猫と河童と小狐くんと
(1)
私は河童の九太郎としどろもどろの挨拶を終え、
「それではぁ、失礼しますぅ」
と、なんとも儚い声で去っていった河童のいた場所を凝視していた。
水の跡でびっちょりだ。
「九太郎、やっぱりまだ元気がないにゃあ。東雲、まず第一に井戸の定期的な掃除を頼むにゃん」
「はい?」
河童と会話なんて危機的ならぬ奇奇的状況が何とか過ぎ去った影響でのどが渇いていた私は、出されたお茶をずずっと啜る。すると、落ち着く暇もなくいきなりの要求を猫に突き付けられていた。
って、え、なんで?
「言っただろう。九太郎はお前の家の井戸に住んでいる。が、周辺の掃除が行き届いていにゃいから、邪気が若干漂っているようなんだにゃん。それに侵されて元気がない様子。だから東雲、猫神代理としてお願い申し上げるにゃ」
ぺこりと小さな頭を下げる猫。
というか――猫神、代理。
今更ながら猫神様の家に参ったのだと思いだす。
返事の遅い私に猫ははあ、とため息を一つつくとにやりとして言った。
「もし……約束を守ってくれたら龍之介の好きなお菓子を教えてやるにゃん」
「約束します。絶対に欠かさず井戸掃除します」
「そうか。にゃにゃ、お前は良い奴だにゃ」
私って、ちょろいなあと後から思うが。
まあ、この時の選択は間違っていないと後々知る。
そして龍之介さんの好物のお菓子は、マカロンだそうだ。
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