読者はなぜその作品を選ぶのか?

 前回の続きの発展系のお話。

 作者のことは『あれ』ですが、読者のことは『これ』なので、それなりに実地に基づいたことが書けるわけですよよよ。


 さて、小説というのは毎月出版されるわけで、『ライトノベル』『ライト文芸』『一般文芸』という区分をひとまとめにすれば、一月でかなりの量の作品が出版されます。本が売れねー売れねーって言っているのに、大量に出版しているのはどういう理屈なのか知りませんが、昔より売れてねーらしいですよ。


 という話はさておき。

 小生が『新シリーズ』『ファンタジー』『ライトノベル』という範囲の作品が読みたくなり、仮に一月以内に販売された作品に限定するという条件を設けたとします。


 ですが、その条件でも五六冊の候補作が見つかるでしょう。

 そして、その中から購入するのは一二冊ぐらいですな。他の作品は購入されることなく、本棚へと戻されます。


 では『読者(小生)はなぜその作品を選んだのでしょうか?』


 一番多い答えは『その作品が自分の好みだから』だと思います。

『題名と表紙とあらすじ』、もしくは『その他の何か』が読者にその作品を『好みである』と判断させる材料となったわけでふね。


 はい、今回取り上げる議題は『その他の何か』です。

 それは『その他』と言ったように、様々な要素ですが、今回はその中でも『作品の特徴』という要素を取り上げたいと思いましゅ。


 例えばファンタジー作品の定番と言えば、『剣と魔法の世界』『エルフやドワーフなどの種族』『魔物』というようなコテコテの世界観ですが、これらの世界観は今も使用されているメジャーな世界観です。


 WEB小説ファンタジーの多くは、このコテコテ世界を使用して作成されています。ですが、それをそのまま使用するのではなく、過去の作品との差別化を図るために、『異世界転生(召還)』『チート』『冒険者ギルド』という要素を加え、WEB小説ファンタジーという新しいジャンルになりました。


 これが『作品の特徴』です。

 つまり『書籍化ファンタジー作品』に対して、WEB小説ファンタジーは『別の特徴』を付加することによって、読者を確保したわけです。


 ですが、このWEB小説ファンタジーが多く作られるようになると、今まで『作品の特徴』となっていた要素が効力を失い、それが普通の作品となってしまいます。そこでまた『別の特徴』を加えて、他の作品との差別化を図るわけでございます。


 というような感じで作者様は『作品の特徴』を出すためにいろいろと工夫するわけですが、これは別の言い方をすれば、その『作品の武器』という言い方もできます。商売用語なら『セールスポイント』ですね。


 この世界には無数の物語があり、ある一つの作品を取り上げても、『似ている作品』というのは必ず存在する、と言ってもいいでしょう。


 例えば小生が『ソードアート・オンライン』を読んだとき、『クリス・クロス』という作品との類似点に気付きました。これは小生だけではなく、他にも指摘する読者はいました。中には『パクリ』であると断言する読者もいたぐらいです。


 これはあくまでも個人的な意見ですが、この二つの作品を比較した場合、似ている部分はありますが、それぞれが『表現した世界』は違うものだと思います。それが何なのか、というのはここでは言及しませんが、それぞれが『別の特徴(魅力)』を持ち合わせている作品なのです。


 そして、この『別の特徴』というのが重要であり、作品をヒットさせるための重要な要素となります。無数(あるいは少数)の似たような世界観を持つ作品から、自分の作品を目立たせる(読者に読ませる)ためには、他の作品(比較される作品)には無い『作品の特徴』を確立させなければならないわけです。もしくは勝つ特徴。


 これまた例に挙げますと、『ゴブリンスレイヤー』という作品がありまして、この作品の世界観はコテコテのファンタジー作品です。


『TRPG世界観』と『魔法の回数制』という二つの要素を加えていますが、両方ともそれほど珍しい(強い)特徴ではなく、それだけで他の作品と対抗することは難しいでしょう。


 でも、この『ゴブリンスレイヤー』は多くの読者が読まれています。

 それはなぜかと言うと、この物語は『ゴブリン』とそれを狩る『ゴブリンスレイヤー』という二つの珍しい要素を中心にした物語だからです。


 WEB小説ファンタジーでも『ゴブリン』という存在は最初の敵、言うなれば雑魚として描かれます。それっきり『ゴブリン』の存在が物語の中に登場しない作品も多いです。


 でも、物語の世界から『ゴブリン』が絶滅したわけではない。

 では、物語の主人公たちが『ゴブリン』を倒さなくなってから、その世界はどうなったのか?


 というのが『ゴブリンスレイヤー』という『作品の大きな特徴』です。コテコテのファンタジー世界を使用しながら、語られる物語は他の作品と違う『別世界』なのです。


 まあ、この『特徴』が読者に受けるかというのはまた別問題ですが、この『ゴブリンスレイヤー』という作品は今のところ読者に受け入れられています。現状では他の作品と比べられることも少ないのではないか、と考えられます。


 まあ、こんな感じで『作品の特徴』というのは、けっして他の作品とは違う世界観ということだけでありません。同じ(似たような)世界観を共有しながら、違う世界を描く。これも立派な『作品の特徴』です。


『シェアワールド』なんかはまさにこれでしょう。

 作者様が共有世界観に『どんな特徴』を付与するかによって、その世界が変化するのです。『作品の特徴』というと難しいと思う作者様もいますが、それはどんなことでも良いのです。


『キャラクターが魅力的』

『文章が上手い』

『作品の構成力に優れている』

 

 こういう要素も『作品の特徴』であり、キャラクター小説では『キャラクターが魅力的』という特徴が一番重要視されることも多いです。


 もっとも『小さな特徴』だけではヒット作を作るのは難しいので、やはり『大きな特徴』というのが必要にはなります。どれがどの特徴かというのは面倒なので終わり。自分の好きな作品でも分解して各自勝手に考へまそう。またなげーのよ(泣)


 結論。


『自分の作品の特徴を挙げることができますか?』

『そして、その特徴は他の作品に負けていませんか?』

『ついでに、読者がその特徴を面白いと感じるでしょうか?』


『特徴』であり、『武器』であり、『作品そのもの』であるナニカ。それは、読者が作品を選ぶための目印となるのです。そして、それには他の作品を押しのけるほどの力が必要となります。


 その点、『小生とカクヨム』は間違いなくオンリーワンです。

 もはや並ぶ相手もいなければ、競う相手もどこにもいない作品。


 つまり、誰も望まぬ方向へと進んでいるわけですね。

 独創的なら何でもいいというわけじゃない、という良い例なのです。

 マネされる作品というの魅力的な作品なんですよーというお話。


<ランク外>

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