第3次【死神降臨】4節【殺人者狩りの青年と真理の少女】

このエレメンタリィ・オンラインが自発的ログアウト不可能のデスゲームと化してから、だいたい1年半の時間が過ぎた。

突破された島は第47まで。今は第48の島【月夜見つくよみの島】。

第5次アップデート【悲嘆なげき人形マリオネット】。しかしこのイベントはあまり人気がなかった。

何故かというと、概要は街にいるNPCが【隷属サーバネーション】状態になり敵になる、というもの。しかも強制で、NPCたちは首に黒い首輪をつけていたのだ。それを解除するためには、【断罪の霊刃】というアイテムが必要になる。

放置しておくとダンジョンなどの探索に関して非常に厄介なことになる。

しかし、その解除アイテムの入手方法が、


NPC


という倫理条文に抵触しそうな(⁉)問題があったのだ。普通のゲームならいざ知らず、このエレメンタリィ・オンラインは全ての世界種ザ・シードオンラインゲーム連結体クラスタの中でも最高峰の鮮明度グラフィックを誇っている。

もうパッと見仮想体だと思えないため、さすがに少々躊躇われるのだ。




その一方で、【死神】と呼ばれるようになったカインはどうしているかというと…

今までとほぼ変わらず、ダンジョン攻略もしながらPKを探して斬り殺していた。

彼の現在位置は、最前線月夜見の島中央の【常夜の神樹】(キーダンジョン)である。ここは難易度の高いダンジョンなので、半ば放棄されていたのだ。


(もうPKはこの仮想世界から排除し終えた。ゲーム攻略に集中しよう)

未だ外見は紅眼黒髪のままだが、彼は薄い赤の雷光を放っている愛剣ダーククォーツ雷属性魔法素子エレメントを流し込みながら考えていた。

そして数瞬後、刀身から放たれた一千の雷撃が周囲のモンスターを焼き尽くす。

あと余談だが、彼は1年間をひたすら能力強化と迷宮攻略に費やしている。

常に最前線で戦い続け、転生システムも駆使した結果、彼のLv,は573にまで上昇し、上位機凱族イクスマキナと言われるゲームシステム上最上位の種族になっている。

「もうすぐ…、……に決着かたをつけられるかもしれない。あともう少し…」

人間ヒューマンのプレイヤーが15回以上【転生】する事でなれる上位機凱族イクスマキナ。その証である某RPGでありそうな機械龍の翼と、風属性魔法素子エレメント・ウィンドを使って飛び回りながら攻撃を仕掛けていく。



   *    *     *     *     *     *


月夜見の島の5つ後にある、【聖華龍の島】。

その島の中央にある大神殿には、真実の扉と設定された大扉がある。

その蒼い大扉を護るように佇むNPC。

【彼女】はまるで本物の人間かのような微笑みを浮かべ、こう呟いた。

「……さすがだわ、……。…ならこの…を終わらせられるかもしれない。」

その呟きは、神殿の中の虚空に溶けて消えていき、何もそれを聞いたものはない。






次回→第4次【黒き覇者】第1節【聖なるクリスタルを巡って】   END





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