書籍版『光のお父さん』 感想(ネタバレ)

 齢60を超えるゲーム好きの父親に、オンラインゲームをプレイさせるブログ企画の書籍化。本屋でちらりと見て 面白そうである、と思った。


 正直、購入するかはとても悩んだ本だった。

 一度は購入するのを諦めた。


 その理由は単純で、『値段が高い』のである。

 1800円(税抜き)というお値段。

『騎士団長殺し』と同じぐらいの値段だった。


 小生は思った。

『1200円(税込み)だったら買ってたな』と。

 

 気が向いたら、ネットにあるやつを読もう。

 小生は本屋を後にし、そのまま忘れた。


 それからしばらくして、小生は再び『光のお父さん』と出会う。

 それは『TVドラマ化』のための宣伝であった。


 小生は少しだけ内容を知り、『面白いやんけ』と思った。

 だが、そのまま三十分ぐらい悩んだ。


 行ったり来たり、とおそらく店員は小生が万引き犯だと疑っていたかもしれない。そのぐらい不審人物だったが、いつものことであった。


 最終的には購入することを決意した。

 買わないで後悔するより、買って後悔しろ。

 本を買うのは冒険なのだ。

 迷ったらゴーなのである。


 しばらくして、小生は『光のお父さん』を読み終えた。

 自分でも意外なのだが、ちょっと泣きそうになった、

 

『息子』の気持ちも理解できる。

 自分の好きな世界で楽しんでもらいたい(特典も欲しい)。


『父親』の気持ちも理解できる。

 初心者がオンラインゲームを始めることは、何となく恥ずかしい。


『ゲーマー』の気持ちも理解できる。

 難しいことに挑み続けて、達成したときの充実感。


 小生にはこの作品の中にある様々な感情が理解できて、読み終えた後に『買って良かった』という気持ちになった。


 小生も多少はオンラインゲームをプレイしたことがある。

 だが、自分とは合わなかったため、現在は全て引退している。

 この作品の題材となっている『FF14』もプレイしたことが無い。

  

 それでも少しは理解している。

 オンラインゲームを楽しむことの難しさを。

 

 この作品に描かれているのは、けっして『初心者』の『珍道中』を笑ってやろうという気持ちではない。『一緒に遊びましょう』。たぶんそんな気持ちだったのではないかと思う。


 多くの人々が初心者である『お父さん』を支えた。

 その結果、『お父さん』はオンラインゲームを楽しむことができた。

 

 それを『接待』と呼ぶ人もいるかもしれない。

 そんなの『お膳立てされた面白さ』だと怒るかもしれない。


 でも、小生は違うと思った。


『自分の好きな世界を訪れる新しい住人を祝福する』


 それもまたオンラインゲームの楽しみ方なのだ。

 そして、その祝福された住人はまた別の誰かを祝福していく。

 そうした『繋がり』もオンラインゲームの魅力なのである。 


 まあ、新規さんが入ってこないとサービスが終了してしまう、という切実な理由もありますけど(汗)


 初心者を騙そうとするプレイヤーもいますし、プレイヤー同士が言い争いをすることもふつーにあります。初心者にそのオンラインゲームを楽しんで貰いたい場合、多少過保護でも『案内人』の存在は必要なのです。


 むしろそういう『案内人』がいる方が幸運なんですよねー。

 逆に言ってしまえば、そういう人がいないと、初心者の内に辞めてしまうことが多いということになります。きびしー世界なのです。


 ちなみに『書籍版』を読んだ後、『ブログ版』も読みました。

 書籍版の方が『FF14』をプレイしたことが無い方向け。カット版。

 ブログ版の方が『FF14』のプレイヤー向けの内容になっています。本来の形。


 書籍版は内容が短めで、話を再構成したため、多少繋がりに違和感がある部分もありますが、読み易く分かり易い。


 ブログ版はボスの攻略方法などのネタバレが多めですが、プレイしたことがある方ならば、より共感できるような内容となっている、のではないかと思います。


 正直な話、いろんな人が『ゲーム』という言葉に良くない印象を持っています。

 特に『オンラインゲーム』や『スマホゲーム(ガチ)』に向けられる視線は、けっして暖かくありません。


 ゲームをするなんて無駄だ、とゲームを引退した人は呟きます。

 真剣になって馬鹿みたい、と言われることもあります。

 もっと有益なことに時間を使えよ、と呆れる人もいました。


『ゲームをプレイした時間は人生にとって無駄な時間』


 それが彼らの結論です。

 それは正しいかもしれません。


 でも、本当にそうだろうか。

 小生は考えます。


 確かに手の中には何も残っていないかもしれません。

 敵を倒すために努力した時間は、ゲームが終わってしまえば無駄になります。


 でも、目を閉じれば、思い出せる記憶があります。

 努力したこと、悔しかったこと、嬉しかったこと、くそげーと叫んだこと。  

 それらの記憶は、なぜかふとした瞬間に浮かび上がる大切な思い出です。

 

 この『光のお父さん』という作品も、誰かにとってのそういう記憶なのだろうと感じました。小生もそういう記憶を持っているからこそ、この作品が面白いと感じたのだと思います。

  

 まあ、『FF14』をプレイしようとは思わんけどな(きっぱり)

 小生は自分が物語の主人公になるのではなく、物語の主人公を遠くで応援している方が合っているのです。


 この本を楽しんだように、ね。

 

<闇の小生さん>

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