第4話

「さぁ、入るにゃん。」


私があれこれと妄想にふけってる間にも猫は歩き続け…

そして、また急に立ち止まるとふすまを開けた。

そこは、割と広い茶の間みたいな部屋だった。




「おーーい、お茶!」


猫は、座椅子に座り、大きな声でそう言った。




「お菓子を出すにゃん。」


「え?あ、は、はいっ!」


私は潰れてぺしゃんこになったお菓子の包みを開いた。

当然のことながら、箱同様に中のお菓子もぺしゃんこで、あんこがはみ出ていた。

猫はそれを切ない目でみつめる。




「せっかくのお菓子が台無しだにゃ。」


「ご、ごめんなさい…」


しばらくすると外の廊下からおかしな音が聞こえてきた。

なんかがくっつくような湿った音だ。

その音は、部屋の前でぴたりと止まり…音もなくふすまがすーっと開いた。




「ぎゃあーーーーー!」




私は思わず大きな声を上げていた。

だって、そこに立っていたのは緑色で頭に丸い皿の乗った…そう河童だったんだから。

河童は緑色の身体の上に真っ白い割烹着を身に着け、お盆に乗せたお茶を持っていた。




「なんだよ、びっくりするにゃ!

急に大きな声出して…」


「だ、だ、だって…か、か、かっぱ…」


「河童がどうした。

それに、九太郎はおまえの家の河童だにゃ。」


「わ、私のって…ど、どういうこと?」


「九太郎はおまえの家の井戸に住んでるんだにゃ。」


「えーーーーーっ!?」

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