(2)
*
「ところで、なんでここにいるの?」
「居候ですから。食事の用意はしますよ」
「へえ……」
そう言われて鼻をひくつかせると確かに美味しそうな匂いが香った。
甘いたまごやきのにおい。
あまじょっぱそうなちょうどよく焦げた醤油のにおい。
「和定食っぽいね、匂いが」
「すいません、洋食は苦手なもので」
「あはは、いいよ。朝は和食って旅館みたいで素敵!」
そう言って立ち上がろう、として身体がふらついた。
立ちくらみとも違う、身体に力が入らない感じ。
「ど、どうされたので?」
とっさに九太郎の手を取るが、いかんせん彼は河童。
ぬめっとしたものを感じたのを最後に私は派手に転んだ。
すってーん、ころり、と。
「いたぁ」
「だ、大丈夫で?」
そう言って差し出される緑の手。
しかし、その手を取れない。
ぬめりとしていたのもそうだけれど、頭をしたたかに打ったため、目がちかちかしているのだ。
「うー、つら……」
「どうされたのでしょう……お風邪でしょうか?」
「熱っぽさとか鼻づまりとかのどの痛みみたいなのはないよ? 頭は痛いけど……」
「それは大変で!」
「まあ、打ったからなんだけど」
にやっと笑って見せるが、九太郎は心配そうだ。
「そうです! 文左衛門様にお知恵を頂きましょう!」
「文左衛門……」
頭を打ったせいか、文左衛門というのが隣の旅館……ではなく家に住む、猫のアヤカシ、文さんのことだと思いだすのに少し時間がかかってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます