が装填手へ伝える。
周囲ではパンターからの砲撃と機銃で騒々しい、更に倒れる友軍兵士の悲鳴や呻きも聞こえる。
その中で装填手は噴進弾を込め、射手は弾が込められていたのが分かると片膝で立ち上がりパンターを狙い撃った。
「当たった!」
撃ってすぐに射手は伏せる。
すると爆炎にパンターが包まれるのを見た。
初めて撃った弾が敵に命中した。思わず射手は笑みを浮かべ叫んでしまう。
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