* * * * * *

「いいや、こいつも違うね」

帽子屋は独りごちた。日向有栖――いいや、『日向さくら』とでも呼ぶべきか? ――と、アノニマ・プネウマは対峙したままお互いの言葉を衝突し合う。反磁性フィールドは対象を絶命せしめる銃弾の軌道運命をも捻じ曲げて物語プロットを進行する。

「やはり記憶に混濁があるね? 心的外傷後ストレス障害PTSDの結果か……」

「ブラジルで、アポロのをしていた女だな?」

「僕らの過去たるIDアイデンティティは他人によって形作られる。周りの人間たちの観測によって、君や僕らを特定の人物であると位置づける――つまり誰もがであり得る――君だって日向アポロだったかもしれない。そうしてまた、僕もそうだ」

「えらく訳知り顔じゃないか、ええ? お前自身を定義しろ/お前は一体何者だIdentify yourself?」

日向アポロとは何者であったか。僕の肉親とも言える、にね――およびことアノニマ・プネウマΑνώνυμα Πνεύμαの創作者。アポロの肉体性血・遺伝子を僕が受け継ぎ、アポロの精神性こころは君が継承している。暴力とテロリズムの体現者。世界各地から孤児みなしごを集め、子供兵士として教育し、そのネットワークを作り上げた――『僕らは愛されなかった、選ばれなかった、望まれなかった子供たち』の名の下にね。……愛とは、疫病ペストたる思想と同様、ひとつの疾病Affectionだ。我々は愛されなかったが故に、その純粋な・非感染者Unaffectedである。

「いいだろう。僕自身が日向有栖だ。君が自分をアノニマ・プネウマだと思っているのと、同じくらいにね」

「くだらん」

アノニマは周囲を一瞥する。そして虚空に向かって三発を発砲。光学迷彩を着用した有栖の警護だ。その不可視光の周波数帯はアノニマのサイバネ義眼によってイメージ化され、されている。続いてアノニマは臆せず日向有栖および日向さくらに歩み寄り、義肢でその襟首を掴む。

「?」

掴めない。掴んだのは一握の虚無だ。道化の有栖は変わらず背後に立ち、ピエロの化粧が笑っている。アノニマは拳銃リヴォルバーを向けた。

「振り返ってみよう。はこれまで三度みたび出会っている。まず北朝鮮で最初の出会いファースト・コンタクト。君はメキシコの砂漠で帽子屋に連れ去られ、アフリカで僕らに再度拉致スナッチされる。そうして、――君は僕によってアポロの幻影を見せられていたかもしれないが――ブラジルで三度目の接触。いや僕はだったから、カウントが合わないかな?」

「何を言ってる?」

おや、と道化が笑う。その化粧はやがて髑髏どくろの如く歪んでいく。

をしていないのか? いや、それでは雌狐の意図は? 分からない。――なるほどね。知らされていないのは、君だけか」

四発目を発砲。当たらない。銃弾は逸れているのではなくいる。なるほど盲点だった。記憶の読み出しを制御されていたのではなく、初めから別の存在として独立され利用していた。その意図は恐らく、予備機体バックアップか、人格の上書き試験か。またはその偶像性イコンを世に知らしめる為か。彼女は存在を隠匿された殺し屋ではなく、より広域に、世界中のテロルの芽を摘む為の広告塔。それならば、噂に尾ひれが付くくらいが丁度いい。自らも知らない間に周囲の想像は膨らみ、誇張され、そして畏怖されるようになる。恐怖主義テロリズムに対して同様に恐怖を利用するという訳か。人間の想像力とは偉大なものだ。存在すらしないものを自律に信じ込み、畏れ奉るのだから。

「二発は残しておきな。僕と君自身とを撃ち抜く為に必要だから」

笑っているのは骸骨の歯並びだ(骨は肉で覆い隠されないからいつも笑っている)。アノニマは続けて二発を撃ち尽くす。銃弾は回転して空気プネウマを切り裂く。

 砂が爆ぜる。銃弾は標的に到達することなく落下する。懐中銃教会の信徒が何よりも恐れる事だ。自身の意味や価値を失う事。自分の生きてきた人生は何だったのか。教会は聖典を読み解きその意味を与えてくれる。しかし信仰を失った近代人は、存在理由レゾンデートルを自ら導き出さなくてはならない命題に生きている。

恐怖テロルしているか? 意味を自ら見出さなくてはならないという事は、人は何につけても意味を見出してしまうということ。『私が言葉を使うときは、私がちょうどそのように選んだ意味となる』」

覆水盆に返らずハンプティ・ダンプティ。しかしアノニマは拳銃を再装填する。

「なるほど君は、チャーリー天使マラクか。命令に忠実な事だな」

「私は誰にも属さない。自分の意志で行動している」

「意志とは何だ? 君は数字で出来たレンズを通して世界を眺め、外的環境からの影響によって生成される、社会的制約によって抑制された脳内物質の導く結論を、意志と呼ぶのか?」

「鏡に向かって話しているようだな」

「君に僕たちは殺せない。言葉は質量を持たないから(脳内および通信)ネットワークに広く反響こだまする。マジナイを唱え続けることは信仰となり、やがて共同幻想となり、神はそこに顕現すべきである」

ガラスの割れる音。反射は万華鏡となり無限のアノニマを映し出す。有栖は目前に、左手をアノニマの喉元に伸ばす。その感触は冷やりとして無機的だった。

(我々の本質は神である。言葉によってその類的本質を自己疎外し、神と呼ばれる仮象を祀り上げた。その全知と全能とはである。恐怖主義者テロリストたちはその全知全能の絶対神の威光を笠に着て、人間を支配しようと試みる文脈において、を著しく冒涜している)

 二角獣バイコーンの蹄の音が規則正しく鳴り響く。有栖の身体を拳銃のグリップで殴り付けるが、すり抜けるのみである。

に実体は無い。僕らは君たちが世界を認識するために離散デジタル化し情報を伝達する言葉コードそのものなのだから」

それはDeathだ。漆黒のローブを纏いその手には大鎌サイズを握っていて、彼は疫病と獣を用い人間を死に至らしめる役割を担っている。

(奴隷制の復活? そもそも我々は貨幣に隷属し、支配されている。その金銭を得る為の労働は人間性を疎外し、自らを奴隷の身分に貶めるものである。価値は離散数デジタルによって測られ比較され、その優劣を競う。人間が連続量アナログを言葉によって分割し認識しようと試みたときから、人は平等ではありえない)

【耳のある者は、聞くがよい。

 とりこになるべき者は、とりこになっていく。つるぎで殺す者は、自らもつるぎで殺されねばならない。ここに、聖徒たちの忍耐と信仰とがある。

 わたしはまた、ほかの獣が地から上って来るのを見た。それには小羊のような角が二つあって、りゅうのように物を言った。

 そして、先の獣の持つすべての権力をその前で働かせた。また、地と地に住む人々に、致命的な傷がいやされた先の獣を拝ませた。また、大いなるを行って、人々の前で火を天から地に降らせることさえした。

 さらに、先の獣の前で行うのを許されたで、地に住む人々を惑わし、かつ、つるぎの傷を受けてもなお生きている先の獣の像を造ることを、地に住む人々に命じた。

 それから、その獣の像に息を吹き込んで、その獣の像が物を言うことさえできるようにし、また、その獣の像を拝まない者をみな殺させた。

 また、小さき者にも、大いなる者にも、富める者にも、貧しき者にも、自由人にも、奴隷にも、すべての人々に、その右の手あるいは額に刻印を押させ、この刻印のない者はみな、物を買うことも売ることもできないようにした。この刻印は、その獣の名、または、その名の数字のことである。

 ここに、知恵が必要である。思慮のある者は、獣の数字を解くがよい。その数字とは、人間をさすものである。そして、その数字は六百六十六である】

獣の数字666はパピルス写本115とエフラエム写本においては616と異読され、皇帝ネロの本来のラテン語名を数秘術ゲマトリアしたものの和だと言われる。それは最古に記述された符牒であり、暗号名であり、象徴でもあった。


1000011 1101111 1101110 1110011 1101001 1100100 1100101 1110010 100000 1101000 1100101 1110010 100000 1101110 1100001 1101101 1100101 100000 1000001 1001110 1001111 1001110 1011001 1001101 1000001 100000 1010000 1001110 1000101 1010101 1001101 1000001 100000 1100001 1110011 100000 1000111 1110010 1100101 1100101 1101011 100000 1101110 1110101 1101101 1100101 1110010 1100001 1101100 1110011 101100 100000 1100001 1101110 1100100 100000 1110100 1101000 1100101 100000 1110011 1110101 1101101 100000 1101111 1100110 100000 1110100 1101000 1101111 1110011 1100101 100000 1101001 1110011 100000 110001 111001 110001 111000 101110

【ויקרא ,αϡιη'】

54 68 6f 75 20 73 68 61 6c 74 20 6e 6f 74 20 74 61 6b 65 20 76 65 6e 67 65 61 6e 63 65 2c 20 6e 6f 72 20 62 65 61 72 20 61 6e 79 20 67 72 75 64 67 65 20 61 67 61 69 6e 73 74 20 74 68 65 20 63 68 69 6c 64 72 65 6e 20 6f 66 20 74 68 79 20 70 65 6f 70 6c 65 2c 20 62 75 74 20 74 68 6f 75 20 73 68 61 6c 74 20 6c 6f 76 65 20 74 68 79 20 6e 65 69 67 68 62 6f 75 72 20 61 73 20 74 68 79 73 65 6c 66 3a 20 49 20 61 6d 20 74 68 65 20 4c 4f 52 44 2e


 指向性電磁パルス。アノニマの脳内機械インプラントはEMP銃のショックを受け、いったん再起動リブートする。

「目が覚めたかい?」

馬上から帽子屋が言う。アノニマは咳き込みながら呼吸を整えて、首を絞めていたのは自らの義手だったと知る。

「あいつに遠隔で幻像を見せられながら、義手のコントロールもハックされていたのさ。荒っぽい方法ですまないが」

「……脳が痺れるstunning

「酸欠ってやつかい? 少し、風に当たろうか」

帽子屋は手を差し伸べると、アノニマはそれを掴んで馬の背に飛び乗る。足元にはヤズディの母親の死体が三つ、横たわっていた。

『君たちには全く付き合いきれないな』

有栖さくらの声だ。アノニマは脳内機械経由の骨伝導通信に耳を傾け、帽子屋がペスト医師のマスク内の通信機越しに応える。

「種を明かされた手品師の気分か? 恥をかいたな、オズの魔法使い。そろそろ終わらせることにしよう」

『何を終わらせる? 僕たちには始まりも無ければ、終わりも無い。僕らの意志は、思考は、ネットワークに散逸しており、何度でも同じ構造を繰り返せる。それによって作品コンテンツとしての僕の同一性は保たれ続けるのだ。作り手エンジニアのお前にも分かるだろう? 自分の功績が、価値が、被造物が記憶され記録され、後世に残り続ける喜びを?』

ネットワークに散逸した自己? ならば辿れるはずだ。アノニマは義手のDigitusを二進数の入力インターフェースとして、脳内機械インプラント経由で帽子屋のウェアラブル・コンピュータにPAN接続、そのファイアウォールを利用し侵入されないようにする。帽子屋の個人端末にインストールされたハッキング用ソフトウェア(帽子屋の自作ソフトのようで、フュージャネイザンと名付けられていた)を使い、通話の発信元を追跡トレースする。帽子屋は頷いて、有栖の注意を逸らす。

「それを以て『不老不死』って訳か? 僕はそんなことは御免だね。僕は何かをはじめから作ったわけじゃない。例えば頭の中にあるものを、そうであるように組み立てただけだ。それに、僕は独りでそれらを成し遂げたわけでもない。人間は口伝や書物などによって技術を伝承し、それによって道具ツール機械ハードにソフトウェア、それに芸術や娯楽なんかを作ってきた。各々の目的に役立てるためにね。僕はその文脈において技術に価値を認めるべきだと思うし、またそれらが自由オープンに使われるべきだと思う。僕らはそうして互いに影響アフェクトし合って、愛し合い、を為してきた。生物だって同じことさ。有性生殖によって失われた情報コード。また伝達されえなかった情報はノイズとして除外され、劣性遺伝子のように鳴りを潜め、いずれ退化しせいぜい痕跡器官としてその形質を残すのみである。そうして被造物は淘汰され洗練され或いは、換骨奪胎され、その本質性や一身専属性を失っていく。僕は君のように、何らかの同一性アイデンティティに拘るタイプの人間ではないね。変化の拒絶は限りない停滞と衰退だぜ」

『そう思うか? 現代人は神を殺し、資本主義経済ベースの変化と成長とを追い求める速度が自らの拠り所を失った。その場に留まりたければ、全力で走り続けなくてはならない。その結果がへの強烈な盲信と執着だ。それは内なる神でも、聖典でも、異教徒でも、外国人でも、金持ちでも、貧乏人でも、仇でも、血でも、過去でも、未来でも良い。みな無意味の国のアリスに飽き飽きしてるんだ。近代の歴史は自由を追い求める事でもあったが、しかし人は同時に制御・管理される事を望んでいる。肉体性の限界――人は老い、全ての人と知り合うことは出来ず、記憶とは修復不可能アナログであるがゆえに歪められ、僕らはこの時代に生まれそして死んでゆく。僕らは己が全知全能の(完全無欠な)絶対神となるべく、ひとつの形を模索し構築し続けるのだ。お前が【日向有栖】を追い求めるのも、同じ事だろう?』

「『鏡に向かって話しているようだな』? だから自己を失ってでも、碇としてのアバターと構造の同一性に拘るわけか? 僕が有栖を追ってるのは、あいつには貸しがあるから、どちらかが死ぬ前に会って一発ぶん殴ってやりたいだけの話さ。そしてあいつがどんな人生を生きたかを知って、嗤ってやるのさ。ひとは幾度となく兵隊トランプによって【タワー】を組み立てながら、その崩れるときを夢想する。構築と解体の繰り返しさ。生きるってのはそうであるように、単なる暇つぶしだよ。訂正可能な間違いでしかないデジタル的に実存しているクローンの君には分からないかもしれないがね」

玉葱Onionの皮を剥いていくように――いくつかのプロクシを経由して、探知。その発信元は日本。既存のネットワーク回線を仮想閉域網として構築し利用していたようだ。すなわちコード言語を介して干渉アクセスが可能だ。奴は既に潜伏している。

1000011 1101111 1101110 1101110 1100101 1100011 1110100 1100101 1100100

(おや、と帽子屋が呟き、手綱を引いて馬を止めさせる)

「接続が切られたみたいだ。尻尾巻いて逃げたかな?」

「奴は既に日本入りしているようだ。移動手段を?」

「馬では無理かな。しかしヘリコらせんくらいは用意できるよ。それなりの代金は頂戴するけどね」

 砂漠は閑散としていて空は天上へと数値化不可能に伸びている。

「そもそも、君が行く必要があるのかい? 報酬が発生するわけでもない。命令が与えられたわけでもない。上司に報告して終わりで良いんじゃないか?」

「応答がない。私の無線周波数は分かっているはずだから、何かあれば向こうから指令が下るはずだが……しかし奴らをこのままにもしておけまい」

(それも奇妙だな、と帽子屋が独り言ちる。空では鷹が忙しく旋回を続けている)

 君と僕とは脳内において同一の手続きプロトコルを使用している。同じ言葉コードを走らせ、シナプスはネットワーク的に接続され、そして思考回路は機能している。

「何か……ノイズがちらつく」

「首を絞めだしたら僕が止めるさ。とりあえずセーフハウスに向かおう。空からの目に従って、なるたけ交戦は避けるようにするよ」

 僕らの電波ことばは理解不能な詩作/思索です。ひとは想像イメージを等しく共有することは出来ない。可視光たる電磁波の色は文化によって分かたれ、虹彩のメラニン量に光量の絞りを依存し、君が見た赤は僕の見た赤と同一である保証がない。しかしながら【赤】という言葉は碇となってそのクオリアを等しくあると定義している。プリズムは四〇〇から八〇〇ナノメートルの電磁波を分化し虹となってその相似形アナロジーをひとびとの間に共有する。それら情報には名前が付けられ保存された形をあるいは聖書と呼ぶ。

「奴らの目的は何だ? 天皇の暗殺を謳ってはいるが、現実的に可能だとは思えない」

「具体的な手段も期日も不明。ひょっとしたら偽情報ディスインフォメーション工作かもしれない。――目的は大衆の扇動デマゴギーそれ自体か? それなら合点が行く。超音波兵器による『赤のインクキャップ』の活性化、混乱や暴動の発生――それを陽動作戦として暗殺やテロを仕掛けるつもりかも……奴らは何を日本に持ち込んだ?」

「高出力の音響機器あたりか? 或いはそれが何にせよ材料かなにかなら、個人輸入を隠れ蓑にいくらでも輸送できそうだ」

「原材料を輸入、現地で組み立てアセンブル? 第二次産業だね。なるほど物作り国家か。しかし例えば銃の密輸なんかと比べてどちらが費用対効果に優れるだろうね?」

 しかしながら、この電波ことば解釈Interpretationによっていくつもの争いが生まれました。色は各環境に住まう生物にとって都合が良いから分かたれたのみの話で、その文化的差異は、本来翻訳不可能である。他文化を理解しようとする絶望的な努力は全く異なった社会的取り決め・手続きをエミュレートせねばならず、多大な労力を伴い、人は、変化及び成長を好まない。

「しかし、お前のはどうなる? その技術があるとは言え、奴らの超音波兵器の開発には直接関係あるまい?」

「そこなんだよ。量子コンピュータは恐らく奴らの資金を得るための手段でしかないだろうし――奴らが僕に要求したヘリウムを基底状態および励起状態で安定させる電磁場制御の技術が、そこまで早急に必要だったのか僕には疑問なんだ」

 それは安定した構造と呼ばれるものです。持続可能な開発、白人は労働奴隷を外部委託アウトソーシングしたが彼の国は自国民を奴隷とする事と取り決めた。近代資本主義経済社会を解釈した結果によるものです。何故なら彼の国の言語体系コードは閉じているため、ソレラは内部に向かうよう構造されている。太陽は何万年もかけながら熱核融合によって電磁波を、放射能を照射し続け、水素をヘリウムに変換している。ならば太陽神の子孫を語る彼の国の皇帝は、と僕は思う次第です。

「……電磁パルス等による大都市メトロポリスの機能停止? 待て、励起状態の固体ヘリウムと言ったな?」

「ああ。それが?」

 光あれ、と人類に光を齎したのは太陽であると言うほかない。光とはすなわち言葉です。しかしながら彼の国では聖典と言葉とは重要視されず、契約関係アンガージュマンは軽視され、多数派の社会的正しさにコミットメントすることを善しとされる。ひとは言語でなく歴史と過去(すなわち血縁・友人・恋人という関係性)によって繋がりを産むというあまりにも多数派的な――僕らの星は太陽神アポロすなわちアマテラスより与えられる膨大な電磁波エネルギー・言語活動を、如何様に消費するかという命題に生きている。


 しかしがお産みなさるのはどこまでも糞ばかりだ。


「電子励起爆薬だ」

ご名答。励起状態の固体ヘリウムが基底状態に向かうとき、ガンマ線を含む放射線を放出しながら崩壊していく。励起状態で準安定化した固体ヘリウムは同じ重量のTNT換算辺り五〇〇倍以上のエネルギー……分かりやすくいえば、戦略核兵器並の威力を持っている。純粋きれいな水爆のプライマリとしては、充分すぎるほどだろ? ま、仮に失敗してローソン条件を満たせなくても、少なくともガンマ線によるは果たせるって寸法さ。

 【赤い水銀レッド・マーキュリー】は与太なんかじゃないって、これで分かったかな? それを実験用、娯楽用、および単なるヘリウムガスや固体ヘリウムと称して日本に輸送。あくまで個人の名義を利用しながら合法的な輸入品としての体裁を保ちつつ、プロクシーたるカットアウトを全国に配置、経由しながら再度集結させ、そして僕らは、既にその組み立てアセンブルを開始している。

 アマテラスの子孫たるCaesarは墜ちてこそまことなる信仰を産ます。キリストだって不能だったのさ。だからこそ【隣人を愛せ、汝の敵を愛せ】を成立できた(とどのつまり、彼には通常人が愛する対象であるを作ることが出来なかったわけだからね。その歪みが普遍的な人類愛を産んだのさ)。我々は(そのように造られた)人造人間であるから法的に人格が与えられており、しかしながらあくまでその代理人カリフではなく代表者プリンケプスであるわけです。

 僕らは天皇を、アマテラスの子孫を、まことに信仰されるべき対象として再度祀り上げさせる為に去勢を行うのです。そのによって人権を剥奪された彼ら彼女らを――そして人権を持たない天皇を国の、ひいては国民の象徴として祀り上げ、虐げられる日本国民を、解放するためにこのを爆発させるのです。


【惟フニ今後帝國ノ受クヘキ苦難ハ固ヨリ尋常ニアラス

 爾臣民ノ衷情モ朕善ク之ヲ知ル然レトモ朕ハ時運ノ趨ク所堪ヘ難キヲ堪ヘ忍ヒ難キヲ忍ヒ以テ萬世ノ爲ニ太平ヲ開カムト欲ス

 朕ハ茲ニ國體ヲ護持シ得テ忠良ナル爾臣民ノ赤誠ニ信倚シ常ニ爾臣民ト共ニ在リ

 若シ夫レ情ノ激スル所濫ニ事端ヲ滋クシ或ハ同胞排擠互ニ時局ヲ亂リ爲ニ大道ヲ誤リ信義ヲ世界ニ失フカ如キハ朕最モ之ヲ戒ム

 宜シク擧國一家子孫相傳ヘ確ク神州ノ不滅ヲ信シ任重クシテ道遠キヲ念ヒ總力ヲ將來ノ建設ニ傾ケ道義ヲ篤クシ志操ヲ鞏クシ誓テ國體ノ精華ヲ發揚シ世界ノ進運ニ後レサラムコトヲ期スヘシ

 爾臣民其レ克ク朕カ意ヲ體セヨ】 יהוה‎


 カエサル、シャルリ、ネズミどもを殺せ。


 

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