読書感想文『リビルドワールドII(下)』(ネタバレ)

 初っ端からフルスロットルでワラタ。

 開始数ページで死に掛ける主人公も珍しいですね(笑)


(『トラック』は例外ということで)


 普通だったらもうちょっと導入部があるのに、いきなり戦闘シーンをぶっこんで来るのは『リビルドワールド』らしいと言えばらしいですけど。


 この辺りから戦闘シーンのレベルがぐーんと上がって、『鬼滅の刃』のように死闘が通常運転になります。戦闘シーンもめっちゃ派手になるので、アニメ化したら大変そうですね(笑)


『もうよく生き残れたな』という感想です。

 死闘、死闘、死闘。という悪夢の三連戦ですから。


 内容が濃すぎですね。一つでも面白いのにそれが続くのだから『最初のクライマックス』という感じです。これを切欠に戦闘シーンはどんどん派手に面白くなっていくのだから素晴らしい。グレートだぜ(古)


 敵役のキャラクターも良いですね。きちんと何を考えて行動しているか描写しているので、何となく戦闘が終わるのではなくそこに『理屈』があります。


『実力』と『理屈』と『運』というのが『リビルドワールド』の戦闘を支える三大要素でしょうか。この三つを上手く掛け合わせているので、戦闘シーンにも厚みがあるのかなーと思います。


 変わって後半は主人公である『アキラ』の心境を中心に語られていきます。前半と違って地味な展開ですが、こういう部分をきちんと描いておくと読者に『行動理由』がしっかりと伝わり、共感を得られ易くなります。


 アキラにとってお金とは『自分の命』そのものです。

 命しか賭けるものがない少年が命を賭けて得たもの。


 それを何の理由もなく理不尽に奪われることは『命を奪われるの』と同じことです。そのことを微塵も理解できない『ルシア』は平然と金を奪い、『カツヤ』は奪われた方が悪いと言います。


 それはおそらく悪気の無い行為です。

 ですが、その行為がその人間の『尊厳』を奪う行為だと彼らは気付いていません。


 ゆえに『アキラ』は行動しようとします。

 相手の理屈に合わせて。奪われる人間が悪いのだと。


 それを止めたのが『ユミナ』の当たり前の行動です。でも、その当たり前の行動ができないのがこの『リビルドワールド』という世界観でもあります。


『カツヤ』の言ったことは、見方を変えれば『リビルドワールド』という世界の常識です。けっして間違っている言葉ではありません。


 ただ弱者である『アキラ』はそれを肯定したくはない。

 弱者であることが『この世の全ての悪』であって欲しくはないわけです。


 まあ、だからと言って彼自身が弱者に優しいわけではありませんが、少なくとも自分から理不尽をばら撒きたいわけでもありません。


 ただ『アキラ』の中に『脅し』とか『交渉』という言葉がほとんどなく、『脅す』相手は彼にとっていつかそれを『やる相手』なのです。


 だから、先手を取って先に殺してしまいます。

 特に自分よりも上の人間に対しては容赦はしません。


 一見、理不尽に見えるかもしれませんが、『アキラ』には『アキラ』なりの行動理由があるわけです。それを冷静に解析している恐ろしい存在が『アルファ』です。


『アルファ』の目的は単純に『アキラに自分の目的を叶えさせる』というものなので基本的には協力的ですが、彼が自分の目的を達成できなくなるようなことをするのを極端に嫌います。


『カツヤ』には『カツヤ』なりの『行動理由』があるのですが、彼の場合は味方には優しい人間ですが、敵は基本的に見下しているため、そのギャップから読者にめっちゃ嫌われてるわけです(汗)


 まあ、味方というのも基本的には『自分が保護する対象』ぐらいに考えているので更に人間関係が複雑になっている状況なのですががが(大汗)


『ユミナ』も今回は『アキラ』の心境を変化させるような行動を取りましたが、彼女の場合は『アキラ』のことを考えているわけではなく、あくまでも『カツヤ』のための行動です。おそらくそれが今度の『鍵』になるのかなーと推測。


 それにしても『ユミナ』が優秀になればなるほど『カツヤ』がアホに見えるため、WEB版より『カツヤ』の扱いが酷くなってますな。忠告されても変わらないのが『カツヤ』というキャラクターの最大の問題点なのでしょうががが(汗)


『ルシア』に関してはWEB版と名前が違いますが、詳細不明。

 たぶん『ア』の付く名前が多すぎた問題でしょうかね。


 そもそも普通はレギュラーキャラの名前はなるべく被らないように作るものです。これは単純に読み手が読み難いからです。『アキラ』と『アルファ』も連呼されるとけっこうややこしいですしおすし。


 そして、変わったのは名前だけではなく、WEB版で重要だった一文が消失してます。それによって彼女がこれから辿る道が(今のところは)WEB版とは違うことが示唆されています。


『ユミナ』に関しては『なぜWEB版と扱いが違うのか』という理由が何となく見えてきましたが、また新たに扱いが違うキャラクターが出てきたことにより先が読めなくなりましたね。


 でも、そのおかげで『次を早く読みたい』と思えるようになりました。

 これは作者の手のひらで転がされてますな。ちくしょー(笑)


 ゲームのマルチエンドみたく『ルート自体』が変わる可能性もありますし、変化しても『同じような結末に収束する』という可能性も考えられます。


 どうなるんだろうねー。わっかりません。

 当たり前です。作者のみぞ知るです。


 あと面白かったのはやはり『食事シーン』ですね。

 ここのイラストもめっちゃ良い。分割してあるとこに拘りを感じます。


 イラストで『アルファ』がぽかーんとしてるのも好きです。彼女は『アキラ』がなぜそんなに『幸福』を感じてるのか理解できてないんですよねー。


 アキラの『目的』というのは実はめっちゃシンプルです。

 それは『当たり前の生活を送る』ことです。


 安全な家に暮らし、お風呂に入って、美味しい食事を食べて、安心して眠る。

 一方的に奪われる存在ではなく、交わした契約はきちんと守られるべきである。


 彼にとってそれを得る手段がハンターになることであり、アルファと契約することだったわけです。


 そのため、風呂に入って喜ぶし、自分の家を手に入れて感激するし、美味しい食事を食べれば幸福に浸れる。それこそが『アキラ』が求めていたものだからです。


 そういう部分もしっかりと描写してるのは良いですね。

 全体的に今後の期待が高まった巻でした。


 あ、書くの忘れてましたが、最初にカットされた『300オーラム』の話がなぜか回想シーンとして復活してました。やはり唐突感があるので、最初に書くべきシーンだったと思いますが、完全には否定できない部分もあります。


 今回の『スリ』のシーンとの分かり易い『対比』として使用されたからです。これは『アキラ』が『あの頃』とは違うというのを読者に伝え易くするための手法であると推測できます。


 あるいは『アキラ』が『善行』を委託したことによって運が巡って問題が解決したという見方もできるでしょう。何となく『シェリル』を手助けしたことが結果として彼に幸運を齎したということです。


 それは必ずしも『問題の解決』に暴力が必要ないということでもあります。

 ただ今のところ『アキラ』自身はそのことに気づいていません。


(もっとも今のところアキラにとって最大の力が『暴力』であることは確かです)

(『権力』などの後ろ盾が無いからこそ彼は『暴力』に頼るしかないのです)


 まあ、やはり『今更』という感じはどうしても残るので難しい表現だと思います。

 でも、『構成』としてはけっこう面白いかなーとも思いました。


 最初は『アルファ』の力を借りて相手を殺さなければ守れなかったのに、今回は『アルファ』の力を借りずとも運が良かっただけで、誰も殺さずにあっさりとお金が戻ってきたという何とも言えない皮肉的なお話。


 まあ、小生としては『スリ』の結末が変わったことによってアキラの『殺伐感』が減ったのがちょっと残念ですかね。あの『敵には容赦しない』って感じも好きです。


 後はレイナとの『回復薬』の会話が無くなってしまったのもちょっと残念。個人的には『アキラ』の立場(考え方)が理解できる文章なので好きだったのですが、構成の変化によりカットされてしまいました。切腹(ネタが古い)


 イラストに関しては『ケイン』がめっちゃ骨で、『キバヤシ』がラスボスみたいな容姿でした(笑)


 いや、『キバヤシ』は競馬好きのおっさんみたいな容姿だと思っていたのでかなり予想外でしたね。作中で容姿について描写あったっけ。後から読み直してみるかな。


『ネリア』はイメージ通りで、『ルシア』もだいたいこんな感じで読んでいたような気がします。『カナエ』のイラストが無かったのは残念です。次回に持ち越し。


 武器のイラストも『重装強化服』のイラストがあるのは嬉しいですね『ケイン格納時形体』のイラストもあるのでこの辺りの設定はきちんとしているのでしょう。


 ぱっと書ける感想はこのぐらいかな。短編に関しては本編の補足ですね。あまり新しい情報はありませんが、違う角度の物語なので面白かったです。


 えーと、巻末に次回予告があるので打ち切りは回避されたようです。

 アニメ化はもっと売れないと厳しいですかねー。

 

 今回の内容をアニメ化できれば良い宣伝になると思うのですががが。

『鬼滅の刃』が爆発的に売れたのもアニメ化してからですからね。


 おそらく『アニメ化』という宣伝に対する各出版社の態度も変わってくるのではないかと思います。『良い作品で良いアニメを作れば売れる』というのが一つの方程式になるのではないでしょうか。


 短いCM用のアニメでも面白かもしれません。

 

 後は書籍版がWEB版と違うルートになるとしたら、『作者の負担』がどうなるかですね。WEB版と書籍版を違う展開にした『陰の実力者になりたくて!』はWEB版の更新が止まってしまいましたし。


 共倒れになることもけっこうあるんですよねー。そういうこともあるので、なるべく WEB版と同じで書籍化した方がいい』というのが小生の考えです。


 でも、『リビルドワールド』に関してはWEB版では見られなかった『もしも』が見れるかもしれないという期待もあります。


 うーむ、なかなか複雑な心境です。

 どうか打ち切りにだけはならないようにと願っております。


 マジデ。


<完>

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