(3)

 しめ縄、看板。賽銭箱に似た郵便受け。

 ……でもここ、神社じゃあないよね。

 いや、決して違うはずだ。

 なにせ、一番近くの神社というのが徒歩十五分の場所に小さなのが一つ、というのをすでに確認済みだったからだ。

 逆に言えば、それ以外にこの辺りに神社はない。

 方角こそ同じでも、多分縁もゆかりもない。

 それなら――。

 私は何度も目を家の全貌と玄関を往復させた。


 ――違和感は、あるが。

 ――不穏な感じは、ない。


 そう結論付けると私は覚悟を決めて紐を掴んだ。

 紐の太さは思ったより細く、猫の足ぐらいだな――と思った瞬間、鈴が鳴った。


 ちりんちりんちりん、と。


 紐を揺すっていないのに、鳴ったのだ。


「ぎゃあっ」


 びっくりして紐を離すが、すでに時遅し。

 家の住人が玄関から顔を出した。


「何用か」


 ――猫、だった。

 大きさも柄もどこにでもいそうな白猫だ。

 しかし。


「しゃ、喋ったぁ……」

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