『君の名は。』考察編(超ネタバレ)

 いつもの妄想コーナー。

 今回は『君の名は。』本編から読み取れたことを中心に書いていきます。

 小説版(別)の話はまた別の機会に。


 まあ、確定情報が少ないので、ほぼ全てが『推測』になりまう。

 いつも通り『読み取り方の一つ』ということで。


 でわーでわー。


――――



<基礎設定>


 まず『君の名は。』という作品は『運命肯定』の物語です。

 例え『入れ替わり』という現象が起きたとしても、それを含めて『運命』であるというのがこの物語の世界観になります。


『立花 瀧』と『宮水 三葉』が時間軸のズレに気付かないのも、通常の『入れ替わり』では『運命』を変える事はできないからです。推測するならば『宮水 三葉』だけの力では『世界(運命)を書き換えるだけの力が無い』という考え方もできます。


 あくまでも通常の『入れ替わり』というのは『二人の人間を繋ぐだけの力』であり、『運命を変更する力』ではありません。


 ですが、『口噛み酒』を利用した『入れ替わり』だけは例外として描かれています。『立花 瀧』は全ての記憶を保ったまま、自分の望んだ地点の『宮水 三葉』と『入れ替わり』を行い、過去を大きく(あるいは小さく)改変してしまいます。


 過去は変えられる。それに伴い現在と未来も変化する。

 つまり、『運命否定』になります。


『君の名は。』という物語が複雑化しているのは、この『運命肯定』と『運命否定』という二つの要素が入り混じっているからです。


 通常の『入れ替わり』では、運命を変えるために必要なことは何もできません

 覚えていない。思い出せない。認識できない。

 物語は運命に導かれるまま『あるべき場所』へと進んでいきます。


 おそらく視聴者が『矛盾』を感じるのはこの部分でしょう。

 もっと簡単に『運命を変えられる』はずだと考えた方も多いはずです。


 ですが、この物語は『運命肯定』であるため、過去も未来も変化させる行動はできません。『宮水 三葉』が『組紐』を渡すことも、『立花 瀧』が全てが終わった後に『糸守町』のことを思い出すのも、『運命』に導かれた必然なのです。


 ですが、たった一度だけチャンスが訪れます。

 生と死。過去と未来。運命すら形を失う時間帯。


 それが『カタワレ時』というわけです。



<なぜ過去が改変できたのか?>


 神様パワーです。

 終わり(笑)


 そういうのは簡単ですが、過去が変化する予兆として、現在が変化した部分が作中でもはっきりと表現されています。


 それはスマホに残された『日記』です。

『日記』が失われたことを皮切りに、彼の記憶も曖昧となっていきます。


 これは明らかに『立花 瀧が糸守町のことを知った』ために起きた現象でしょう。

『入れ替わり』が行なわれなくなったことにより記憶が消失していくというには、タイミングが変です。


 ではなぜそれが『入れ替わりの記憶』を失われる原因となったのでしょうか?


 それはこの時点で『新しい運命の可能性が生まれた』からだと推測できます。

 あるいは『タイムパラドックス』が発生した影響とも考えられます。


『口噛み酒』を利用した『入れ替わり』は、通常の『入れ替わり』とは違い『運命に干渉できるほどの現象』です。


 ですが、『運命に干渉する』というのは『確定している世界』が変化することと同じです。過去が変化し、現在が失われ、未来が揺らぎます。


 その現象の中心である『立花 瀧』が真っ先に影響を受けた結果が、劇中の現象であると推測できます。過去を変えるために、彼の過去そのものが揺らぎ始めたわけです。


 絶対的だった過去と未来が入り混じり、『今』という一瞬が訪れます。この一瞬だけ世界は『運命』の干渉から逃れ、逆に『運命に干渉できる』状態となったわけです。その影響がもっとも強くなる時間帯が『カタワレ時』というわけです。


 もっと深読みするならば、『宮水神社』の歴史そのものがこの『今』という一瞬を作り出すために紡がれたものだったとも考えられます。様々な儀式で『神様パワー』を貯めていたわけです。


 つまり、『神様パワー』なのです。

 終わり。



<なぜ二人が再会できないのか?>


 全部『監督』のせいです。

 間違いありません(笑)

 

 そちらの方が盛り上がるという判断でしょう。

 実際、『悲恋感』があってちょっと盛り上がったと思います。


 再開しそうな二人がなかなか再開しないというのは『韓国ドラマ』でけっこう見かける手法で、恋愛的に『ドラマチックな演出』なのかなーと思います。


 ただ作中の表現を見る限りでは、『立花 瀧』はあの時まで誰とも再会していないようです。これは偶然で片付けられる範囲ですが、ちょっと不自然と言えば不自然かもしれません。


 むしろ『目覚めた後すぐに再会した』としても、展開としては不自然ではありません。あそこは『宮水神社』関連の場所ですから、偶然訪れていたとしても不思議ではありません。『物語の演出的』にはこちらの方がより自然と考えることもできます。


 ならば『監督の好み』を別として、『なぜ出会えないのか?』という理由を考えて見ましょう。

 

 この物語は『運命肯定』です。

『新しい運命』が構築されたとしても、それは変化しません。


 つまり、『立花 瀧』が誰とも再会できないのは、そういう『運命』だからです。

 これは『監督の好み』という意味ではなく、『世界の変化』を最小限にするための『運命』であると考えることができます。


 そもそも『二人が出会う運命』は本来存在しません。

 なので、例え生きていたとしても『出会えない』というのが在るべき運命です。


 逆に言えばその運命に干渉した『理由』があると推測できます。



<なぜ二人が再会できたのか?>


 神様パワーです。

 半分嘘です(笑)


 推測できる理由は二つあります。

 

 一つ目は『手の平の線』


 この線自体に意味があるわけではありません。

 重要なのは全てが終わった後にも『残っていた』ということです。

『入れ替わりの記憶』は失われますが、全てが無くなるわけではないという証です。

 

 二つ目は『組紐』


『口噛み酒』に魂の半分が宿るように、この『組紐』にも魂の一部が宿っていたと考えることができます。むしろ作中の描写を見る限りでは、この『組紐』の力も利用することによって『運命に干渉できる入れ替わり』現象を起こしたと推測できます。

 

 ここで重要なのは『誰の魂が宿っているのか?』ということです。

 

 それはこの『組紐』の所有者である『宮水 三葉』だけではなく、譲渡された『立花 瀧』の魂も宿っていたと考えられます。


 つまり、この『組紐』こそが『二人を結ぶ絆(魂)』そのものであり、『運命に対抗するための残された力』ということになります。


『宮水 三葉』がいきなり『組紐』を渡すのは『不自然なシーン』ですが、彼女がそれを渡すことによって『繋がり』ができるということを無意識に知っていたと考えるならば、また出会うための手段だったと考えることができます。


 一つ目の要素により『お互いを(無意識に)知っている』という状態を維持しながら、二つ目の要素により『出会う運命』を手繰り寄せることに成功します。


 その二つのどちらかが欠けていたならば、『出会えない』あるいは『出会ったとしても気付くことができない』という状況になっていたわけです。


 例えばお互いの姿を目撃したとしても、結局はすれ違ってしまうという展開もあったわけです。『運命への影響』を考えるならば、こちらの方が自然の展開でしょう。



<君の名は。>


 名前というのは『存在』であり『認識』です。

 誰かの名前を知るということは、その誰かがいるということに気付く行為です。


 二人が『入れ替わり』という現象に気付いたのも、互いの名前をはっきりと認識したからです。他者の存在を知ることによって、『一人の夢』が『二人の現実』となったわけです。


 そして、二人はお互いの名前を忘れてしまいます。

 名前を忘れてしまえば『存在』を『認識』することはできません。


 物語の最後に二人は問い掛けます。


『君の名前は?』


 その答えは作中では語られません。

 なぜなら、互いに名前は知らなくとも、すでに知っているからです。


 ですが、『問うこと』に意味はあります。

 

『君の名は。』という題名に丸が付いているのは、『君の名は』と問うことにこそ『意味』があるという風に解釈しました。


 それが『人と人の関係性の始まり』だからです。


 名前を知ることにより、顔の無い誰かを人として認識する。

 名前を忘れることによって、かつて共にいた誰かの存在も失ってしまう。


 ですが、名前はあくまでも名前に過ぎません。

 

 名前すら思い出せない誰かと遊んだ遠い記憶。

 題名すら忘れてしまった懐かしい物語の記憶。

 

 例え相手の名前を失ってしまっても、全てが失われるわけではありません。


『お前は誰だ?』


 同じ名前を求めた行為でも、『最初の問い』と『最後の問い』はまったく違うものです。


 君の名を知り、君の名を忘れ、君の名を求める。


 これはそういう物語だったわけです。



―――


 

 長いので分割します(爆)

 でも、大きな考察はこのぐらいかな。


 後は細かい部分の考察を。

 たぶん気楽に読める内容になると思ふ。


 思ふだけですけど(汗)


<つづきゅ>

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