第2話

「な、な、なんじゃ、こりゃあーーーー!」


鏡に映った自分の姿に、私はこんなリアクションしか出来なかった。

前開きのシャツとさるまたは、清潔な白。

上質のメリヤスが良い肌触りです。

おなかにはシックな色合いの腹巻。

そして頭には毛が一本のはげヅラをかぶせられ、そして、鼻の下にはちょびひげをぺたり。




「すごくよくお似合いだわ!

完璧よ!」


「あんた、よくもこんな…」


「みなさーん!出来ましたわよーーー!」


姫香は扉を開け、大きな声を上げる。




「おい、こら、やめっ!」




とめても無駄だった。

すでに、みんながフィッティングルームに集まって来た。




「おっ!」


「ぷぷっ!」


「……」


だよね、だよね?

こんな格好見たら、誰だってそういう反応になるよね。




「わ、私……」


「皆、仮想が整ったことですし、どうかお食事をどうぞ。」




「食事」という言葉に、私は今の己の姿を忘れた。

それと入れ替わりに、さっきから脳裏にこびりついていた子豚さんの姿が思い出された。




(そうだ…あれを食べなきゃ!)




私は吸い寄せられるようにご馳走の並んだテーブルに向かった。

おぉ、何とかぐわしきにおい…




「めぐみさま…どうぞ。」


イケメンのボーイさんに手渡されたのは、シャンパンらしきもの。

食前酒ってやつですね?

お金持ちは、食事の前にこういうのを飲むんだよね。




「あ、ありがとう。」


己の姿を忘れてたから、ちゃんと受け取れた。

しっかり覚えてたら、恥ずかしくてそんなの受け取れない。

お酒はあんまり強くないけど、このくらいならきっとなんともない。




「では、今夜のパーティを祝して……かんぱーい!」


飲もうとしてたら、姫香がそんなことを言い出して、みんなで乾杯した。

ぐいっと一飲み…

うん、思ってたよりも飲みやすい。

さて…と。

子豚、子豚…

そのまんまだからちょっと怖いけど…本当に良い色に焼けてるよ。

きっとおいしいんだろうなぁ…




ん…おかしいぞ。

子豚の奴…テーブルの上をぐるぐる回ってる…

いや、違う…

テーブルごと…いや、この部屋ごと回ってる…

なんで??どうして??え……

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