やさしさの中で

つきこ

1.トモダチ


高校2年の春。

朝から教室は騒がしかった。クラス替えをして3日目というのに、もうすでに仲の良い人たち同士のグループができている。

私はどちらかといえば群れない方で、学校の空き時間に読書をするのを好んだ。

かといい、人間関係には特に困っているわけでもなく、誰とでも仲良くできるほうだと思う。

ただ、暇さえあれば本を読みたくなる無類の読書好きだった。


昨日席替えをしたばかりで、周りはみんな、新しい席がどうだとかそんな話が飛び交っている。

私は窓側の後ろから2番目。読書するには最適な席だった。


「おはよう。」

「久里ちゃんおはよう。」


後ろの席の彼の名は八谷洸平(はちやこうへい)。

彼とは1年の頃同じクラスで、本が好きという共通点がある仲の良い友達同士。

彼は私のことを久里ちゃんと呼ぶ。私の名前が久里子(くりこ)だから。

私は彼のことをハチと呼んだ。子犬のように可愛らしい容姿で、男子という感じがしない不思議な子。黒縁メガネの下にたれ目、ぽってりした唇、艶のいい黒髪、そんな可愛らしい顔立ちだった。


「いい席でよかったよね。」

「うん。何してもバレないね。」


穏やかな口調でハチは話した。この緩い感じがとても好きだった。

男友達というよりは、ただの友達としての存在。

女の子の友達とも少し違う。けどどこか心地よい関係。

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