第3話

「では、またあとでにゃ。」


「は、はいっ」


龍之介さんの部屋の前で私は停まり、文さんと猫神様はさらに長い長い廊下を奥へと進んで行った。




「龍之介さん…めぐみです。」


声をかけたけど、部屋からの返事はなかった。




「龍之介さん…!」


さらに大きな声で呼んでみたけど、やっぱり部屋の中はしんと静まったままで返事はない。




「……いないんですか?」


私は、そうっとふすまを滑らせた。




「龍之介さん……入りますよ~…あ…」


部屋に入ると、龍之介さんはまだ布団の中で眠ってた。

しかも、かなりの熟睡と見える。

私が入って来たことにもまったく気付いてないみたい。




(それにしても……まさに、天使の寝顔だな……)




まっすぐに上を向き、すやすやと眠る龍之介さん…

寝姿までこんなに美しいとは…なんて完璧な人なんだ!?

足音を忍ばせ、私はそっと龍之介さんに近づく…




押し倒すつもりで来たわけだけど、今日は猫神様という予想もしてなかった人…(人じゃないけど)と、遭遇し…

いくらなんでも、神様が同じ家ににいるのに、そんなことは出来ないと思ってたけど…

押し倒すまでもなく、龍之介さんは横になってて…うん、これはチャンスといえば大チャンス…!?




私はそっと息をひそめて、龍之介さんの布団の中に滑り込む…

な、なんて大胆なことをやってるんだ、私は…!

自分の行動にややドン引きする。

でも、チャンスは生かさねばならない。

チャンスを見逃すのは愚か者のすることだ。

うん、これで良い。これで良いんだ。

後ろめたさにどきがむねむねする…

布団に入った途端、もわっと感じる温かさ…これが龍之介さんの温もりか…鼻の下が伸びていくのを私は感じた。

調子に乗ってそっと手を伸ばすと、すべらかな感触に触れた。




な、な、なんと!龍之介さん…寝る時は裸派ですか!!

ま、まさか、ぱんつもはかない派…!?




そんなことを考えては、鼻血が出そうになるのを懸命にこらえ…

私は、この先どうするべきかを迷っていた。




どうしよう?

このまま龍之介さんを襲ってしまうか、それとも龍之介さんが目を覚ます前にここから退散するか…




前者だと完全に嫌われてしまうかもしれないけど、逆に本気で付き合ってくれるかもしれない。

後者だと、問題は起きないものの、進展にはつながらない。




そもそも、今日は当たって砕けろの気持ちで来たんじゃなかったか?

だったら…このまま何もしないでなるものか!?




(よっしゃーーーー!)




私の中の、肉食系めぐみが覚醒した。

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