雨音の中

校門を抜け、見慣れた風景を眺めながら歩く。学校を出るときに聞いたところによると、私の家は奴の家に着くまでの道にあるらしい。だから帰り道はいつもと同じ。違うのは左側に奴がいることだけ。


「…………」

雨が傘を叩く音だけが響く。学校を出てから私たちは一つも言葉を発していなかった。元々口数が多いわけではない二人だから、こうなるのは必然だけれども。静かな空気が私たちを包みこむ。他の人ならこの雰囲気に耐えられないかもしれないけれど、一人が好きな私には苦ではなかった。その空気に身をゆだねていると。

「やる」

不意に奴が口を開いた。突然なんなの。言った言葉も訳が分からないし。そう思った瞬間。口の中に硬くて丸いものが押し込められた。……なにこれ、飴?

「それ、俺が今気に入っている飴。美味いだろ?」

「ああ、まあ」

口の中でそれをコロコロと転がしながら答える。甘すぎないリンゴの味が口いっぱいに広がっていく。好きだな、この味。


「ねぇ。この飴、どこのやつなの?」

また食べたい、そう思った私は奴に尋ねた。すると、奴は私に傘を持たせ、エナメルバックからその飴の袋を取り出し、私に見せた。ふーん、あのメーカーのやつなのか。どうりで美味しいと思った。

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