読書感想文『ストーンサークルの殺人』(ネタバレ)
この作品のテーマは『暴走』と言えるでしょう。
この物語では大小さまざまな『暴走』があります。
例えば主人公の『ポー』は上司を意見を無視して独断で動く傾向があります。その行動が事件の解決へと繋がっていくのですが、彼が『組織の一員』として逸脱していることには変わりありません。
同じく『ティリー』も自分の興味や関心を優先するため、他者との距離を測ることなく行動してしまいます。それが直球過ぎるため、彼女が周囲から孤立する原因となりました。それも『暴走』している状態と言えるでしょう。
そんな『ティリー』を虐めていた同僚たちも同じように暴走していると言えますし、その虐めを解決しようとしなかった『フリン』もまた組織の維持を優先して暴走している状態だったと言えるでしょう。
『正しいことがある』はずなのに、色んな要素からそれを実行できないジレンマ。そして、そのジレンマによって『生贄』になる人間。それがこの作品の根幹です。
『虐めはいけない』と多くの人が知っています。
ですが、ならばなぜ『ティリーは虐められていた』のでしょうか?
虐めを止める方法はたくさんありました。
ですが、『ポー』がそれを止めるまで誰一人虐めを『止めなかった』のです。
それは彼女が虐められている方が『都合が良かった(マシだった)』からです。上司の『フリン』はけっして悪い人間ではありませんが、彼女には彼女が優先すべきことがあり、それは彼女を虐めから守ることではありません。
(もっとも何もしなかったわけではなく、多少は予防策を講じていました)
(ただそれは性急に問題を解決する策ではなく、無難に状況を改善する方法でした)
(まあ、上手く行けばより良い形で治まった可能性もありますけど)
(ポーの行動は正しいですが、仕事ができる人間が解雇されたのも事実です)
『正義を成す』ための『暴走』
『秩序を維持する』ための『暴走』
『正しく解決する方法』があるはずなのに、それが行なわれない『現実』
それが我々の住む世界です。
『正論』を綺麗ごとと嘲笑う『地獄』です。
そこには『正しい正しさ』などありません。
常に求められるのは災いを沈めるための『生贄』です。
家族を守ることは正しいでしょう。
ですが、そのために『弱者を火炙りにする行為』は正しいのでしょうか?
答えはありません。
その疑問が出る時点で『正しさ』はすでに失われているからです。
正義を成すための『生贄』か。
秩序を守るための『生贄』か。
その二択が求められる時点で、すでに進むべき道を間違えた後なのです。
だからこそ、どの道に進んだとしても『生贄』が求められてしまいます。
ですが、そこまで間違えてしまってはどちらかを『選ぶ』しかありません。
『生贄』となる誰かを。自分なりの『理由』で決めるしかないのです。
例えそれが他者から理解されない理由だとしても。
それを決めるのは自分自身なのです。
そんな感じの物語です。テーマ的にはめっちゃ重いですが、そこが海外小説の面白さですね。けっこう日本では書けないような悲惨(凄惨)な話が多いです。
まあ、良いミステリー作品であることは間違いありません。
文庫なので多少値段も安い方ですし。
上手い作品でもあります。最後まで読み終えれば、なぜこの作品が『こんな形をしているのか』というのがはっきりと分かります。全体的にきちんと計算して作られた作品ですね。実力がある作家さんでしょう。
いや、わりと軽い気持ちで買った作品ですが大当たりでした。
このレベルだと後々けっこう評判になるんじゃないでしょうかね。
小生が面白いと褒めていた『マーダーボット・ダイアリー』もなかなか注目されましたし。いや、まあ、一部界隈ですけど。『SF』ですしおすし(汗)
ま、まあ、ミステリーはSFよりは復権しているイメージがあるので、たぶんだいじょうぶでしょう。SFもけっこう増えてきてますけど、やはりまだ敬遠されてるジャンルですよねー。映画だとSFもそれなりに見られているのですががが。
ミステリーも『キャラミス』は人気なんですけど、それ以外はそれほど注目されてない感じはあります。逆に言えば面白いキャラクターさえ確立できるなら売れる作品を書けるということでもありますけど。
それをチャンスと見るか、衰退と見るかは人それぞれで。
そんな感じでまたそのうち。
<ミステリーサークルの殺人(どっかで聞いた記憶があるような……)>
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