素直になれない黒ヤギさんと明日も愚直な白ヤギくん

伊澄浩一

童話

 黒ヤギさんが病気で入院しました。


 白ヤギくんは病床の黒ヤギさんに会いに行きました。


 だけど、黒ヤギさんには会わせてもらえませんでした。

 聞いた話では、なんでも難しい病気とのことでした。


 なので、白ヤギくんは病床の黒ヤギさんに手紙を出しました。


 黒ヤギさんは白ヤギくんの手紙を読みました。

 だけど返事は出しません。


 次の日も白ヤギくんは黒ヤギさんに手紙を出しました。


 次の日も次の日も。


 例え返事がなくても、彼は手紙を出し続けました。


 白ヤギくんが書く手紙はたわいない話題がほとんどでした。

 それでもその手紙は彼が一生懸命考えて書いたものでした。





 ある日、彼の前に黒ヤギさんのご両親が現れました。


 ご両親は白ヤギくんに紙の束を渡しました。


 それは黒ヤギさんが書いた手紙の束でした。


 その手紙達には何度も消して書き直した後があって。


 確かに黒ヤギさんが一生懸命考えて書いてくれた跡があって。


 白ヤギくんは涙を流しました。


 その涙のせいで、白ヤギくんは手紙がしばらく読めなくなりました。


 だから彼はお手紙を書きました。


 白ヤギくんは黒ヤギさんのお墓の前に手紙をおきました。


 彼の思いが届くように。



おしまい

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素直になれない黒ヤギさんと明日も愚直な白ヤギくん 伊澄浩一 @izumi_kouichi

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