scene2 屋上にて


 話は三日ほどもどる。

 ちょうどブゲイジャーたちが姑獲鳥うぶめと戦った翌日の昼休み。

 赤穂士郎から屋上に呼び出された水戸黄粉きなこはおっかなびっくり、扉をあけて屋上の様子をうかがった。

「おい、こっちだ、こっち」

 反対側の手すりのあたりで、赤穂士郎が激しく手招きしている。どぎまぎしながら、手足をぎくしゃく動かして、キナ子は士郎の前まで歩いて行った。

「用ってなんでしょう?」ぶっきらぼうに尋ねる。

「ああ」士郎はキナ子の顔をまっすぐ見つめて、やおら、がばとばかりに頭を下げた。「たのむ。キナ子、おれに武術をおしえてくれ!」

「はい?」キナ子は首を傾げた。「武術ですか?」

「ああ、そうだ」士郎は頭を下げたまま続ける。「おまえが昨日、あの姑獲鳥に対して使った居合道の抜刀術を、おれにも教えてくれ」

「はあ」キナ子はため息をついた。「なんだもう、そんなことかぁ。いきなり屋上に呼び出されたから、なんだろう?ってびっくりしちゃいましたよぉ。武術ですか。いいですよ、全然オッケーです。そうだ、ちょうど暇を持て余している先生がいますから、コーチとして来てもらいましょう。コーチ料とか要りませんから。うちの家族ですし」

「え、ほんと?」士郎は頭をもどすと、ぱっと顔を輝かせた。「それって、抜刀術?」

「一応、一通り、なんでも教えられると思います」キナ子はこともなげに言う。「今日中に但馬守さまの許可をとって、数日中には部室に来させますよ」

「うおっ、ほんと。すげー、マジ頼むよ、それ」

「任せといてください」キナ子は、どん!と胸を叩いた。


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