第9話独空母艦隊出撃
水上戦闘機「強風」8機がムンバイの港に降りたのは第一次撤収船団が出てから五日後だった。
「長門」がドイツ軍機により少なからぬ被害を受けた事で撤収作戦にある程度の空の傘が必要になった。
空母を出せば良いかもしれないがディエゴガルシアでの損失から立ち直らない日本軍空母を出すのは却下された。
代わってムンバイに「強風」が配備された。
ムンバイにはイギリスが作ったサンタクルズ国際空港の滑走路と施設を接収してインド軍と日本海軍が使う飛行場があったがもはやドイツ軍やアラブ義勇軍の砲火の射程内にあり飛行機を降ろす事は出来なくなっていた。
そこで水上機の「強風」の出番となる。
ムンバイの港内ならまだアラブ義勇軍の砲火は届いてなかったからだ。
インド軍の将兵は「強風」の来援を喜んだが日本海軍はあくまで妥協して送り出したのだ。
一抹の不安はある。
戦闘機とは言っても大きなフロートと呼ばれる重量物であり風の抵抗が増える物を提げて飛ぶのだ。
そのせいか「強風」は最高速度が500km/hも無い。
だが零戦の水上機版である二式水上戦闘機はもはやほとんどが退役し一部を練習機にしている。
ましてや日本海軍ですら水上戦闘機に見切りをつけていた。
ジェット機の登場で500km/hの速度も満たせない水上戦闘機の存在意義が薄くなっていた。
機械化の充足が遅れて飛行場を素早く作る能力が低い日本軍の設営部隊の現実から二式水戦や強風を作り実戦に投入していた。
だが今やマッハの領域へ迫る戦闘機の現実に日本海軍は強風に継ぐ水上戦闘機開発を諦めていた。
そんな中で「強風」も第三七一航空隊だけになりコロンボなどで対潜哨戒を中心とした任務を与えられていた。
戦闘機部隊であるのに哨戒機扱いに三七一空の搭乗員達は不満があった。そんな中でムンバイ行きは戦闘機としての役目を果たせると喜んだ。
三七一空の整備員などの支援要員は弾薬・燃料と共に二式飛行大艇が運んだ。
そんな三七一空ムンバイ派遣隊は到着して二日後に出撃した。
ムンバイ市街上空へ侵入して来たドイツ軍のDo217を迎撃するべく出撃した。
連合艦隊司令部は三七一空に「出撃は撤収作戦を支援する時だけ」と命じられていたが「拠点としている地区を防空する出撃は可とする」と付け加えられていた。
三七一空はその付け加えられている部分に基づいて出撃した。
戦闘機は居ないと思っていたDo217の編隊にとって強風の出現は驚きだった。
最高速度では強風に勝るがそれは爆弾を抱えない時の事だ。
Do217はムンバイの上空で次々と撃墜される事になる。
強風の搭乗員はようやく戦闘機搭乗員らしく戦えた事に満足した。だがこの強風の出現はディエゴガルシアのドイツ軍インド洋艦隊司令部へ影響を与えた。
「ムンバイに戦闘機が配備された」
ムンバイに来る日本艦隊を迎え撃つ艦隊の準備をしている中でこの報告を当初あまり気にかけなかった。
「それは空軍がどうにかする事」と思っていたからだ。
だが一人だけ違った。マテウスだ。
「航空機は日本軍が送り込んだのでしょう。攻撃機でも配備されると厄介です」
マテウスの発言に戦艦「アーダベルト」と「ロイター」が日本軍の攻撃機により損害を受けて敵艦隊との戦闘に支障が出る不安を感じた。
「空軍へムンバイへの攻撃を強化して貰おう」
「司令官、我々には自前の航空戦力があります」
チクリアヌスの提案にマテウスは意見を具申する。
「空母かね?」
「はい。日本軍が陸からの敵襲に備えているところを海側から空母からの航空戦力で襲撃すれば効果的と思います」
マテウスの構想にチクリアヌスは納得する。
「出撃は迎撃艦隊の出撃と合わせるべきだろう。空母による攻撃が早過ぎても戦力が補強された後では意味がない」
チクリアヌスがマテウスの案を具体化する。
マテウスはその案を肯定した。
「では空母艦隊を支援部隊として出撃させる準備もせよ」
チクリアヌスは決定を下した。
マテウスは内心で「我が意を得たりの気分」だった。
第二次撤収船団が出撃したのは第一次撤収船団がチェンナイに戻ってから一週間後だった。
今回は戦艦「霧島」と「比叡」に軽空母「龍鳳」・重巡洋艦「足柄」・「那智」、軽巡洋艦「球磨」と駆逐艦8隻の前衛部隊と輸送船3隻を海防艦3隻・駆逐艦2隻で守る輸送部隊が出撃した。
この第二次撤収船団を指揮するのは木村昌福中将だ。
今まで巡洋艦しか乗った事がない木村にとっては初めて戦艦の座乗となる。
「今度はドイツ軍も待ちかまえていよう。前より困難があるだろう。困難を乗り越え作戦を完遂すべし」
木村は訓辞でこう述べた。
ドイツ軍はコロンボから出撃しセイロン島より南の沖を航行する前衛部隊をUボートで発見した。
Uボートが発する無線の電波は「霧島」により察知された。
木村は「もう見つかったか」とだけ言った。
短い言葉で悠然としている木村に姿に周りの幕僚や士官は木村を堂々とした人だと感心する。
だが木村自身は海防艦2隻が沈められた驚異が近くにあると感じて神経を尖らせた。
前衛部隊発見の電文はディエゴスアレスに届いた。
「ただちに艦隊は出撃せよ」とチクリアヌスは命じた。
出撃するのはオスカー・クメッツ中将が指揮する戦艦「アーダベルト」と「ロイター」い重巡洋艦「ハーメルン」軽巡洋艦「ポツダム」・駆逐艦8隻からなる第2インド洋部隊だった。
同時にヘルムート・ヘイエ中将の第1空母艦隊も出撃した。
空母「グラーフツェッペリン」・「ペーター・シュトラッサ」に「プルート」・「エウロパ」・「ザイドリッツ」の合わせて5隻が出撃した。
空母を守るのは重巡洋艦3隻と軽巡洋艦2隻・駆逐艦12隻だ。
「エウロパ」と「ザイドリッツ」は前の大戦中に建造中だった重巡洋艦「アドミラル・ヒッパー」級を軽空母に改装した艦だ。
「ペーター・シュトラッサ」は「グラーフ・ツェッペリン」級の2番艦である。
「プルート」は新型の大型空母だ。
「グラーフ・ツェッペリン」級が装甲の飛行甲板を備えるなど逞しい艦ではあったが肝心の搭載機の数が多くなかった。
50機~80機ぐらいを1隻に乗せる日米の空母を知るとドイツ海軍は同程度の空母が必要だと感じた。
そこで三国同盟が結ばれていた時期に日本海軍が提供した「飛龍」型空母の設計図を基に新型空母を設計した。
50機または60機を搭載できる空母として作られたのが「プルート」だった。搭載機の数を増やす為に飛行甲板は重みが増す装甲を止める事になったがドイツ海軍としては航空機を多く増やしたい目論見が達成され満足していた。
だが相変わらず乗せる航空戦力は空軍の物である所は不満な部分ではあった。
「ようやく我が空母部隊初の出撃ですな」と威勢が良いのは第1空母艦隊の飛行隊を統括する第1艦上航空団のメジェフ少将だった。
空軍将校であるが母艦航空隊の司令官としてヘイエと共に「グラーフ・ツェッペリン」に乗っている。
「今回は敵航空基地の攻撃が任務ですが、出来れば敵艦隊を攻撃したいですなあ」
メジェフの素直な願望にヘイエは「そうするつもりだ」と内心で返答した。
ヘイエは出撃前にマテウスと話す機会があった。
「敵艦隊を発見した場合は優先して攻撃してください」
マテウスはヘイエへ要望するように言った。
「ムンバイの敵基地よりも優先して良いのか?」
「結構です。敵艦隊に打撃を与えれば敵の作戦意図を挫くことができます」
「しかしなあ。今回の出撃で「シャルンホルスト」の仇を撃ち海軍の面目を回復する意味があるらしいがなあ」
ヘイエは自分の艦隊が差し出がましい事をするんじゃないかと思えた。
「アーダベルト」と「ロイター」を出撃させ日本の戦艦を1隻でも沈めればマダガスカル沖海戦で戦艦「シャルンホルスト」を失い敗北した失点から立ち直る意味がいつの間にか与えられていた。
それはUボートが空母「大鳳」と「翔鶴」・「雲龍」を撃沈した戦果もあり水上艦部隊の面目と言う意味もあった。
ヘイエはそうした海軍内部の事情を勘案しているのかとマテウスに尋ねている。
「そうした事情は私も存じています。しかし面目だけで戦力の損失や消耗は避けるべきだと小官は考えます」
マテウスの答えにヘイエは「やはり噂通りか」と納得した。
マテウスに対する評価として艦隊温存主義の人物だと見られていた。ディエゴスアレスへ日本軍が空母艦隊で攻撃した時は空軍に大きく頼り戦艦などインド洋艦隊の主力を守った。
艦艇戦力が失われるのを嫌っているんだと見られていた。
それは消極的な態度とも見る者も居た。
だがヘイエに対して空母を使い積極的に敵艦隊を攻撃しようと進言するマテウスの態度は消極的には見えなかった。
「やり方に拘る性格なのだろう」と認識を改める。
「敵艦隊が居たら無視はでききんからな。だが攻撃をどう実行するかは私が決める。それでいいな?」
「はい」
ヘイエはマテウスの進言を聞き入れた。
マテウスの言うとおりに敵艦隊を攻撃するかはその時の状況によると条件を述べたが。
だがヘイエ自身も乗せている航空部隊が空軍所属であるとはいえ空母を敵艦隊攻撃に向かわせて空母の真価を発揮したいとは思っていた。
マテウスが独断でこんな進言をしに来たのはヘイエには分かっていた。だが当初受けた命令も「敵艦隊が接近しつつある場合は攻撃して良し」とある。この部分を利用すればいいとヘイエは考えていた。
「敵艦隊発見!戦艦2隻・巡洋艦3隻・駆逐艦5隻または8隻・空母あり!」
出撃して二日目に第1空母艦隊は木村の前衛部隊を索敵機により発見した。
「敵の位置と進行方向は?」
「位置はセイロン島より西の海域で北東に向かっています」
ヘイエは前衛部隊がムンバイへ向かうとすぐに意図を読めた。
「攻撃しましょう」
メジェフはヘイエへ熱い目力を向けて航空隊の出撃を求めた。
「そうしよう。だがあと艦隊を50km東へ進ませてからだ」
ヘイエが敵艦隊への攻撃に乗り気であるのでメジェフは異存は無かった。
第1空母艦隊から攻撃隊が出撃したのは午後1時だった。
出撃する第1次攻撃隊と第2次攻撃隊はそれぞれ80機に分かれて前衛部隊を目指した。
「敵機来襲!対空戦闘!」
午後2時に第一次攻撃隊が前衛部隊が航行する海域に到達した。
「龍鳳」の烈風が全機飛び立ち既に出ている直衛機と共に迎え撃つ。24機の烈風と28機のFw190と空戦を繰り広げた。
ドイツ空母に乗る戦闘機はBf109TからFw190Tー2に代わっている。
Fw190Tー2はFw190A-8を原型にした機体だ。
着艦フックなど空母へ降りる機能を備えつつA-8と違うのは武装を13ミリ機銃2丁と20ミリ機銃4丁と言う重武装から20ミリ機銃を2丁降ろす13ミリと20ミリが2丁づつに減らしている。
これは空母から飛び立つ為の軽量化だった。
航続距離を延ばす為に増槽を主翼に2つ提げる場合もあるからだ。
対して烈風は主翼に20ミリ機銃4丁を備えている。
火力では烈風が上だがFw190Tー2はA-8と同じく647km/hの最高速度で飛べる。烈風は624km/hであり火力の違いだけで雌雄は決まらない。
後は搭乗員の腕次第になるが600km/h以上のハイスピードでの戦いは撃っては離れるを繰り返し勝敗は決しない。
その間にドイツ軍の攻撃機が前衛部隊へ近づく。
「霧島」と「比叡」の主砲から三式弾が放たれ高角砲も砲火を開き前衛部隊の周囲に弾幕が張られる。
「当たりはしない。当たる訳がない」
エリアス・ブローマン中尉は弾幕の中を飛びながら呟く。
彼にとっては初めての出撃だから無理もない。恐怖心を抑えるのに必死だ。
ブローマンが乗るのはFi170艦上攻撃機だ。
日本がまだ同盟国だった時に提供された九七式艦上攻撃機の設計図を基に作られた機体だ。
基にとは言えほぼ九七式艦攻と変わらない姿だった。
開発を担ったフィーゼラー社は艦上攻撃機を以前開発していた。それはFi167だ。これは複葉機で固定脚の古い機体であり艦攻を新たに作るには技術の遅れがあったからだ。
ブローマンら艦攻隊は雷撃を行うべく高度を下げる。
その時に艦上爆撃機のJu490が空母「瑞鳳」と戦艦「霧島」へ急降下を始めた。
日本海軍が提供した彗星艦上爆撃機の設計を参考にJu87スツーカを基に設計された新型機だ。
外見はJu87から固定脚を取り払った姿だ。
Ju87の問題点である最高速度が400km/hにも届かない遅さを時速542km/hに引き上げ日米の艦爆と並ぶ速度になっている。
Ju87の場合は1t以上の爆弾も搭載できたが艦爆であるJu490は海上を長距離飛ぶ事から上限は500kg爆弾と定められている。
この時もJu490は500kg爆弾を「龍鳳」と「霧島」へ叩き込む。
「龍鳳」は飛行甲板に2発被弾して火災が発生した。
「霧島」は艦の中央部と前部に合わせて3発命中した。航行と主砲には影響は無かったが高角砲と機銃が破壊された。
「いいぞ砲火が弱まった」
「霧島」の対空砲火がJu490により破壊された事でブローマンら艦攻隊が雷撃を行うのを助けた。
ブローマンは艦攻の小隊を率いていた。艦攻隊全てを率いる隊長の編隊に続いて低空で「霧島」へ近づく。
「行くぞ!投下!」
隊長機の編隊が魚雷を投下したのに続いてブローマンの編隊も魚雷を投下する。
「霧島」は残る対空兵装を放ちながら面舵で魚雷を回避しようと試みる。だが魚雷2発が艦の中央部と後部に命中した。
「よし!やったぞ!」
ブローマンは自分達の戦果に興奮した。
「ドイツ軍の航空隊もやるじゃないか」
「霧島」の艦上でドイツ軍機の攻撃を体験した木村はそう感想を言った。空母に関しては日本海軍が進んでいると思っていた幕僚たちは「ええ」と口惜しく答えるだけだった。
「艦長、霧島はどうだ?」
「対空兵装が半分やられ速力も24ノットに落ちましたが主砲と通信能力は異常なし」
木村は「まだやれそうだな」と闘志は高いままだ。
「しかし龍鳳は飛行甲板が使えません。この先は直衛機無しになります」
「そうか。それなら下がらせるべきだな」
木村が「龍鳳」を後退させようかと考えている時だった。「敵機来襲!」の大声が響く。
第1空母艦隊からの第二次攻撃隊が前衛部隊に襲いかかる。
「龍鳳」の烈風は燃料はあったが弾が尽きかけていた。残る僅かな弾で敵編隊へ突撃する。
残る16機の烈風は二手に分かれた。
Fw190と戦う方とFi170とJu490の編隊へ向かう方に分かれた。
Fw190と戦う烈風は空戦を再び繰り広げた。
対してFi170とJu490の編隊へ向かう烈風は銃撃ではなく銃撃するフリをしたり編隊の前へ出たりして銃弾を使わない妨害を試みる。
「くそ、しつこい!編隊がバラバラにされてしまったぞ」
烈風の執拗な妨害によりFi170とJu490の編隊は次第に分かれていく。烈風を回避する行動と互いの機体がぶつからない様にする動きが編隊を崩してしまったのだ。
だが8機の烈風で押さえられなかったFw190がFi170とJu490を助けるべく現れると状況は変わる。
今度は烈風がFw190に追われてしまう様になった。
「このまま突撃する!目標は戦艦の2番艦だ!」
まだ烈風の妨害から立ち直れていなかったが前衛部隊への突撃を開始する第二次攻撃隊
当初は第一次攻撃隊が打撃を与えた敵戦艦の一番艦とドイツ軍が見ている「霧島」へ攻撃を繰り返し撃沈または大破させるつもりだった。
だが烈風の妨害は「霧島」へ向かうコースから外れてしまった。
代わって「比叡」が狙われてしまったのだ。
「比叡」は第二次攻撃隊の襲撃を一手に受けて魚雷3本と爆弾3発が命中した。
「比叡より通信、<ワレ最大速度22ノットニ落チルモ主砲ハ健在ナリ>です」
第二次攻撃隊の爆撃と雷撃を受けた「比叡」は発光信号で報告する。「主砲ハ健在ナリ」はまだ戦えると強く訴えていた。
「霧島も比叡も速力はかなり落ちましたが戦艦としてまだ戦えます」
前衛部隊の作戦参謀が木村へ作戦続行を促す。
「いやここは一旦退こう」
木村の決心に幕僚たちは驚き「しかし」と食い下がる。
「龍鳳から直衛機を出せない。再度の空襲を受ければ損害が増えるばかりだ」
「もうじき夕刻です。第3次攻撃を行う確率は低いかと」
「空襲の事だけではない。敵を欺くのだ」
幕僚たちはようやく木村の意図が分かった。
「索敵機より報告です。敵艦隊が針路を変えました。南へ向かっています」
メジェフは間髪入れずに「追撃して敵戦艦を撃沈しましょう」と進言する。
「いや、これ以上は第2インド洋部隊の援護を越える。追撃はしない」
ヘイエは2度の敵艦隊への空襲が本来のムンバイの日本軍航空戦力を叩き第2インド洋部隊を援護すると言う範疇を越えているのを知っている。
独断で追撃戦を行い空母にも損害を出す訳にはいかない。
「敵艦隊は撤収しました。こちらの艦隊も撤収させるべきかと」
インド洋艦隊司令部でも木村の前衛部隊撤収は伝えられた。
敵艦隊が来ると言う作戦の前提が崩れた事で参謀はチクリアヌスへ作戦中止を提言した。
「そうだな。作戦中止だ」
二つ返事でチクリアヌスは作戦中止を決めた。
「マテウス大佐、こうなる事を分かっていたのかね?」
チクリアヌスは不機嫌気味な声でマテウスへ訊く。
「いいえ。敵を退ける程の攻撃をするとは思いませんでした」
マテウスも「自分も驚いてます」と言う態度で答えるがチクリアヌスも周りの参謀達も白々しいと思えて苛立ちを憶える。
「マテウス大佐、あまり抜け駆けのような事は慎んだ方が良いぞ」
チクリアヌスはマテウスへ釘を刺すように忠告した。
マテウスは「はい。肝に銘じます」と答えた。
インド洋の深夜4時
日付が変わり夜明けが近いインド洋を木村の前衛部隊は輸送船団と合流して南下していた。
「そろそろ戻ろう」
仮眠から戻った木村は航海長へそう言った。
「では針路をムンバイへ戻します」
「うむ。輸送船団にも伝えよ」
航海長が木村の意図を汲んで針路変更の作業を始めてから撤収船団は反転の行動に移る。
「前衛部隊、速力20ノットに上げ!」
「航海長、ムンバイへは日没頃に入港できるようにせよ」
夜明けを前にムンバイへ再度向かう木村の前衛部隊は作戦の再会に士気が上がりつつあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます