孤独な黒の青年は、この夢を終わらせる決意をする。

第2次【ダンジョンと孤独な戦神】1節【初回アップデート】

世界標準時刻ゲーム時間【いにしえの月雪の日 夕暮れの刻】。

この時間に、デスゲームとなって最初のアップデートが入った。

アップデートの間は、戦闘不可、街・村から出ることはできない。

およそ30分ほどかかったアップデートをカインは降霊の森に最も近いアルヴィドの街で待っていた。

「第1次アップデート、【森妖精大戦争エルフ・ウォーズ】…多分キャンペーンクエストイベントのことだろうな」

どうやらアップデートの名称は、追加されるキャンペーンクエストの題名らしい。ちなみにキャンペーンクエストというのは、この世界の場合、複数の島にまたいで続くストーリークエストのことである。複数の章から構成されるキャンペーンクエストを完全クリアすると、貴重レアなアイテムがもらえることも多い。

「もうそろそろ終わるな。じゃ、レべ上げに行くか」

カインがレベル上げに選んだのは、月光の水辺というフィールドタイプダンジョンだ。ここには厄介な状態異常をかけてくるものは出ないから、安心してできる。

「パペッ!パペぺッ!」

「変な鳴き声だな。まあこんなのもいるか。一応弓持ってるし狩人かな」

カインの今の職業ジョブは【魔導剣士】。

手に持つ(というか宙に浮かんでいて、それを操っている状態)の魔皇剣【ダーククォーツ】に闇属性の魔法素子エレメントをチャージしていく。

紅と濃紫の刀身が暗紫色に輝きはじめる。

「【システムコール。エレメンタル・ダーク=バースト・クロウ】」

カインが今唱えたのは、この世界での基本武具スキル、魔法素子操作エレメント・コントロールの術詠唱文。他の武器にしても、だいたい属性と武器を現す部位が違うだけの似たようなものである。

ダーククォーツが内包する炎と闇の魔法素子が、操作の術によって解き放たれる。

ごおおおおっ!!っと闇色の炎が周囲の木ごとレッドパペットを焼き焦がした。

こんなことができるのも、周囲にだれもいないからだ。

「もう、覚悟を決めないとな…孤独ソロでこのゲームをやり抜くことを」

虚空に浮かぶLV,1→LV,3へのレベルアップメッセージウィンドウを見つめながら、カインは【孤独】なプレイヤーとしての覚悟を決めるのだった。






次回→2節【風スイレンの塔と風樹の街】              END





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