肉食女子は策士です

(1)



 私はごくり、とそれはそれは大きな音を立てて生唾を飲み込んだ。

 しかし、当然のように目の前の天使、龍之介さんは目を覚まさない。


「いきます」


 彼の全身を覆っている布団をとりあえず上半身分剥がした。

 そして私は蘭丸で練習したときより力を弱めつつ覆いかぶさった。

 押し倒す前から倒れているので、ちょっと調子が狂う。


「すう……すう……」


 天使の寝顔が近くにある。

 それにやはりというか、上半身裸でした。

 きゃー。きゃーきゃー。

 心の中は大絶叫。

 嬉し恥ずかしな初体験。

 私はそのまま馬乗りになったまま彼の白い首筋、そして鎖骨の方に手を滑らせた。

 吸い付くような肌。押し返す若々しい感触に思わずドキドキする。

 そして気づいた。


 押し倒すって、厳密にはどうするの?


 なんとなく男女が睦ましくすることを知っているけれど、それはなんとなくであって……。

 こういうのは男の人がリードしてあれこれしてくれるものだと思っていたから。

 押し倒そうという勢いそのままでここまで来てしまったわけなのだ。


 えっと?


 とりあえず布団をしたまでめくればいいのでしょうか?


 私は誰に見られているわけでもないのに罪悪感と背徳感で冷汗が大量に背中を湿らす。

 龍之介さんから布団を完全にはがすと、そこには赤いパンツが目に入った。


 みなさん、朗報です。

 イケメン龍之介さんは、赤いパンツ(なんとブリーフ)のようです。


 ……で?

 あっしはどうすれば?


 そこで一つのことを思い出す。

「あ、キス」

 そう。

 男女がむつまじく何かをするというのならば、まずは接吻だろう。

 そうと決まれば早速。

 どういう図太い神経をしているのか、まったく理解できないけれどとりあえずぐーすか寝ている彼の首元にかぶりついた。


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