アニメ観賞『ガンダムビルドダイバーズRe:RISE』(超ネタバレ)

 超ネタバレです。

 ご注意ください。
















 この物語の大きなテーマは『後悔からの再起』ですね。

 そのため多くの登場人物が『後悔』を抱えた状態で始まります。


 その中でもっとも大きな後悔は主人公である『ヒロト』の抱えるものでしょう。

 彼の場合は他の人々とは違い、それしか『選択肢』が無かったからです。


 彼には『選ぶ権利』すらありませんでした。

 選んだのは『イヴ』であり、『ヒロト』はそれを受け取っただけに過ぎません。


 だからこそ彼は自分とは違い『選択肢』のあった『リク』に憎しみを抱きます。

 同じような状況でありながら、彼らだけには救いの道があった。


 でもそれは『イヴ』の犠牲があったからであり、それなのに彼らはそれをまったく知らずに、自分たちだけが『ハッピーエンド』へと向かっていく。


 それは『ヒロト』の中に憎しみを生み出すのに十分な状況でした。

 彼の中の感情は当然であり、それは何もおかしいことではありません。


 ただ一つ。

 その行動をけっして『イヴ』が望まないことを除けば。


 それを理解していたからこそ、彼は最後の一線を踏み止まることができたのです。

 その代償として全てを失ったとしても、それでも未来に希望は残されました。


 そして、その一線を越えてしまった者こそ『アルス』になります。


 彼は撃ってはならない一撃を撃ってしまった。

 大切な人との『約束』を間違えてしまったのです。


 この物語では『ヒロト』と『アルス』は光と影の関係です。

 大切な者を失いながら踏み止まった者と大切な者を失い超えてしまった者。


 二人とも求めていたモノは同じでした。

『大切な人との再会』です。本当にそれだけでした。


 ですが、『ヒロト』は『イヴの残した未来』を受け入れ、『アルス』は最後まで過去に囚われたままデータの海で『望んだ再会』を果たします。


 同じような境遇でありながら違う結末を迎えた二人。

『アルス』にとっては未来を行くよりもあの結末の方が幸福だったわけです。


 そして、『ヒロト』や『アルス』と同じような後悔を抱えている登場人物がこの物語にはあと二人います。それが『クアドルン』と『マサキ』です。


 この物語のそもそもの発端は『クアドルン』が『アルスを殺せなかったこと』です。彼は殺すことを躊躇ってしまった。彼が選んだ選択肢によってその後多くの悲劇が齎されます。


 それはある意味では『イヴを殺せなかった場合のヒロト』とも言えるでしょう。

『大切な者』を殺せなかったゆえに世界に破壊と混乱が広がってしまいました。


 ですが、その行動が結果的に『アルスが救われる機会』を与えたことになります。同じように、もしあそこで『イヴ』を殺さなければ、彼女にも救われる道があったかもしれません。


(もっともあの場面でヒロトに選択肢はありませんでした)

(先ほども書きましたが彼はイヴの選択を受け止めただけです)


 選択の先には道がある。

 失敗だと思ってもそれが次の結果に繋がっていく。


 というのはこの作品の『テーマ』の一つです。 

 

『マサキ』も操られていたとはいえ多くの人々を殺してしまいました。

 それと同時に彼が多くの人々を救ったのも事実です。


 彼がいたために死んだ命と彼がいたからこそ救えた命。

 これはどうすることもできない天秤です。


 何かを選択するということは、その先に変えることのできない結果がある。

 それが誰にも変えることができない『現実』です。


 死んだ命が戻らないように。

 助かった命に代わりはありません。


 この物語の結末は必ずしも正しかったわけではありません。もしハッピーエンドがあるとすれば、早い段階で『アルス』を殺していた場合だけでしょう。


 でも、その場合は『アルス』が救われる道はありませんでした。結果的に多くの者を殺した『アルス』が救われるという皮肉的な結末に、『ムラン』が反発するのも当然の感情です。


 でも、この物語は誰が間違っていたということでもありません。『新しき民』が『古き民』から土地を与えられたということを証明することもできないのです。


『アルス』からすれば『クアドルンが裏切った』と考えてもおかしくはありません。『古き民』が戻ってこない原因が『新しき民』にあると考えることも突飛な結論ではありません。


 そもそもの原因は『古き民』がいつか会えると『アルス』に『約束』したことが原因とも言えますが、それを責めることもできないでしょう。


 多くの選択肢がこの結果を生み出したのです。

 何か一つだけがこの結果を生み出したわけではありません。


 多くの成功と多くの失敗の先に現実がある。

 それを完璧に制御できる者などいません。


 確かに全ての者が最善の行動を取ることができれば、ハッピーエンドがあったかもしれません。


 でも、それができないのが人というものです。

 我々にできるのは現実を受け入れ、少しでも良い未来を手に入れることだけです。


 ヒロトが『イヴのいない世界』を受け入れたように。

 ヒロトが『イヴの望んだ世界』を受け入れたように。


 成功も、失敗も、命ある限り明日へと繋がっていく。


 というのがこの作品の『メインテーマ』でしょう。

 

『メイ』が最後に涙を流したのも、彼女の中に誰かから受け継がれた感情が残されていたからでしょう。あの場所に残されていた『アルス』を救いたいという願いが。


『メイ』が探していた『使命』も本来は『アルスとの再会だった』と考えることもできますね。


(『メイ』という名前は冥王星から来ていると推測できます)

(彼女はヒロトとイヴが生み出した存在であることを示唆しているかと) 


(この物語はヒロトが失われた冥王星を見つけるまでの物語とも言えます)


 あと『イヴ』に関しては『古き民』としての記憶がかなりあると推測できます。それは彼女が言った『奇跡』という言葉が『古き民』が『GBN』に辿り着いたことを示唆していると思われるからです。


 他にも『エルドラ』の存在を示唆するような表現もありますし、『サラ』を妹と言ったのも古き民の時代に彼女が『妹』であったと推測できます。


(サラの方は完全に再現されずに記憶が失われてる状態です)


 だからこそ躊躇わずに助けたのでしょうね。自分が消滅することによって『新しい命』が生まれることも理解していたと思われます。


『サラ』を除く今いる『ELダイバー』も『イヴ』の系譜と言えるでしょう。そう考えると前回のときに例え『サラ』を殺したとしても、『サラ』の系譜の『ELダイバー』が増えるだけでまったくの逆効果だったとも考えられます。


『GBN』を守るための行動が更に『GBN』を破壊することになっていたかもしれないという皮肉。何が最善だったのかなんて後から考察することでしか分からないわけです。


 最善だと思っていた選択が最悪へと変わる。

 それもまた世の常です。


 ちなみに『イヴの因子』をもっとも多く受け継いだのは『ヒロト』であると推測できます。作中で彼がイヴの幻影を見るのは彼の中に『イヴ』がいるからであり、アルスが最後に『ヒロト』に『イヴ』の姿を重ね合わせるのもそのせいだと思われます。


(ここは本来ならメイやサラに幻影を重ねるのが正しい表現です)

(ですが、二人には古き民の因子がほとんど残されていないと考えられます)


(そのためヒロトの中に残されたイヴの因子にだけ反応したのかと)


 こうして一部を切り取っただけでもかなりしっかりと作られた作品です。『ネプテイトガンダム』を戦わせないというのも作品を理解しているからできることですね。


 ガンプラアニメとしては戦わせないと行けないわけです。ガンプラ売れねーから。

 でも、『ネプテイトガンダム』に関してはそれをしてはいけない。


 なぜならば、『ネプテイトガンダム』は『イブとの約束を果たすため』ためのアーマーであり、戦うためのアーマーではないからです。


 視聴者もそれを理解しているからこそ、宇宙に上がるというだけのシーンであれだけ感動する。あれもまた果たされるべき『約束』だったからです。


 他にも『カザミ』が独り善がりの正義だった『ジャスティスナイト』から誰かを守るための『イージスナイト』に乗り換えるとか、こういう細かい部分にも丁寧に伏線を張っているのが凄いですねー。


 前半部分があるからこそ、後半部分で彼ら四人が『主人公』に成れるという構図も凄い。あのとき命を賭けてまで戦えるのは、あの時間を過ごした彼らだけだったわけです。『13話』とか初めて視たとき背筋がぞくぞくして凄かったですよん。


『カザミ』が『エルドラ』に行くボタンを押すときの台詞が同じなのに、その中に込められた意味がぜんぜん違う演出も凄いですね。


 こんな感じで掘り下げようと思えばもっと掘り下げられますが、文章を書くのも大変なのでこの辺りで。あまり書き過ぎると無粋でもありますし。


 さて、全体的にとても優れた作品でしたが、後半部分が少し詰まっていたのだけ難点ですね。

 

『エクスヴァルキランダーの活躍が少なかった』とか。

『カザミの神童設定』や『パルの王位継承設定』とか。


 この辺りがちょっとさらっと使われてしまいました。

 ここをきちんと掘り下げる尺があれば、もっと面白い作品になったのに残念です。


 あと『カザミの父親』っぽい後姿が何度も出てきましたけど、けっきょくのところ良く分からないまま終わったので謎の伏線ですね。


(最初は父親が死んでる設定かと思いましたが、言及されていないので生きてる?)

(あるいは掘り下げようとしたけど、尺が足りなくなってカットされた部分かも)


『エクストラリミテッドチェンジ』も合体したとこで終わったのが残念。

 できればもうちょっと動くシーンを見たかったです。プラモで再現じゃー!


 アーマーの数が多過ぎて『見せ場』はあるんだけど、『活躍シーン』が少ないという問題もあります。一番割りを食ったのは『ヴィートルーガンダム』ですね。初登場で『見せ場』が無かったため、一番微妙なアーマーになってしまいました。


 他にも『24話』の戦闘シーンが盛り上がりすぎて、『25話』の戦闘シーンがあっさりしてしまったという問題もあります。


 ただこれは『ゲーム』と『実践』の違いもあるため、ある程度は仕方が無いでしょう。その分、『26話』で再び盛り上げたわけです。


(ゲームの中でチャレンジした数だけ彼らが生き延びる確率が高くなりました)

(成功率がかなり高い状態で任務に挑んだのですから、ある程度は楽なわけです)


 このように作品の完成度としては完璧とは言えません。

 ただそれを上回るものを見せてもらったのも事実でしょう。


 小生にとっては欠点もあるけど最高の作品でした。物語がさらっと語られるだけではなく、その中に複雑な感情が込められてるからこそ、視ている人の心も動くというわけですよん。これ、『小生小説講座最上級編』です。


 さて次は『ガンダムビルドダイバーズ バトローグ』です。

 個人的に視たいのは『新旧主人公 対 チャンピオン』ですかね。


 いやもう『チャンピオン』が強過ぎてそのぐらいじゃないと勝負にならないという。出来れば一対一で勝って欲しい気がしますが、今の状態だと無理でしょう(汗)


 あと『ビルドダイバーズ 対 ビルドダイバーズ』とか。

 まあ、これは本編で少しやったのでやらないかもしれませんね。


 他にもヒロトが『エルドラ』に因んだアーマーを作る話とか。

 やれることはたくさんありますけど、どうなることやら。


 個人的には『あれ』が帰ってきて守る話をやれれば、物語的にも完璧だと思いますが、たぶん今回はそこまで踏み込まないでしょう。


 やるにしても『アイランド・ウォーズ』みたいな形になるでしょうね。過去に攻めてきた敵の話は放置してあるので、その辺りを再利用するかもしれません。


『サラ』が『エルドラ』を訪問する話ぐらいはやるかもしれません。うーん、まだまだ掘り下げられるのでいろいろやって欲しいですがどうなることやら。


 どちらにせよ『ガンダムビルドダイバーズ』のシリーズはいちおうこれで終了でしょう。今回のシリーズは『ダブルオー』がテーマだったので、次は何になるかな。


『鉄血』だとガンプラバトルで成り上がる話になりそうですね。

 うーむ、微妙にありえそうだな(笑)


『ガンダムW』だと少年たちがチームを組んで戦う話かな。

 これも微妙にありそうですね(汗)


『ユニコーン』だとガンダムバトルをしながら謎を追う話ですね。

 これまた微妙にありそうな気がします(汗)


 何でも作れるじゃねーか。

 まあ、基本的にガンプラバトルさえしてれば『ガンプラアニメ』ですし。


 その辺りの懐の広さが『ビルドシリーズ』の良いところですね。

 作品に統一性はありませんが、それが様々な面白さを作り出す。


 だからこそ今回のような作品も作り出せたわけです。そもそもガンプラアニメで『異世界召還』をやりましょうという発想があれですね(笑)


『ガンプラバトルじゃねー』


 というツッコミが起きるガンプラアニメでした(汗)

 まあ、面白ければ何でもいいのさ。


 でわでわこの辺で。

 まだまだやることが多い小生なのでした。


<楽しい時間を有難うございました(ぺこり)>  

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