第2話 神様
「待っとったぞ、
まるで漫画に出てくるような、白く長い髭を蓄え、頭はきれいに禿げているのになぜか中心からだけ伸びている一つに束ねた白髪で、白装束を着て杖っぽいものを持った、仙人や神様としか言い表せないおじいちゃんから自分の名前を呼ばれた。
「…え?」
と言うのがやっとだった。まるで状況が理解ができない。
「ワシは神様じゃ。お前の恋愛を成就させに来た」
あ、ほんとに神様なんだ…。
「ありがたく思え。お前のために、画期的なメガネを創ってやったぞ。それを使ってさっさと恋愛成就させてこい。お、そうそう、ちゃーんと度も入っとる。今お前が付けとるの人間が作った安っぽいメガネより見えやすいかもしれんぞ。なんせ神が創ったメガネじゃからな」
すごく満足げに神様とやらが話す。とりあえずなんでメガネなのかとかツッコんだ方がいいのだろうか。
「どうした?あまり嬉しそうに見えんのう。…もしやお前、そろそろコンタクトにしようとか思っとったとかか!?恋愛のために見た目から変わろうとか思うタイプじゃったか!?」
違う、そうじゃない。それ以前の問題なんです。
「…なんで、神様が、僕なんかに?」
なんとかその言葉だけを絞り出せた。聞きたいことは他にも山ほどあったが。
「それは…話せば長くなる。だからおいおい話してやろう」
なぜか流されてしまった。ていうかおいおいがあるのか?
「じゃあその、せめて…あなたが神様である、という証拠とかはないんですか…?」
30cmくらいの人間が雲に乗って浮いてる時点で、それがSF的な何かなのは疑いようはない気がする。立体映像とかなんじゃないかという発想もよぎったが、僕にそんなドッキリめいたことをする知り合いやその必要性の方が思い当たらない。
となると大事なのは、この謎のおじいちゃんを信用していいかどうかだ。
「神である証拠か…そう言われると難しいのう。ワシは今恋愛の神様じゃからな。それに関すること以外の能力はないんじゃ。じゃからこそ…」
ポン、という音とともに、おじいちゃんの目の前に黒ぶちメガネが現れた。浮いている。そのまま僕の目の前まで移動してきた。
「ワシの力の結晶としてそのメガネを考案したのじゃ。それで信用してもらえんかのう?」
何もないところからメガネが出てきた。そしてそれは、今も僕の目の前で浮いている。これはとりあえず、『非現実的な何か』ということは確かなようだ。
となると…。
「詳しい話を、聞かせてください」
ちゃんと話をしてみて、信用していいのかを判断するしかない。
看護の精神は、傾聴・共感・受容である。頭も気持ちも整理が追いつかない僕は、なぜか看護技術を実践しようとしていた。
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