ドキドキ☆ナイト

(1)



 目が覚めたら闇の中だった。

 フワフワする身体。

 足先指先と力を入れていくと、手の中に柔らかい感触を感じ取った。

それをぎゅっと握ったまま、夢心地で起き上がったら――。


「ひゃん! どこ触ってる!」

「え、どこ……どこ?」


 ――まさかの男性の声がした。


「ひぇ、だれ? ここどこ? っていうか、夜なの?」


 寝ぼけ眼のまま周囲を見回す。

 しかし真っ暗で何もわからない。

 そもそもここはどこなの?


「めぐみ! 寝ぼけるのもいい加減にするのだ! ここはお主の家だぞ!」

「へ?」


 間抜けな返事をして声のした方を向く。

 するとカチッと音がして瞬く間に電気が点いた。


「ううー、まぶしーよ」


 瞬時に手を目元に持っていく。握りしめている柔らかくモフモフなそれと共に。


「ひゃんっ! だ、だから触るな! 離すのだっ!」

「え、ご、ごめんなさい」


 モフモフを名残惜しく思いながら手放す。

 そして明かりに慣れてきた目を開ければそこには――。


「もう。めぐみ、お主は本当に私の尻尾が好きだな!」


 ――何故か怒り半分呆れ半分の蘭丸がそこに座っていた。

 人間の姿だが、尻尾だけひょこっと生えている。

 私はそれを握って寝ていたようだった。

 ……寝ていた、ようだった?

 誰と?

 蘭丸と?


「ぎゃぁぁぁぁぁあ!」




 私は今宵、初めて男性と同衾しました。

 相手は片恋相手の龍之介さんではなく、(絶賛揺らぎ中の)美男子蘭丸でした。


 嬉し恥ずかし、はんぱない。


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