第2次【ダンジョンと孤独な戦神】3節【第1の戦闘=イグニスドラゴン】

世界標準日時ゲーム時間【聖歴2093年いにしえの月末の日】。

第1の島【ファイアステーション】。カインは、降霊の森最奥の手前の位置にいた。

「さて、とうとうここまで来ちまったが、今さら退くわけにもいかないからな、いかせてもらおうか」

背に魔聖剣【ダーククォーツ】を背負い、黒い革防具に身を包んだその姿は、戦神と表現するにふさわしい雰囲気を纏っていた。

まだ誰もいない降霊の森最奥の、木が取り囲む開けた地。その真ん中近くまでゆっくりと歩んでいく。といきなり、景色が歪んだかと思うと、巨体を持つ真紅のドラゴンが姿を現した。

   〈【解析アナリシス=Ⅴ】…イグニスドラゴン。Lv,179〉

「やはり島の名の通り、あるいは周りの木の色の通り、炎属性のボスか。丁度いい。こいつの練習台にでもしようか」

と、カインがアイテムBOXから取り出したのは水・聖属性の魔皇剣、【スプリット・オブ・クロウ】。【ダーククォーツ】と同じく浮遊する剣なのだ。

、好きにやれるよな♪」

「システムコール!サファイアクォーツ・エレメンタルスピリットクロウ」

        蒼い水の猛烈な濁流がボスを飲み込んだ。

この武器に備わる最上位超レア特殊スキル効果は要約すると、【自分と敵モンスターのSTR《力》値差が1000以上の場合にだけ相手を跡形もなく滅ぼす※対人戦には使用できない】こと。他にも制約付きなので、つまり使いどころさえ間違えなければ絶望的な状況を覆せる切り札の技能スキルである。


元々炎属性は水属性魔法攻撃みずのスキルに弱い。【解析】に表示されたイグニーマドラゴンのHPゲージは4割程減少していた。

          「グアアアアアアアァァ!!!」

「ん?えーと、《イグニーマドラゴン、《生存本能=炎=》発動。HP・魔力徐々に回復。炎属性攻撃の威力UP》か。持久戦になったらきついなこりゃあ」

さっき放った水属性武器スプリット・オブ・クロウ特殊効果スキルは1回放つと冷却時間クーリングタイムが2時間もあるため、もうこの戦闘で行使することはできない。

なので通常攻撃で押し切る作戦に出ることにする。魔導剣士など前衛&魔法職が扱える魔皇剣などのたぐいは、通常攻撃に幾らかの魔法属性が付与されている。(※勿論専用スキルの威力には劣るが)

振り回される真紅の尾と爪、炎ブレスを器用に回避しながら、蒼と銀色の魔皇剣を操って攻撃を加えていく。

戦闘バトル開始から数十分が経過したところで、第1の島【ファイアステーション】のフィールドボス、《イグニーマドラゴン》はその巨体を青いポリゴンの欠片に変え、凄まじい音をたてて爆散した。


「ふぅ…これで次に進めるな。さっさとやっつけてクリアしてしまうか」

浮遊する蒼銀の古代級エンシェントランク魔皇剣【スピリット・オブ・クロウ】をアイテムBOXに戻し、カインは静寂に包まれた森の先へと進み始めた。





次回→第3次【死神降臨】1節【エルフ戦争ウォーズと最初のPK】 END









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る