* * * * * *
酷い匂いだ。生活排水は地下のインフラを通って川へ、そして海へと流れていく。顔を隠すためのマスク(簡易的な防塵・防毒機能を備えている)を上げるが、気休めだ。整備用のキャットウォークを忙しそうにネズミどもが走り回っている。
「昔の
「
「表に出れば軍警察に殺される。……いや、死の恐怖が克服されているのは、大きな違いか」
「克服、ね。
「……あるいは、我々が如何に
「おいおい、あまり
アノニマとシェフが
「奴らはチワワ砂漠に逃亡した。こちらで追跡を続ける」
「空からの監視、
「そう腐るな……」
「武装した
「
「ふん……だったら、もっと待遇を良くしてもらいたいね」
「――なんだ、金の話か? ふむ。それなら、時給五ドルでどうだ」
「いいだろう、」
梯子を昇り、下水道の
「追手を撒いたらしい」
「
すると、街頭モニタが暗転した。流れていた音楽が止まると、人々は不思議そうにそれを見つめた。調整用カラーパターンの表示、無音。それから
【Ni Organizo de Anonimaj Pactrupoj. Ni estas kontraŭ tutmonda kapitalismo, kaj ni estas por Altermondialisme. Pardonu nin, ke mi parolas Esperanton. Ĉar ni fariĝis artefarite. Vi meza klaso popolo tro.
Vi ekzistas kiel la griza skalo estanta krampitaj per la starigo kaj la malriĉuloj. Ĉi devus esti malgranda eksperimento. Tiu parolado ne enhavas ian sencon. La kuntekstoj estas pli grava.
Fakte, signifo kaj la kuntekstoj estas nenio pli ol onia interpreto, kiun mi belive la povon de ŝanĝi la mondon. Nenio tia movforto de mislegis kaj iluzio.
Laŭ Mikaelo de Unamuno, "El amor es el hijo de la ilusión y el padre de la desilusión. Es triste no amar, pero es mucho más triste no poder amar."
Parenteze, amo de la dio estas narcisismo. La dio estas ne ekstera estaĵo, sed imaga persono. Tial nia egoismo kaj amo de dio ne kontraŭdiras unu la alian.
Miskompreni esti amata de la dio estas la plej rapida vojo por ami nin. Ke estas ankaŭ kial ni kapablas mortigi homojn por kion ni nomas amo.】
今やほとんどの個人が携帯端末を利用している。ソフトウェアの互換性も高い。バックドアからのハッキングにより、各々の端末がゾンビPCと化し、
「! ――……アポロ……?」
街頭モニタに限らず、個人の端末からも同じ映像と音声が流されていたようだ。人々は戸惑い、スマートフォンを操作し連絡を試みるが、個々の端末の所有権は既に剥奪されている。
「今のは何だ?」
「分からん。エスペラント語のようだが……」
二人が状況の把握に努めていると、ひとりの男が空に向かって叫び出した。(それは英語だ)
「――我は、懐中銃教会信徒! 我らはそれぞれが標的を見定めた、個々の
もちろん、その
周囲の静寂。それから肉体の爆発。それはカミカゼ。
続けて画面には『
場は一気に混沌と化した。恐怖から逃げ出す人々。と同時に、それを追う怒りの表情に見えた人間たち。二人は路地裏に身を隠すと、個々の
「彼らの顔からSNSなどを
「社会階層は?」
「それは中間層に集中しているようだ。追われている側は、たまたま外に出てきた富裕層か、善良な市民か……」
「英語の演説の方に扇動されたのか……? 『懐中銃教会』とは?」
「アメリカ発足の
「――イスラム過激派の組織か」
「さっきの電波ジャックは、MDMAの技術提供によるものだろう。奴らとも関わりがあったはずだ」
シェフが補足した。Cは、先ほどの演説の
【僕らは『
そこで再生が終わった。アノニマは独りごちた。
「何を言ってるのか分からんな」
「話してる言語が違うのさ」
シェフが皮肉気味にそう応えた。Cから指令が下った。
「州兵が暴動の鎮圧に展開し始めている。お前たちは脱出しろ。こちらは調査を続ける」
「
周囲の混沌をよそに、二人は闇に消えた。状況の制圧は彼らの任務ではない。それはあくまで情報の収集、監視、そして必要ならば、暴力の行使。主観的な感情に流された者から死に急ぐ。我々はあくまで、
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