(4)

 *


「何用か。答えよ」

「ひえぇ」

「ぬ? そち、見慣れぬ顔じゃな。もしや隣に引っ越してきたというものか?」

「うひゃあ」

「確か町内会長殿によると……東雲(しののめ)、と申すはずだが?」

「…………」


 腰を抜かしたまま猫を見上げる。

 猫はぬっと二本足で立つと、毅然とした態度で言い放った。


「もう一度問う。何用か? お主は東雲と申すものか?」

「ひゃ、ひゃい……」


 ゆっくりと一回。そして慌てて二度三度と頷く。

 夢でも見ているのかもしれない、とは思うけれど、それなら早く覚めて欲しかった。

 二本足で人間の言葉を話す白猫。

 怖い!

 猫は好きだけど、怖い!


「東雲。下の名は?」

「め、めぐみです……」

「そうか。そして何用故、我が屋敷に参った?」

「……うう」


 はあ、と白猫はため息をつくと目をギラリと光らせて尋ねてきた。


「だーから。なんでこの家に来たわけ? って聞いてるにゃん」

「……っ!」


 まさかの若者言葉。

 しかも語尾ににゃんが付いてる。

 さっきは昔の人みたいだったし、にゃんがつくと可愛いしでわけわかんない!

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